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2006.05.27

著書の訂正:「われらの有人宇宙船」

 「われらの有人宇宙船」の再販にあたり、重大な事実誤認が見つかり、訂正を行った。それ以前の版を買ってくれた人のために、ここに告知し、謹んでお詫びいたします。

「我らの有人宇宙船」48ページ。アポロ宇宙船の搭載コンピューターに関する記述。


「もちろん計算結果の安全性は考えられており、ファミコンと同程度の計算速度のコンピューターを3台搭載して、どれか1台がトラブルを起こしても残る2台が正しい答えを出す、という多数決システムが組んであった」


「もちろん計算結果の安全性は考えられており、ファミコンと同程度の計算速度のコンピューターにエラー発生を監視する装置を組み合わせ、トラブルが起きても計算をやりなおす、システムが組んであった」

 なお、今回の再販でも「エラー派生(誤)」→「エラー発生(正)」という誤植が入ってしまっている。全く申し訳ない次第だ。

 アポロ宇宙船に搭載されたコンピューターは、「Apollo Guidance Computer(AGC)」という。

アポロ誘導コンピューター:日本語版Wikipediaの項目

 これを読めば分かるように、AGCはエラー発生時に強制的な割り込みを行って、メンテナンスのルーチンを走らせてから、元のプログラムに復帰するというアーキテクチャだった。3重多数決ではない。

Apollo Guidance Computer:英語版Wikipediaの項目

AGC Project Homepage:開発を担当したMITのホームページ

Block I Apollo Guidance Computer (AGC): How to build one in your basement:開発者の一人、John Pultorakによるドキュメント

 一体何故、私がこのような間違いを書いてしまったのか——記憶を辿ると、オリジナルは特定できないのだが、二次著作の一つに「アポロは3重、シャトルは5重」と書いた本があり、それをそのままオリジナルにあたることなく信じてしまったようだ。

 「アポロは3、シャトルは5」という口当たりのいい構図にうかうかと乗せられてしまったらしい。

 口当たりがいいだけに、この間違った言説は、口コミレベルで普及してしまう恐れがある。その一端を私の本が担ってしまったわけだ。月着陸も37年前の過去となり、そこに使われたコンピューターのアーキテクチャーのことは、一般からすれば小さなことだろうが、今後の宇宙計画を考える時には、きちんと事実を踏まえていかなくてはならない。

 ここに訂正を掲載し、改めてお詫びする次第だ。

 なお、新たに「著書の訂正」というカテゴリーを新設した。

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著書の訂正」カテゴリの記事

Comments

「派生」については,急遽の重版(第4版)であったために申し訳ありません>松浦様,みなさま

なお,『われらの有人宇宙船』の初版正誤表は下記サイトにアップしてありますので,ご参照ください>初版をお持ちの皆様
http://www.shokabo.co.jp/errata/8758-0.htm

>二次著作の一つに「アポロは3重、シャトルは5重プラス1」と書いた本があり、
この記述自体が間違いじゃありませんか?
直後に松浦さんが書かれているように、オービターのコンピューターは五つで、強いて表現すれば「四重+1」ではないでしょうか?

 そうでした。訂正しておきました。

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松浦晋也さんのブログの『著書の訂正:「われらの有人宇宙船」』より 誤 「もちろん計算結果の安全性は考えられており、ファミコンと同程度の計算速度のコンピューターを3台搭載して、どれか1台がトラブルを起こしても残る2台が正しい答えを出す、という多数決システムが組んであった」 正 「もちろん計算結果の安全性は考えられており、ファミコンと同程度の計算速度のコンピューターにエラー発生を監視する装置を組み合わせ、トラブルが起きても計算をやりなおす、システムが組んであった」 アポロ... [Read More]

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