Web検索


Twitter

ネットで読める松浦の記事

My Photo

« 「はやぶさリンク」:11月12日午後8時からの記者会見 | Main | 「はやぶさリンク」:ミネルヴァが撮影したはやぶさ »

2005.11.13

「はやぶさリンク」:ミネルヴァについて川口教授のコメント

 13日午後7時37分付けメールでJAXA広報から、ミネルヴァに関する情報が届いた。JAXAホームページにもアップされるとのことだが、午後9時38分現在、まだJAXAホームページにはアップされていない。

 いくらかは当ページに掲載する意味があると思うので転載する。

 まず、ミネルヴァの現状に関する、はやぶさプロジェクト・マネージャーの川口淳一郎教授のコメントだ。



Q) ミネルバは、着地したか?
A)現在までのところ着地を示すデータは得られなかった。

Q) イトカワを周回している可能性は?
A)分離後に周期的なOn/Off は観測していないため、特殊な場合を除くと、周回している可能性は低い。

Q) ミネルバが再度軌道降下して表面に落下する可能性は?
A)理論的には太陽輻射圧(松浦注:太陽光の圧力。光は微小な圧力を発生する)で吹き下ろされてくる可能性がある。
 イトカワを脱出した速度は、計算では無限遠で 8.3cm/sec 。
 MINERVA の場合、太陽光圧での減速量は、1.4cm/s/day なので、これがいわば重力加速度のようなもの。
 早ければ6~7日で上昇がとまり、それと同じくらいの時間をかけてイトカワの近傍の太陽からの距離にもどってくる。2週間程度。
 このもどった場合のイトカワとの距離が近ければ、あるいは表面と衝突するかもしれない。近傍を通過した場合は、イトカワの重力でふられて今度は太陽方向には飛び出さないため、しだいに離れていく。
 約2週間強は、はやぶさ搭載の受信機を入れてモニタしてみればと思われるところ。少なくても太陽輻射圧でふきもどされてはくるはずで、はやぶさの受信アンテナパターン内に入れば、通信はできるはず。その結果をみてまたそれが再度時間をかけてロックオフするとミネルバの軌道がわかる。
 継続してMINERVA からの受信機を投入しておきモニタする。

Q) ミネルバについては失敗か?
A)工学実験ペイロードの性格からは、分離、通信、データのリレー伝送、画像の取得、計測値の伝送など探査ロボットのもつ諸機能が実際の場所で機能しているので、実証はできたと述べてもよいのではないでしょうか。

科学観測については:
 短時間ながら熱の輻射起因の計測ができたと考えており、意味があったと考えている。

« 「はやぶさリンク」:11月12日午後8時からの記者会見 | Main | 「はやぶさリンク」:ミネルヴァが撮影したはやぶさ »

宇宙開発」カテゴリの記事

はやぶさリンク」カテゴリの記事

Comments

辛辣な事を書いて皆さんに嫌われているみたいですが、もうちょっと書かせてください。

この川口教授の「ミネルバについては失敗か?」に対する答弁なんですが、開発者側に立った答えとしてはそのとおりだと思います。「分離」、「通信」、「データのリレー伝送」、「画像の取得」、「計測値の伝送」は機能したと言うことですね。それぞれの部分の開発者はその結果に胸を張っていい。でも、ミネルバとは何かという本質的な問題をかわしているのはずるいような気がしますね。政治的なのか、純科学者的なのか。

「はやぶさ」の探査機としての目的を踏まえれば、少しは理解の助けになるでしょうか?
はやぶさはもともとはMUSES-Cという名前です。MUSESは、“Mu Space Engineering Spacecraft”(ミューロケットで打ち上げる工学実験探査機)の略で、「C」は、「3番目」という意味です。
つまり、実用探査機打ち上げの前にその技術を確立する為の試験機と言って良いと思います。ISASのHPを見れば実験機としての本来の目的が書かれています。
電気推進
自律型の探査機技術
小天体からのサンプル採取
地球帰還から再突入へ
の四つです。
今回のミネルバ放出は多分2番目に分類されるのでしょうが、イトカワの様な無重力に近い微重力の小惑星表面に物を投下、物を置くという事自体が確立した技術ではなくチャレンジであるという事だと思います。
(放出時の加速度をcm/Sで単位でコントロールする事です。)
RWの故障もそうですが、そういう失敗からも技術的、工学的な教訓は得られる訳で成功か失敗かで目くじらを立てる様では、実験という概念そのものが成り立たなくなるし、技術の進歩も無くなると思いますが如何でしょうか。

「ysaki」様、ありがとうございます。でも、その辺の事情は承知しております。

>でも、ミネルバとは何かという本質的な問題をかわしているのはずるいような気がしますね。政治的なのか、純科学者的なのか。

分かっていて、上の様な発言になる理由がやや理解しかねるのですが......。
ミネルバの着陸が出来ていないのでミネルバミッション失敗は自明ですよね。
その中でこれこれについては成果があったというのは如何にも技術者らしい発言と私には思えるのですが。
確かに字面だけ追えば政治的にも読めるでしょうが、強いてそう読む意味もないかと考えます。

失敗したなら、失敗したと大きな声で言えばいいと思うのです。そして、技術的な検証から始まって、大本の問題が予算とかに行き着くのなら、それも大きな声で言えばいい。

失敗したのに、さも成功したように振舞うのは、理解できません。

(はい、はい、私は嫌われ者です)

The comments to this entry are closed.

TrackBack

« 「はやぶさリンク」:11月12日午後8時からの記者会見 | Main | 「はやぶさリンク」:ミネルヴァが撮影したはやぶさ »