「はやぶさリンク」:平田成さんのコメントについて
11月3日:サイクルショーを見物するを追加した。
「はやぶさ」の運用チームはこの週末、多分タッチダウンに向けた降下手順の改良を行っているのだろう。土曜日にはリハーサル時に撮影した画像がダウンロードされているはず。週明けにはイトカワ表面の詳細画像が出てくるかも知れない。高度数百mから見た、見知らぬ大地…ではないな。小地というのも妙、見知らぬ土地といったところか。
「はやぶさリンク」:大きな画像が消えた理由(?)に、神戸大学の平田成さんのコメントが付いた。消えた画像について「もう一度データギャラリーなりなんなりの別の形で元の画像を一般に公開できるようにします.」とのこと。「しかしそれでも実際にデータを取得したのはわれわれのチームである以上,較正や解析の方法について一番熟知している「はやぶさ」チームメンバーです」という。
平田さん、どうもコメントありがとうございます。
ここで問題になっているのは、どこまできれいな画像を出すかというだけではない。どのように、より多くの人々に「はやぶさ」への興味を抱かせるかという一般向け広報の問題だ。
野尻ボードには、野尻抱介さんが、いま提供すべきは学術情報ではなく、共感です。できるだけリアルタイムな状況で、中の人といっしょになって苦楽を味わい、最後には「ばんざーい」とやれることです。と投稿している。
その通りだと思う。
「はやぶさ」広報に必要なのは「事実」、そして「顔」だ。人は人を通じて事実に共感する。
平田さんのような第一線の方々が、もっと自分の言葉で「はやぶさ」の今を語って欲しいと思う。「これから二日連続の運用です」と一言語るだけで、我々は探査機運用が容易ならざるということと、同時にそれは連続勤務をものともしない楽しみであるということを感じることができるのだから。
情報は、「誰が語るか」で意味合いを変える。私のような部外者がまとめる情報と、平田さんのような当事者が語る情報は、例え内容が同じであっても違う意味を持つ。
現在「はやぶさ」は、地球から2億9000万km離れた場所にいる。そこは人類の最前線である。つまり、地球に生まれた生物の最前線だ。
そんな場所に、我々が自ら開発した500kgほどの探査機がいて、今まさに前代未聞のミッションに挑もうとしている。アメリカもやっていない、旧ソ連もやっていない。欧州も中国もインドもやっていない。
小惑星サンプル採集は、そんな仕事なのだ。
これがいかに途方もない、とてつもないことか。歯の根がキリキリ音を立てるほどの恐怖であると同時に、血が逆流するほどの愉悦でもある。しかも理性的かつ冷静でなければなし得ないタスクだ。
そのことを多くの人々に知って欲しいと思うのである。
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そうそう、四日の記者会見でみんながいちばん感動したのは、たぶん「体力の問題がある」の一言ですよね。あれで関係者の顔が一気に喚起された。
本音としては工学や自然科学に興味を引きたいんだけど、「人間は人間にしか興味がない」が現実なので、ヒトをとっかかりにするしかないかな、と思っているところです。
Posted by: 野尻抱介 | 2005.11.07 04:48 PM
こんにちわ
ロケットまつりでいつもお姿を拝見しています。
すこし角度は違うのですが最近、
山田祥平のRe:config.sys「モノの向こうに見える顔」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1104/config079.htm
というものを読みました。
製品作りでも、作った人、設計検討した人の姿、顔、思いが見えてくるものに感動するんだな、と思いました。
昨今では、生産者の顔の見える(ような)農産物とかが喜ばれているようですし、NHKの某ドキュメンタリー風お涙頂戴脚色満載番組も、「人は人を通じて事実に共感する。」という点を(事の是非は別にして)突いているから受けが良かったのだと思います。
うっかりすると、JAXAからのリリースがpdfのみだったりすることもあって、(pdfぐらい見れますが)なんともがっかりすることがあります。公式書類としてのリリースはそれでもいいんですが、詳細に見たいものなのかどうかの判断材料さえなくダウンロードなりアクロバットリーダーを起動しなければならないのはいただけません。
実際あの手の資料からは携わった人の姿は見えてこないです。
私が足げく各種イベント類に通うのは、いわゆる「中の人の思い(想い)」を感じたいからなのかもしれません。
(だからなのでしょうね、M-V-6の打ち上げサテライト中継を見おわったあとに「なんかちがう」という気持ちが残りました。あまりにも化粧して着飾った中継からは、人が見えてきませんでしたもの。)
Posted by: PAKU | 2005.11.07 07:47 PM