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ネットで読める松浦の記事

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2007.07.18

ネイキッドロフトの補足:宇宙活動法をウォッチしよう

 ネイキッド・ロフトに来た皆様、どうもありがとうございました。

 どうも私が話しすぎたような気もします。「記者はしゃべるな。取材相手をしゃべらせて記事を書け」というのが、日経BPで受けた教育だったのですが、その意味では私は取材する者の限界を超えてしまっていたかも知れません。

 ネットの反応を見ると「で、法案に賛成なのか反対なのか?」という意見がありましたが、私は宇宙基本法のような法律ができることにははっきり賛成です。

 ただし、宇宙基本法は、その名の通り、国家がどう宇宙に関わるかの理念を定めた基本法です。基本法の成立後には、より具体的に国の方策を定めた、例えば「宇宙活動法」というような法律が必要になります。

 この「宇宙活動法(仮称)」が、どんなものになるかが、実のところ非常に大切です。つまり理念は理念であって、それこそ憲法のようにかなり恣意に解釈可能ですから、より具体的になにをするかを書いた「宇宙活動法」がどんなものになるかが重要であるわけです。

 宇宙基本法の法案条文には、既存組織の見直しが明記されています。つまり、この法案が成立すると、続く宇宙活動法の内容に基づく、JAXAを含む大幅な組織改編が既定路線として組み込まれているということです。

 ですから、我々としては「宇宙活動法(仮称)」がどのような内容になるかを、十分注意してウォッチしていかねばならないでしょう。

 産業界は、宇宙基本法によって、防衛と安全保障方面に新たな官需が発生することを期待しています。

 そうなるかどうか。私は怪しいもんだと思っています。財務省の縦割り予算を破って、宇宙分野の官需を増やすということは、現在の緊縮財政下で、他の分野から予算をふんだくってくるということです。それだけのロジックを宇宙開発推進側が組めるかどうか。

 早い話、道路関連の予算をよこせというなら、道路よりも宇宙のほうが役立つことを示さなくてはいけないのですが。

 今後考えられる最悪のケースは、予算の縦割り構造のために宇宙予算は増えず、新しい宇宙組織には防衛方面も組み入れられ、既存予算枠に防衛需要が込みになって、これまでの宇宙開発は一層圧迫されるというものでしょうか。

#もうすでに、情報収集衛星が宇宙予算に食い込んでいるわけではありますけれど。

 しかも新組織に防衛が組み込まれることで、組織は閉鎖的になり、今まで出てきていた情報も出てこなくなり、見学に入れた場所も入れなくなる、ということが起きるでしょう。

 そうならないためには、我々は、しっかりウォッチングし、必要な時には意見を言い続けねばならないでしょう。

2007.07.14

連絡:明日のネイキッドロフトは、天候に関係なく決行です

 先ほど連絡がありました。明日15日のネイキッドロフトのイベント「宇宙基本法を考える」は、台風4号の進路如何に関わらず、決行です。ロフト側曰く、「ウチは休んだことないんです」。

 私もまた、何がなんでも明日は東京に行かねばならなくなりました。

 台風が吹き荒れるどまんなかで、宇宙基本法を語るというのも、まあ、それはそれで面白いかと思います。

 というわけで気分は「台風クラブ」です。中学生のようにハイになって、あれこれ語ることにしましょうか。

2007.07.11

宣伝: 7月15日(日曜日)、ネイキッドロフトのイベントに出演します

 7月15日(日曜日)、新宿・職安通りにあるネイキッドロフトのイベントに出演します。「ロケットまつり」とは大分趣が違う、政治やビジネスに踏み込んだ話になるはずです。


「宇宙基本法」を考える

 今年秋にも成立か?という「宇宙基本法」。宇宙の軍事利用に道を開くと言われたり、日本の宇宙産業の発展に不可欠と言われたりしているけれども、実際の所どんな法律なのか?その狙うところは?問題点はないのか?
 法案に反対の石附助教と、基本賛成だけれども色々問題点ありとする松浦がぶつかる、本音のバトルトーク。

【出演】石附澄夫(国立天文台電波研究部・助教)、松浦晋也(ノンフィクション・ライター)

7月15日(日曜日)
場所:ネイキッドロフト:東京都新宿区百人町1-5-1 百人町ビル1F 03-3205-1556
地図:いつものロフトプラスワンとは別の場所です。

OPEN18:00/START19:00
前売¥1,000(+1drinkから)
当日¥1,200(+1drinkから)
※前売券は電話予約のみで受付中!(1人につき2枚まで)
[予約・お問合せ]新宿ネイキッドロフト(03-3205-1556)

2007.07.07

宣伝:7月8日(日曜日)、新宿・ロフトプラスワンのトークライブ「ロケットまつり13」に出演します

 またも前日告知という泥縄になってしまいましたが、明日土曜日ににロフトプラスワン恒例のロケットまつりがあります。今回は、午後7時からということもあって、わりと時間的余裕もあり、リラックスした内容になるはずです。

…と、思うのですが、さあ、どうなるのでしょうか(JAXAの中期計画決定も近いことですし、ボソっ)。

 久し振りの日曜日開催なので、お気軽に参加頂ければと思います。


宇宙作家クラブpresents
「ロケットまつり13」


【Guest】林紀幸、垣見恒男
【出演】浅利義遠(漫画家)、松浦晋也(ノンフィクション・ライター)、他

場所:ロフトプラスワン(新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 03-3205-6864、地図)

7月8日(日曜日)
Open18:00/Start19:00
チケット:1000円(飲食別)

2007.07.03

お知らせ:7月7日、東京・学習院でニセ科学フォーラムが開催されます

午後5時追記
  コメントにあるように、すでに締め切られたそうです。この後は参加した人のレポートに期待ということになります。


 今日中にメールで申し込む必要があるので、大急ぎの告知です。私も本日気が付きました。

 「水はなんにも知らないよ」の著者である左巻健男さんを初めとして、小波秀雄京都女子大学教授、 菊池誠阪大教授、天羽優子山形大学助教授といった、この分野の論客が一堂に会して、ニセ科学が社会に与える影響を考えます。


ニセ科学フォーラム2007(7/7土13時〜学習院中高等科 )

 マイナスイオン、ゲルマニウム、デトックス、血液型性格判断、どれもニセ科学!

先の見えない世界の中ではびこる、あやしげな「科学もどき」商品の数々。その裏で言葉巧みなスピリチュアルや癒しに流されるひとびと。科学者のチームが現代の「ニセ科学」のすがたをさまざまな角度から徹底的に解剖して、市民と科学のよいあり方を考えます。

●7月7日(土)13:00〜17:30

●会場
 学習院中・高等科(501・502教室)
(JR山手線目白駅徒歩5分、都電荒川線鬼子母神電停徒歩7分)
http://www.gakushuin.ac.jp/mejiro.html
目白駅改札を出て右(出口は1ヶ所)、2つ目の信号前の正門を入り斜め左へ

※お車でのご来場はご遠慮下さい。

●日程
受付12:30〜12:55 受付

開会挨拶 左巻健男 13:00〜13:05
1.小波秀雄: 21世紀はニセ科学の世紀? 13:05〜13:40
2.菊池誠 :スピリチュアル・ニューエイジ・ニセ科学 13:45〜14:25
3.天羽優子:「水商売ウォッチング」の現場から 14:30〜15:10
4.土佐幸子:米国のニセ科学の様子と理科教育の「探究」 15:15〜15:45
5.左巻健男:理科教育と科学リテラシーからの提言 15:50〜16:20
全体討論 16:30〜17:30

●参加費:無料
●申込先:左巻健男:rika88 @ rika.org(@の左右を詰めてください。)
参加ご希望の方は必要事項をご記入のうえ、7月3日(火)までにE-mailにてお申し込みください。会場の定員になり次第締切とさせていただきます。
※当日は、E-mail返信でお送りする受付番号を必ずお持ちください。

申込E-mailの題名は、ニセ科学フォーラム としてください。本文に、
・お名前
・所属(勤務先など)
・緊急連絡用・返信受け取り用E-mailアドレス
をご記載ください。2人以上でお申し込みの場合は、一人一人別々に以上の内容をご記載願います。

●JST研究開発テーマ:「21世紀の科学技術リテラシー」中の「市民の科学技術リテラシーとしての基本的用語の研究」(研究代表:左巻健男[同志社女子大学現代社会学部現代こども学科・教授])の研究の一環として開催。
http://www.jst.go.jp/pr/info/info231/shiryou4.html

●共催:新理科教育フォーラム(代表:左巻健男):新理科教育MLを運営。
http://www.rika.org/rikaml/

2007.07.02

天下りと人間の尊厳を考える

 SAFTY JAPANこんな書評を書いた途端に、テレビでは例のイギリス人英語教師殺人事件を超能力者が透視するという2時間スペシャルをやったそうで……私は見ておりません。まず間違いなく透視結果は外れるでしょうから、録画した方は、事件解決時まで取っておきましょう。

 というのはともかく、同じSAFTY JAPANで、森永卓郎さんが「公務員法が成立、それでも天下りはなくならない」という記事を書いている。
 天下りの構造について、私から付け加えることはなにもない。今度の公務員法改正で、天下りはなくならないとする森永さんの意見にも賛成だ。

 ここでは、天下りする人の心理について、ちょっと書いておこう。

 私は、天下りした側もされる側も複数取材した経験を持っている。
 一つはっきり言えるのは、天下りされる側は誰一人として「ウエルカム天下り」なんて考えてはいない。引き取らないですむなら、なるべくそんなものは引き取りたくないと考えている。官の側が引き取らないとペナルティをつけてくるから、仕方なく引き取っているのである。

 某電機メーカーの偉い人から、愚痴を聞いたことがある。「元NASDA(もちろん旧宇宙開発事業団のことだ)で理事やった○○さんね、いい人だし、現役の時は僕も彼と一致団結して日本の宇宙開発をものにしようと官も民もなくがんばったものだよ。○○衛星は彼と協力したから実現したようなものなんだ。それでもウチの会社に天下って来たら、これがもう新聞読むことしかしないんだよ。彼一人に年間いくらかかっているか、とは考えないんだよねえ」

 大ざっぱな計算だが、天下りの年収が1000万円とすると、オフィススペースの維持や秘書を付ければその人件費、さらには交通費などで、年間ほぼ同額のコストがかかる。例えば重役待遇で年収2000万円の天下りを引き受けると、実際にかかるコストは4000万円というわけだ。
 企業は慈善事業ではない。年間4000万円で天下りを引き受けるということは、引き受けることによって年間4000万円以上の利益の出る仕事が官からもらえるということを期待するわけだ。

 「そんなことはない。使える有能な人材が来ることもあるのだろう。その場合は4000万円も利益が出なくても得と言うことになる」と考える人もいるだろうが、それは甘い。
 天下りは、基本的に下られる側に選択権はない。「そんな人要りません」とは言えないのだ。だから天下りを受け入れる側はもっとも堅い計算をする。つまり、天下りでやってくる者が全くの無能であっても損をしないところを狙うのだ。

 それでは、天下る側の心理はどうなのか。

 これが面白いところなのだが、必ず「みんな私によくしてくれて、私の周りで一致団結してくれた」などとと言うのだ。

 私は、中央官庁で事務次官やらなんやらを経験して、複数の天下り先を回った人にも、複数人インタビューしたことがある。そんな人たちに「天下り先ではどんな仕事をしましたか」と問うと、いくつかの事例が出てきて、例外なく「ここの人は『○○さん(ここに自分の名前が入る)のためだ』と、一肌脱いで頑張ってくれたんですよ」というような話になる。

 天下られる側からは、「ウエルカム」というような話は一切でない。「困ったもんだ」という話しか出てこない。これは「官→民」というパターンのみならず、「官→傘下の特殊法人や財団法人や独立行政法人」、あるいは「官傘下の法人→民」、というパターンでも一緒である。

 にも関わらず当人は、私が会った限り一人の例外もなく「ここでは私に良くしてくれて」と語ったのであった。

 いったいどういうことか、

 簡単な話であって、天下っている当人も自分が嫌われていることに、無意識のうちに気が付いているのだ。しかしそれを意識し、認めることは、プライドが許さない。だから「みんな私を信頼してくれて、よく頑張ってくれた」というように、自己欺瞞へと逃げ込むのだ。
 自己欺瞞に逃げ込んで夢の世界に生きる代償が、天下りの安定した地位と結構な額の退職金というわけである。

 天下られた側も、天下りの自己欺瞞を維持するのに苦心する。「やっぱり俺のこと嫌ってるんだろ」とウサギのようにおびえる天下りよりも、「良くしてくれるねえ」とにこにこしている奴のほうが、担ぐに当たってはずっとましだ。
 もちろん「ここでは嫌われた」と親官庁に報告され、天下りがこなくなり、その分仕事が減ったなどということは避けたい。「ええ夢みてもらって、次の天下りの椅子に気持ちよく送り出す」ほうが、仕事の面でも得というものである。


 私思うに、天下りという仕組みは二重の意味で人間の尊厳を踏みにじるシステムである。
 まず、天下られる側の「頑張って仕事をすれば自分の組織のトップになれる」という希望を打ち砕く。
 そして天下る側は、「本当は嫌われている」という実態におびえつつ「みんな良くしてくれる」という自己欺瞞に逃げ込まざるを得なくなる。これもまた、人間の尊厳のかけらもない悲惨な心理である。

 今現在、天下りの椅子に座っている人は、ここを読んでいるだろうか。
 私の取材経験から言えば、貴方はまず間違いなく周囲から蛇蝎のごとく嫌われています。周囲は、あなたと事を起こすと面倒だから、「はい、はい」と言っているだけです。
 もしも貴方が仕事のできる人ならば、「仕事はしっかりしているからまあいいか」と認められているだけです。決して好かれているわけではありません。「仕事はできるけどうっとうしいなあ」「あいつがいなけりゃこれだけ経費が浮くんだけどなあ」と思われています。

 いずれ、天下りを我が事として考えねばならない官庁の方は、ここを読んでいるだろうか。
 皆さんのかなりの部分(全員とは言いません)が優秀であることを私は知っています。中央官庁が決して高給ではないことも知っています。時として理不尽な働き方を強制されることも承知しています。事務次官経由以外の天下りは、事実上出世レースからの脱落であることも知っています。
 それでも、官庁生活の果てに「少しは楽をしないと」と天下りを望むことは、自己欺瞞に満ちた後半生を送ることであると指摘しておきます。だれもあなたを必要としていないのに、「自分は必要とされている」と考えて生活するのは、あなたにとって幸福なことでしょうか。収入のためには仕方ないことでしょうか。

 私は、天下りの根絶は、単に民間のためのみならず、今現在中央官庁で汗を流して働いている現役官僚達の、ごく原始的な人間の尊厳にとっても必須であると考えている。
 早いと四十代後半から天下りが始まる。多くは子どもが学費の一番かかる年齢にさしかかっており、家計の面から、秘書課の差し回す天下りを受け入れることとなる。
 つまり天下りを官僚のライフサイクルの面から見ると、人間の尊厳を差し出して収入を安定させる、一種の奴隷制なのだ。

 森永卓郎さんの記事の中で、片山虎之助自民党参院幹事長が「国家公務員には身分保証があるんだよ。そうした身分保証があるなかで、あえて辞めてもらうのだから、人材斡旋機関を設けて再就職の面倒を見てあげなければまずいだろう」と語ったと出ている。

 片山幹事長は、官による斡旋がそもそも人間の尊厳を損なう奴隷制であるとは、夢にも思っていないのだろう。

 最近は、私よりもずっと若い官僚に会うことも増えた。中には、キューブサットを初めとしたまさに「本番」の宇宙開発を経験して、なおも官僚の道を選んだ人もいる。
 私は、彼らが独立自尊で生きる、真に「国民のために働く人」となってくれればと願っている。人間としての実力を付け、秘書課が差し回す天下りの斡旋に「私は私で生きられますから」と言い切れる人になってくれればと、期待している。

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