「はやぶさリンク」:推進剤残量に関する現状

記者会見後のぶら下がりで得た情報です。ソースは橋本教授。
はやぶさは、イオンエンジンで帰還するため、帰還時も太陽電池パドルを太陽に向け、イオンエンジンを所定の推力方向に向ける姿勢制御を行わざるを得ない。帰還時のための推進剤が確保できるかどうかが、問題となっている。現状では、「ここまで来て、着陸とサンプル採集を確実にやらずしてどうする」(松浦注:はやぶさには「サンプル採集技術を確立する」という目的もある。サンプルがよしんば地球に持ち帰れないとしても、採集に成功すれば技術的な実証はできたことになる)ということで、十分な推進剤残量が得られれば、という前提で探査を進めている(松浦注:推進剤の残量について楽観的な見積もりを採用しているのだろう)。
現状でリアクション・ホイールが一つ生きているので、とりあえずスラスターによる制御をかけなくても姿勢は安定している。運用時以外は姿勢が5度程度ずれても構わないということにして、噴射回数を抑制している。降下時やデータダウンロード時は、ハイゲインアンテナを地球にきちんと指向しなくてはならない。ハイゲインアンテナのビームは1度でもずれると通信が難しくなるので制御が必須。この部分で現状、推進剤を消費している。
帰還時は、イオンエンジンの推力方向のずれをどこまで許容できるかが問題となる。数度程度のずれなら軌道計画が頑張ることで許容できそうだが、これが10度、20度となると地球への帰還が困難になる。12月のイトカワ離脱以降、安全な帰還に向けた詳細検討を詰めて行かなくてはならない。
写真は高度180mで撮影した、イトカワにうつるはやぶさの影。Photo by JAXA ISAS
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