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2007.02.22

島で待つ

 皆さんもご存じのように、H-IIAロケット12号機の打ち上げはずるずると延びている。15日の予定が16日になり、22日になり、現状では24日である。
 それにつきあって島生活もそろそろ10日だ。仕事を持って歩ける職業なればこそのおつきあい。

 しかし小刻みの延期は精神的につらい。20日の段階で24日といってくれれば、あきらめて20日中に帰ったのだが。

 というわけで、あいた時間で島のあちこちを見て回っている。1991年以来、すでに種子島に来ること13回。めぼしいところはすべて見尽くしたので、わざと細い道に入ってみたりレンタサイクルで細かく走り回ったり。


Photo これは西之表のこのあたりにあった看板。この王之山神社というのが、安徳天皇をまつった神社なのだという。
 だいたい非業の死を遂げた人には「実は生きていて」という話がつきまとうが、安徳天皇にも生存伝説があるとは知らなかった。つまり、安徳天皇は御歳三歳にて壇ノ浦を泳ぎ渡り、九州を踏破して種子島に来たということになる。しかもその後硫黄島に渡ったとなると、これはもう「未来少年コナン」並の体力だ。硫黄島でターザンのように暮らす安徳帝というのも、想像してみるとなかなかおもしろい。

 このあたり、古くは「海泊」という地名だったそうな。海は正確には海の下に「土」が付いた文字で、どう読むのかもよくわからない。なんでも漁師を意味する海士という言葉が一つの漢字となったものだとか。パソコンにも入っていない漢字だったので、この土地だけの文字ではないかと思う。



Photo_1 安徳天皇をまつった社はこのような状態だった。地元に社を維持する体力がもうないのだろうか。ずいぶんと荒れていた。おいたわしや安徳帝。
 このあたりは古来、沖の馬毛島でトビウオ漁をしていた漁師が住んでいた土地だったという。港の正面に鳥居があり、そのまま社に続いている。漁師の神様である証拠に社は海を向いている。私の住む茅ヶ崎あたりでも、神社の社は例外なくその正面を海に向けている。



Photo_2 南種子町と中種子町の境付近にあるマングローブの林に入ってみた。砂地のそこここにカニがあけたと思われる穴があいていたのだが、残念ながらカニを見ることはできなかった。歩いていくと小さなカニがわらわらと一斉に逃げていくのを見たかったのだけれど。

 以前、西表島でマングローブ林に入った時は、目の前一面小さなカニがいて、歩を進めるほどに足音に反応するのか、わらわらと穴に逃げ帰るのを見た。カニの地面が自分の進路に開けていくと言った雰囲気で、なかなか楽しかった。


Photo_4
 これは観光名所の千倉の岩屋にある鳥居。一度くぐったらこっちがわにもどってこれなくなりそうな雰囲気。もちろんくぐって遊ぶ。
 そこらへんにゲゲゲの鬼太郎かネズミ男かがいないかと思って見回してみたが、当然いるはずもない。

 こうやって鳥居に石を積むのは何かの信仰なのだろうか。賽の河原の石積みと何か関係があるのか?っそもそも横の石碑にも石が積んであるのはなにか意味があるのだろうか。
 岩屋そのものは、海の波が打ち寄せてはいってくる洞窟だった。岩屋の沖は潮の流れが速いので、うっかり泳ぐと流されそうになるそうだ。



Photo_3
 そして、カニと戯れ損ねた私は、海岸でロケットの打ち上げを待って泣き濡れるのであった。

 ああ、仕事をしなくては。明日は打ち上げ前日、のはず。

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Comments

初めまして。海の下に「土」の漢字ですが、「塰」ではないでしょうか。「あま」、もしくは地名として「あまどまり」で変換できるかもしれません。Shift-JISだと9AC9、区点コードだと5243。第二水準の「土」の項目にあります。
1997年発行の『JIS漢字字典』によると、規格制定時の原典典拠として、国土地理協会『国土行政区各総覧』鹿児島県の「塰泊」(あまどまり)が記されています。ここから「塰泊 あまどまり」をキーワードに検索をかけると、種子島の地名として使われているページがヒットします。goo地図住所一覧でも「あまどまり」の読みで出ていますので、少々心許ないものがありますが、おそらくこれで合っているだろうと思います。

http://map.goo.ne.jp/address/46/213/010/?kana=1
鹿児島県 西之表市 西之表 住所一覧 - goo 地図

 おお、そうです。この文字です。ご教示ありがとうございます。ちゃんとJISに入っているんですね。

 そうか「あまどまり」と読むのですね。地元の地名表示には読み方が入っていなかったので、読めなかったのです。

硫黄島(鹿児島県三島村)にも、安徳帝が落ちのびてきたという伝説が残っていて、一応話はつながっているようですね。墓が残っていたり、子孫までいるとか。
http://www.mishimamura.jp/ioujima.htm

 なんと、激戦地となった硫黄島ではなく、九州沖合に同名の硫黄島があるのですか。

 これは知りませんでした。色々あるものですねえ。

鳥居の上に石を投げて乗せることができると願いがかなうというのがありますよね。
ただ、この写真を見る限りは投げて乗せたとは思えない状態のようです。重石のようにも見えますが上に積むとバランスが悪くなりそうです。

石が積んであるのを見るとつい自分も石を積みたくなる心理が働いて最終的にこうなったんじゃないんでしょうか。

2009.7.22の皆既月食が日本で見られるのは,
鹿児島の硫黄島周辺だけです。周辺のトカラ列島の島では、天文ファンの受け入れ(宿泊や交通)に今から頭を悩ましているそうです。

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