宣伝:笹本祐一さんの「宇宙へのパスポート3」が8月5日に発売されました
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JAXA発足後の種子島や内之浦、最後のアリアンⅣ、再開スペースシャトル、ロシアのプレセツクと打ち上げ最前線を駆け巡った取材日記第3弾。松浦晋也が世界の宇宙開発事情を解説する。
「宇宙へのパスポート」(2001)、「同2」(2003)に続く、笹本祐一さんのロケット打ち上げ取材日記第三弾です。私は、「世界の宇宙開発」という題目で解説を書きました。アマゾンでは、私の名前で検索すると、この本も出てきます。
笹本さんは、自覚的なミーハーとして、ロケットの取材を始めた、と思うのですが、取材回数を重ねるごとに、彼の身も蓋もないほどストレートな性格と感性は、宇宙開発という人類最先端の事業にべっとりとまとわりつく暗い「人の世の事情」を、直視していくようになりました。
とにかく勘の良い男なので、大抵の美辞麗句、大言壮語、組織的言いつくろいはあっさりと見透かしやがります。しかも、しがらみもないので、見たまま感じたままを書きます。
私自身は本文中に登場する当事者でもあるので、読んでいると色々思い出します。
種子島からの帰りのフェリーで、「なあ、H-IIAって実は駄目なんじゃないか」と言った彼の顔とか。
スペースシャトル取材でケネディ宇宙センターの打ち上げ延期記者会見に出席後、「なんだ、あのずらーと並んだ政治家は。こういう時はまず技術の人間が出てくるもんだろう」と言った私に、「来年の予算のためにそろそろシャトルを上げとかんとまずい時期だしのー」と喝破した口ぶりとか。
小惑星探査機「はやぶさ」の小惑星イトカワ着陸の取材で、興奮した彼が「俺たちは今、日本の宇宙探査の黄金時代を観ている!」と口走ったときの表情とか。
これには私が「今を黄金時代にしちゃいけないんだ。これは始まりなんだから」と応じたのですが。
本書は、立場とか思惑を離れた、現時点でもっとも正直かつ率直な、宇宙開発最前線のレポートになっていると思います。
よろしくお願いいたします。
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» [宇宙開発] ロケット打ち上げの雰囲気を知るのでしたらこの1冊から^^ [Yanのプリ日記]
松浦晋也さんのブログから。
笹本祐一さんというと、破天荒な宇宙人侵略物語の「ARIAL」シリーズや、近い未来に民間が宇宙開発にかかわるようになったらという、「星のパイロット」シリーズで有名な作家さんですが、近年の笹本さんの作品が、非常に宇宙開発の現状に即したような作風になってきた理由に、ロケット打ち上げの取材をたびたびするようになったというものがあると思います。
そこが無重力の空間であり、物理学がシビアに現れてしまう世界を欠かせたら、私が読んだ中では、笹本さんと野尻抱介さんのお二方が日... [Read More]
» キタキタ━━━━ヽ(゚∀゚ )ノ━━━━!!!! [inu's today]
松浦晋也のL/D: 宣伝:笹本祐一さんの「宇宙へのパスポート3」が8月5日に発売されました
著者のblogがないので解説者である松浦さんのblogへトラックバック
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お勧めの本。
面白い本、興味深い本等々、車好きになる前から読書中毒だった私が、好き勝手に並べてみようかと(^^;;
第一弾は…
宇宙へのパスポート1~3(笹本祐一/朝日ソノラマ)
ライトSF作家の笹本祐一が、「宇宙作家クラブ」の仲間たちと共に、日本を中心に、世界各地のロケットの打ち上げを見学に行った道中記。
すちゃらかな文体なので、肩に力を入れず、楽に読めるけれど、読んでいくと、自然と宇宙開発... [Read More]
>彼の身も蓋もないほどストレートな性格と感性は、
>とにかく勘の良い男なので、大抵の美辞麗句、大言壮語、組織的言いつくろいはあっさりと見透かしやがります。
これほど見も蓋もなくストレートに彼の特質を表現した文章も稀です。
Posted by: ROCKY 江藤 | 2006.08.07 04:06 PM
直接は何の関係もありませんが、ロケット繋がりということでご容赦ください。こんなものが新潟市内の某所に転がってるんですが…何でしょう?これ。
http://photos.yahoo.co.jp/ph/hgf01572/lst?&.dir=/6876&.src=ph&.view=t
アップの写真を見てもらえばわかるかと思いますが、芸が細かすぎるので単なる飾りとは思えません。
Posted by: KENN | 2006.08.07 08:24 PM
こいつは、通称「長岡アーティファクツ」のなれの果てですね。タイタン2ロケット胴体と、これはジェミニ宇宙船の試験モデルでしょうか。
http://www.concorde.gr.jp/~hibiki/memo/0209artifacts/
ここにある通り、長岡に宇宙のテーマパークを作ろうとして集めたコレクションの一部です。計画は頓挫して、一部は筑波宇宙センターが引き取り、残るものは各地の科学館の展示品として散ったと聞いていたのですが、こんなことになっているものもあるとは。びっくりです。
ジェミニ宇宙船は、宮崎の科学館に行っているはずですが、もう一つモデルがあったのでしょうか。これは私は見た記憶はありません。
Posted by: 松浦晋也 | 2006.08.07 08:36 PM
やはり本物なのですね。ありがとうございます。すっきりしました。一応エンジニアの端くれなので「単なる作り物じゃない」という自信はあったのですが、何せ本物を見たことがないので(笑)
ちなみに場所はR116(ジェミニカプセルの後ろに写っている道路がそう)沿いの、合併前の旧西川町付近です。撮影したのは1年前なので、まだそこにあるかは判りません。
Posted by: KENN | 2006.08.07 10:55 PM
はじめまして。
以前、「恐るべき旅路 火星探査機「のぞみ」のたどった12年」から「宇宙へのパスポート1・2」を知り、「3」はネット予約で買いました。
以来、日本の宇宙開発について興味を持つようになりました。(ブログに書いたのは、スクラムジェット実験失敗ぐらいのもんですが)
すちゃらか旅行記的イメージの強かった「1」「2」と比べ、「3」はかなり暗い雰囲気を帯びましたね。
部分部分では面白くても、考察が悲痛さを帯び、その場その場で楽しみながらも、ふと我に返ると絶望感に駆られるような、そんな文章な気がします。
日本の公共事業である以上、どうしても、予算の論理、役所の論理が中心になってしまうのかもしれませんが。
正直、「何もしないよりは何かしている方がいい」という観点で、自らを慰めるしかないのでしょうか。
しかし、松浦さんたちには、「これじゃだめだ」ではなく、もっと明るく描いて欲しいと、読者の側としては思いました。
「1」「2」は、各10回以上読みましたが、「3」は、連続して読もうとすると、こちらも少し暗くなってしまうのです。
いきなり、ぶしつけなコメントですいません。
Posted by: えるうっど | 2006.08.13 11:35 PM
確かに3の記述はかなり苦くなっていますね。
これには笹本語録で応えておきます。
「でも、実情を知らずにあれこれ言うよりはいーだろ」
まず現状をきちんと把握するところから、本当の未来への道は拓けるってことですね。
私はといえば、悲観をしていません。希望は、あたえられるものではなく作り出すもので、しかも、どちらかといえばカビとかキノコみたいに、どんなところにも芽生えるものだと思っていますから。
Posted by: 松浦晋也 | 2006.08.17 07:38 PM
はじめまして。本文とは関係ない内容ですみません。
先日の新聞でスペースネオトピアの跡地買収と記事が出ていました。
行った事ないのですが,もう現地には何もないのでしょうか。
http://www.niigata-nippo.co.jp/pref/index.asp?cateNo=3&newsNo=35847
パスポート3またまた面白そうですね。年内には買って読みたいと思います。
Posted by: すずき@胎内 | 2006.09.01 12:57 PM
はじめまして。いまさらな話題ですみませんが…
上のほうのコメントでKENNさんの言われている新潟市某所のジェミニ宇宙船ですが、今日行ったら無くなってました(タイタンの胴体はまだありました)。
先週は見たように記憶しているのですが…
昨今の鉄鋼品盗難などを警戒したのでしょうか?
近くで見る機会をのがしてしまい残念です。
Posted by: Non | 2007.05.09 01:51 PM