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2006.11.19

一気に自転車の試乗をする

 18日の午後、東京ビッグサイトで開催されていた東京国際自転車展2006に行ってきた。

 会場は閑散としていた。というのも数年前からサイクルモード・インターナショナルという展示会がテレビ東京系の肝いりで開催されるようになり、こちらは高価な最新モデルが惜しげもなく試乗に出てくることが評判になって、お客が流れてしまったのだ。

 とはいえ、閑散としてしまったということは、私にとっては悪いことではない。私は最新のロードバイクにもBMXにも余り興味はない(試乗してみたいとは思うけれども)。むしろ中小メーカーの創意工夫と、なによりも現在は折り畳み車に興味の中心がある。
 来場者が減ったことで、東京国際自転車展は、待ち時間なしでどんどん試乗車に乗ることができる状況になっており、おかげでかなりの車種に試乗することができた。

 以下、自分なりに高評価だったり、興味深く感じたりした自転車について書いていく。


Bd1cpgraym
 新型BD-1(写真は日本ディーラーのミズタニ自転車のHPから借用した):独R&Mの折り畳み自転車BD-1は、2006年モデルからフレームが変わった。それまでのアルミパイプを組み合わせた構造からおそらくはプレスで作った左右パーツを溶接するアルミモノコック構造になったのだ。

 これがびっくり。BD-1は全く違う自転車へと進化していた。旧BD-1はどこかハンドリングに落ち着きがなかったのだが、モノコックフレームの新型はどっしりと落ち着いたハンドリングと、ペダルを踏んだ力が逃げずにすべて推進力となる感触の、まるで良質のランドナーのような走りに変わっていた。
 旧BD-1は「これ一台だと日常きついな」と思わせるところがあったが、新型ならこれ一台で日常の買い物から輪行サイクリングまですべて満足できそうな気がする。

 物欲沸騰してしまった。が、旧モデルに比べるとぐっと値段が上がっているのが玉に瑕だ。確かにフレーム構造は高製造コストだろうと思わせるものだけれど。


Lgscm
・ルイガノLGS-CM:この自転車はどうやら台湾メーカーが開発してあちこちにOEM供給しているらしく、異なる名前で複数のブースに出店されていた。試乗にはルイガノとは違うメーカーから同型車が出ていた。

 8インチタイヤであるということを考えれば、予想以上によく走る。近所数kmの買い物だったら、十分ママチャリの代用を果たすだろう。値段を考えれば立派な設計だ。超小径車が欲しいならばこいつは買いだと思った。

 ただし、チェーン周りは汎用品ではなく、専用の目の細かいものを使っていた。長く愛用しようとするならば部品の供給がどうなっているかを確認したほうがいいかもしれない。もっとも、長く愛用する自転車と言うよりも楽しく寿命まで使い切るタイプなのかも知れない。


Komapsp2
SmartcogKOMA(写真はSmartcogのHPから借用した):Smartdriveを組み込んだ2×3段変速のモデルに試乗した。超小径車とは思えないぐらいスピードが出て、よく走る。長距離サイクリングをものともしない熱狂的なファンがいることも理解できる。しかし、乗り味が私には今ひとつ堅いように思えた。うまくはいえないのだけれども、フレームが堅すぎるような感触がある。

 新BD-1や、次に書くANTとどこが違うのだろう。自転車フレームは単に剛性が高ければいいというものでもないようだ。

 また、この車種に限らず、超小径車はペダルを止めたときにすぐにスピードが落ちる。これはタイヤが小さく運動エネルギーを蓄積できないため。文句を言うべきことではなく、超小径車の特性と心得たほうがいい。

 次のANTのほうが、私としては高評価である。


Ant77300
・同じくSmartcogのANT(写真はSmartcogのHPから借用した):同じSmartcogの製品なら、私はこちらを選ぶ。やたらと関節の多い折り畳み方法を採用しているので、フレーム剛性が低いのではないかと思っていたが、どうしてどうして。非常にフレームがしっかりしていてよく走る。走りは新型BD-1と同等と言って良い。

 12.5 kgとBD-1よりも2kg重いが、これはスタンドと折り畳み時に使うキャスターホイール、さらにはリアキャリア込み。これら3つを足すと、おそらくBD-1との差は1kg以下になるだろう。しかも凝った折り畳み機構を採用しているにもかかわらず、新BD-1より安い。

 折りたたんだ時の携行性はBD-1と比べてどうだろうか。気になるところ。薄く畳まれるので案外携行性も悪くないかも知れない。旧BD-1は畳むと意外と分厚くなり、改札の通過や、電車内のどこに置くかでかなり苦労した。
 輪行用自転車は単に軽いだけでは足りない。電車の中で他のお客さんの邪魔にならないような置き方ができるかも重要だ。これだけ薄く畳めると、案外邪魔にはならないのかも知れない。

 これは欲しいぞ…

 いや、だから物欲をたぎらせてどうするってば!


Mc1a3
村山コーポレーションのMC-1A:アイデア満載の折り畳み自転車を開発している長野のベンチャーによる折り畳み自転車。折り畳み方は単純でフレームの真ん中で折り畳むだけ。ただし畳んだ状態で前輪と後輪が同軸になるので転がして押すことができる。試乗した感触は、旧BD-1とちょっと似ている。

 ハンドリングは素直だが、力が逃げずにがんがん走るフレームというわけではない。このあたり、自転車作りにおけるノウハウがなにかあるのではないかと思わせる。経験によってのみ手に入るノウハウが。

 重量9.6kgで価格もBD-1より安いので、自分なりにサイクリング用に仕上げるのには良い素材かも知れない。ブースでは村山社長自身が、自転車を押したり畳んだりでアピールしていた。こういう元気な会社には、是非とも伸びていって欲しいなと思う。


Nihonrobo
日本ロボティクスのFR-16AL:販売はアーバン・ビークルという会社。ホームページはないようだ。日本ロボティクスは東京理科大学と協力して二輪駆動自転車を開発した会社。

 前後片持ちハブで、折りたたむとぴったりタイヤが合わさるのが特徴。この部分は有名なイギリスの折り畳み自転車ストライダと同じだ。また折りたたんだハンドルはハブと面一に収まる。

 シマノ製5段変速が付いて重量10.6kg。4万3800円というのは魅力的。

 ただしフレーム製造は中国に委託しているとのこと。試乗はできなかったが、中国製フレームとなるとなあ…いずれ項を改めて書くが、私は中国の溶接技術、特に低価格自転車のそれを信用していない。このモデルも溶接線がぼてっとしていた。

 今や世界の自転車生産は、台湾と中国が大勢を占めている。欧州設計の自転車もかなりの部分は台湾や中国で委託生産しているのが実情だ。が、私の見るところ台湾と中国ではまだ大きな技術格差がある。自分としては自分の命を預ける自転車には可能な限りメイドイン台湾を選びたい(A-Bikeはどうやら中国生産らしいのだが)。


Ys11
バイク技術研究所YS-11:その昔YS-11旅客機に開発に参加したという技術者の方が起こしたベンチャーの折り畳み自転車。重量7.3kgは立派。あまり無理して軽量化したという雰囲気ではなく、各部は十分な強度を持っているように見えた。

 トレンクル7500やブリジストンのトランジット・スーパーライトと同じ位置付けということになるだろう。折り畳み方法は単純な二つ折りだが、ヒンジではなく、スライドパイプを使った前後の分離機構が斬新。

 ホームページでは初期ロット182台(実機のYS-11と合わせたそうだ)を税込み4万9350円で販売するとアナウンスしている。トレンクル7500やトランジット・スーパーライトが10万円近くすることを考えると、この値段なら大変なお買い得。そのうちに内装3段変速機を組んだモデルも出すそうだが、むしろ変速機なしで軽さを生かして使ってほしいとのことだった。


Ele14
 この自転車はサンスター技研が電動ユニットを積んで売ることになっているそうだ。電動ユニットを付けて12.5kgとのこと。市販のあかつきには最軽量の電動自転車となる。

 変速機込みでこの重量の折り畳み自転車は別に珍しくもない。変速を諦めるかわりに電動ユニットを組み込み、電動アシストサイクルで輪行ツーリングというのも楽しいかも。うまく輪行用キャスターを装着することができれば、昨今はやりの中高年の定年後の趣味に売り込むことができるかも知れない。

 折り畳み式の輪行用電動サイクルという、新しい分野を創造するかもという点でかなり面白そうなモデルである。


Ele16in
 14インチの折り畳み車そのものではないが、折り畳み機構を廃して16インチタイヤを装備したバージョンは試乗することができた。重量は12.6kgとのこと。

 非常にいい。フレーム自体も堅すぎず柔らかすぎず、きちんとペダルの力を受け止めてくれるし、サンスター技研の電動ユニットもけっこうパワフル。モーターを切ってもペダルが重くなるということもない。

 ごく普通の電動サイクルとしてもおすすめ。少なくとも大手メーカーのママチャリ電動化バージョンよりも、ずっと乗り心地がいい。

 このフレーム設計が14インチの折り畳み車にも生きているなら、走りもかなり期待していいかも知れない。


 その他にも色々試乗して、最後は汗だくになって会場を後にした。

 あれも欲しい、これも欲しい…だから物欲をたぎらせてどうするというのかってば!

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Comments

ゴーゴースライダーはどうなったんでしょうね。

 自転車試乗の記事、私も自転車が好きなため、興味深く読ませていただきました。一点だけ、気になった部分がありましたのでコメントさせていただきます。
 「・・・超小径車はペダルを止めたときにすぐにスピードが落ちる。これはタイヤが小さく運動エネルギーを蓄積できないため。・・・」という部分ですが、小径タイヤでは走行抵抗(タイヤ自体の変形に起因するもので、走行面の接触部からタイヤ回転中心までの距離と無負荷時のタイヤの半径の比に関連。式は省略)が大きく効いてくることによります。同じ径の変形のないソリッドなタイヤと変形するチューブの入った自転車用のタイヤで平坦な面を走行する場合をイメージしていただけるとおわかりいただけると思います。

>小径タイヤでは走行抵抗が大きく効いてくることによります

それを排するために高圧タイヤを装備したMoultonでも、27インチ車に比べて高速巡航維持の不利は変わりません。

そこで気が付いた、小径車のさらなる弱点。

「スポークの空気抵抗」

27インチ車と17インチ車では、同じ速度で走っている場合、車輪の回転数に約1.6倍の差があり、リム外周の上部でスポークの受ける空気抵抗も当然それに比例します。

実際ディープリムのホイールと比べると明らかに体感できるほどの差があります。

浅利義遠さんのコメントですが、同じ速度で走った場合、タイヤ下部の接地面では速度0、タイヤの軸の部分では走行速度、接地面と反対のタイヤの上部は走行速度の2倍となります。これはタイヤの径に関係ありません。
小径タイヤでは乗り心地に必要な変形量を確保するため、必然的に高圧にせざるを得ません。

>タイヤ下部の接地面では速度0、タイヤの軸の部分では走行速度、接地面と反対のタイヤの上部は走行速度の2倍となります。これはタイヤの径に関係ありません

ホイールだけ見るとそうなのですが、どちらも24本スポークとした場合、走行速度の2倍となるホイール最上部のあたりを、27インチ車で12本のスポークが通過するとすると、17インチ車では19.2本のスポークが同一時間内に通過します。

これは無視できる差異なのでしょうか?
ホイール径が小さい分で、相殺される?

浅利義遠さん、空気力は投影面積と速度の2乗で比例することはわかりますね? スポークの径を同じとすれば小径ではスポークの投影面積が少なくなりますので、仮定の条件ではおおむね相殺されるといってよいのでは・・

>空気力は投影面積と速度の2乗で比例することはわかりますね?

投影面積も2乗で利きましたっけ?
速度の方だけ2乗で利くなら、微妙な事になりませんか?
どうやって計算すればいいのか、この辺で文系の頭はパンク寸前ですが。

 小径タイヤの抵抗が大きいのは、空気抵抗の影響もあるでしょうが軸受の転動抵抗と段差乗上時の反力の影響が大きいのではないかと思います。
 まず、転動抵抗ですが、中心軸から接地点までの距離が短くなることより、中心軸で同一抵抗でもてこの原理で接地点における抵抗としては大きくなります。更に中心軸の回転数が円周短縮により高くなることで、同速度あたりの転動抵抗は更に大きくなります。回転数と転動抵抗は比例とは行かないので単純に二乗で効いてくる訳ではありませんが、小径タイヤが径に比例する以上に不利になることは間違いないでしょう。
 次に反力ですが、車輪の回転慣性を無視したとすると、半径1の車輪が1の高さの段差に対する場合、段差への接触点と中心軸の高さは同じになり反力は全て前後方向のベクトルとなる、即ちいくら前後方向の推進力を持続しても車両は停止するわけですが、これが半径2の車輪だと段差との接触点は中心点から30度下方となり、反力は上方向に1/2、前後方向に√3/2となり、段差を乗り越えられる訳です。
 ざっと考えただけですが、如何でしょう。長文失礼しました。

>軸受の転動抵抗と段差乗上時の反力

なるほど!程度問題はともかく、それは歴然としてありますね。停止するほどでなくとも、路面の凹凸に対応する度に発生し、塵も積もれば山となる……と。

一方で、あらゆる局面で抵抗が大きいはずの小径車の方が、圧倒的に漕ぎ出しの加速性が良いのは、ホイールの慣性モーメントが小さいせいと考えて良いのでしょうか?
だとすると、その裏返しはどう利いてくるのか?

転がり抵抗以下の小径の不利と、逆に存在する圧倒的な有利。
何がどうトレードオフになるのか、どなたか総合的に理論体系をお持ちの方はいらっしゃいませんかね?

教えてくんになるつもりは無いのですが、実際に乗っていて、その経験から逆算しようとする自分のアプローチは、どうにも的を外し気味でいけません。

上記の件について

小径自転車と普通の自転車の比較を、タイヤ1回転当たりの抵抗と考えるとあまり差が見えてこないはずです。仕事という形で考えなければならないかと。

仕事=力 x 距離 =ベアリングの1回転当たりの抵抗力 x 回転数です。

同じ距離を走った場合、小径車のタイヤの回転数は普通の自転車に比べて多いです。このため同じベアリングを使用した場合、小径車の方が仕事量が多くなります。
一方で20km/hのスピードで走っていた自転車が行える仕事の総量は、小径車と普通の自転車では"ほぼ"同じです。

このため小径車の方が滑走距離が短くなると考えられます。

漕ぎ出しの軽さの理由は慣性モーメントが小さいからという事で合っていると思われます。
(ニュートンの第2法則の変形で、加速力 = トルク / 慣性モーメント という式が成立します)

単純に考えてみましたが、いかがでしょうか?

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