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2005.11.01

「はやぶさリンク」:イトカワの質量推定 − 異様に重いイトカワ?

 なかなか面白いトラックバックを頂いたので、JAXA発表以外だが、紹介する。

 ・イトカワの質量推定 − 異様に重いイトカワ?

  ken-ishiさんという方が、「はやぶさ」の公表データを用いて、小惑星イトカワの質量と比重を計算したものだ。

 その計算によれば、イトカワの質量は2億7000万〜8000万t、平均比重は10を超えるという。

 比重は同体積の水との質量の比。比重10ということは、同体積の水より10倍重いということだ。比重が1よりも大きいものは水に沈む。
 ケイ素系のそこらへんの石ころは、比重がまあ2とか3ぐらい(大理石で2.7、花崗岩で2.65)。金属系元素でみると、アルミニウムが2.7、鉄が7.9、銀が10.4、鉛が11.3。さらに水銀が13.6、タングステンが19.3、金が19.3、プラチナが21.5、イリジウムが22.1。

 つまりこの計算が正しければ、イトカワには金やらプラチナやらの貴金属、さらにはイリジウムのような工業上必須のレアメタルがごっそりとあるということになる!

 SFファンなら、E・E・スミスのレンズマンシリーズで、主人公のキムボール・キニスンが小惑星山師として潜入捜査をしている途中、とある惑星系の小惑星帯で異常に比重の高い星を見つけて一攫千金、というシーンを思い出すだろう。

 ご本人は「おそらくどっか間違えてるんだろうが、イトカワがひょっとすると、金やプラチナを含むかもしれない、などと考えるだけで楽しいので、恥を忍んで公開する」と書いている。ともあれ、公開されたデータで様々な思考を巡らし、このように新たな数値を引き出して、楽しんでいるのだから、大したものだと思う。

 結論が正しいかよりも、こうやって自分で考察してみる姿勢に意味があるのだ。直接「はやぶさ」に関わる人以外から、こういう計算が出てくることは、それだけ日本の惑星科学の裾野が広くなるということでもある。

 近いうちに、JAXA/ISASから暫定の数字が出てくるのではないだろうか。それまで(夢が終わるまで?)は、「ああでもない」「こうでもない」「ああだったら」「こうだったら」と楽しもう。

 なお、いうまでもないが、たとえイトカワで金が見つかったとしても、とてもじゃないが地球に持ってくることは当面は不可能だ。

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Comments

 過分なお褒めのお言葉、松浦さんから頂けるとは、身に余る光栄です。
 小惑星山師の一攫千金の夢は一晩で潰えてしまいましたが、まあ、いい夢見せてもらったと思っています。
 新しく高解像度画像もわんさかと出てきてるようだし、あとはタッチダウンリアルタイム中継でもして貰えれば...

JAXAは、その研究者らがアメリカのScience誌(Scientific American誌ではないそうだ)に投稿したので発行まで関連データの公開ができないと主張している。(JAXAの学術発表の優先を否定するつもりはないが、3ヶ月以上も基礎データすら非公開にするのは納得できない。さらに、Science誌投稿と無関係なデータやJAXAに不都合なデータも隠している疑いがある。松浦氏にジャーナリストとしての気骨があるなら追及されたい。)
ただし、5月15日に幕張メッセで開かれる日本地球惑星科学連合・2006年大会・「はやぶさ」セッション(P231)で、「小惑星イトカワの質量の推定」(P231-003)として発表される。その予稿PDFファイルは↓にある。
http://earth2006.jtbcom.co.jp/session/p231.htm
尚、 ken-ishiさんのブログにもコメントしておいた。

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