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2007.09.22

パリの素敵なおじさまたち

おわびと訂正(2007.9.25)この記事で引用したaqqueさんのBlogの記事を、私は2007年のものと誤解していました。実際には2005年、前回のパリエアショーの時のものでした。この記事の趣旨には影響ないですが、一部言い回しが事実とは異なることになります。訂正し、お詫びいたします。コメント欄で指摘してくれた方、ありがとうございます(松浦)。


 パリ・エアショーには、日本からはいつも日本航空宇宙工業会がブースを出している。ところが、この展示がなんともやる気を感じさせない——という話は、2003年に私と一緒にパリ・エアショーを取材した笹本祐一さんが「宇宙へのパスポート3」の74ページに「やる気のない美術部が過去の遺産を寄せ集めて文化祭の体裁だけ整えました、な感じ。いや実際やる気ないんだろうし、閑散としてましたけど。」と書いている通りである。

 航空宇宙工業会の展示のみすぼらしさは、関係者も認識しているらしい。3年前に航空宇宙学会のパネルディスカッションに出席した時、 「パリエアショーでなにが恥ずかしいって、まったくやる気が感じられない航空宇宙工業会の展示が恥ずかしかった」と言うと、横でパネラーとして出席していた三菱重工の方が、吹き出し笑いをした、ということもあった。

 MRJがモックアップまで出展した今年パリ・エアショーで、日本航空宇宙工業会はどうだったのだろうか、と思っていたら、某氏からこんなページを教えてもらった。

 「フランスよもやま生活記 自由な生活を求めて」より。パリで生活する日本人女性aqqueさんのBlogである。

 2007年ではなく2005年でした。

 パリ・エアショーで、「日本*****という財団法人」の受付で働いたという話である。パリ・エアショーに日本の財団法人は出ていないので、これは間違いなく社団法人・日本航空宇宙工業会であろう。

 核心は パリ エアショー裏話1に書いてある。

みなさん、天下りの人たちだろうと思います。

*肩書きが同じ人が多すぎて、どういう位置づけかわかりません。
(副会長だけで3人、専務(vice president)だけで3人、部長も何人いるんだか・・・など)

*こちらが「おはようございます」と挨拶をしても、挨拶は返さない。

*名前を覚える気がない。(「女性の方たち」でひとくくり)

*陰でこそこそ悪口を言う。

*会長がいると、とたんに腰が低くなって借りてきた猫みたいになるくせに、自分より地位が高い人がいなくなると、急に横柄になる。
→これって、フランスではあまり考えられないことなんですよ。
だからかもしれないけれど、わたしたち女性軍が人(地位)によって態度を変えないことに、彼らはまた腹が立っていたのかもしれません。

(中略)
  やっぱりいわゆる本当にエライ人たちというのは、人間的に非常にできた人たちが多いので、とても謙虚だと言うことがわかります。
中途半端にエライ人、既得権を最大限に利用する人たちだけが、横柄な態度をとるのかな、と感じました。

 ここで、日本航空宇宙工業会を離れて一般論をしよう。主題は終身雇用組織が、組織中の厄介者をどう処遇するか、である。

 会社組織と所属する人にも相性というものがある。会わない場合、その人は組織内で「使いづらい奴」「役に立たない奴」と判定される。その中には、有能なのだが性格に問題がある、とか、上司に恵まれず能力を発揮できずに腐っているという人もいる。もちろん、本当の困ったちゃんもいる。

 終身雇用の世界では、そんな彼らを組織外に放り出すことができない。

 ではどうするか。道は2つある。一つは子会社に押しつけること。もう一つは業界団体など、関連する外部団体に押し込むことである。

 前者の場合、子会社社長になって阿鼻叫喚の惨状に、などということもままある(大抵の場合「ヒトラー」とか「アミン」といった独裁者のあだ名が付く)。ただし、この場合はまだましな人材であることが多い。

 子会社は本社と利益共同体なので、あまりの惨状になると本体の経営に差し支える。このため、本当にどうしようもない奴と判定された者は、業界団体に出される場合が多い。

 送り出す側は、困ったちゃんがよろこんで業界団体に出て行くように腐心する。大抵は「業界団体から大所高所の見地で、業界を指導してもらいたい」などといって送り出すことになる。

 そして困った人の多くは洞察力と自省心に欠けているので、「そうか、俺は偉くなったんだ」と錯覚して、業界団体にやってくることになる。そうなると、「この人は本当に社会人なのか?」とびっくりするような横柄な態度を取ったり、稚拙なウソをついたり、相手に応じてころっと態度を変えるような素敵なおじさまの一丁上がり、ということになる。
 中には会社を離れて、うってかわって水を得た魚のごとく働き出す例もあるが、誰もがそうなるというわけではない。

 ちなみに私が過去の取材経験でぶつかった最悪の例。

 もう時効だろうから書くが、1997年に「H-IIロケット上昇」を書くとき、私は当時のロケットシステム社長にインタビューしようとした、別の席でお会いした時に本人の了解も取り付け、一応会社に話を通しておかなくてはな、と電話したら、まさに素敵なおじさまにぶつかってしまったのである。

 彼は名乗りもせず、鼻息も荒く私を断罪した。
「あなたは何者ですか。社長があなたのような人に会うわけがないじゃないですか。ダメです。お断りいたします。取り次ぎなんてとんでもない」
 いくら社長本人の了解を取っていると説明しても、ダメの一点張り。そのうちに、「あなたは何の権限があって社長に会おうというのですか」と言い出したので、こりゃダメだと思って電話を切った。
 「完全に、社長に会う人をコントロールするという権限に酔っているな」と思った。無能の人が、与えられた職務上の権限を自分の能力であると錯覚するのは、よくあることである。
 私は結局、社長のインタビューをあきらめた。

 ずっと後になって、ロケットシステムの重役に「こんなこともありました」と話したことがある。重役氏は、私が名前も知らない素敵なおじさまが誰であるかを一発で理解したようだった。
「彼は元の会社に返しました」
という返事が、即座に返ってきたのであった。

 もちろんそれがいかなる団体であっても、よく働く有能な人はいる。そういう人がいないと、そもそも組織は回らない。

 とりあえずaqqueさんのBlogから推察するに、日本大使館で開催されたMRJレセプションには、「陰でこそこそ悪口を言」い、「会長がいると、とたんに腰が低くなって借りてきた猫みたいになるくせに、自分より地位が高い人がいなくなると、急に横柄になる」素敵なおじさまが複数出席していたのだろう。

 正確には「今年のパリエアショーにおいても、MRJレセプションに「陰でこそこそ悪口を言」い、「会長がいると、とたんに腰が低くなって借りてきた猫みたいになるくせに、自分より地位が高い人がいなくなると、急に横柄になる」素敵なおじさまが複数出席していた可能性が高い」です。

 私は、MRJが心配である。

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Comments

 具体的な組織名は出しませんが、複数の組織から天下りを受け入れねばならない外郭団体などの場合、その外郭団体が自分たちにとって「敵対的」な行動をとったと判断すると、上流の組織は下流の外郭団体に「報復」としてもっとも使えない人材を押し付けるということもあるようです。

過去、自分が地位に対して頭を下げてきたという経緯があって他人もそうすべきだという意識があるんじゃないんでしょうか。
こういう仕事がしたいというのではなく、ああいう頭を下げられる地位につきたいと。

とある海外メーカーでの経験では、地位に対して敬意を払うということではなくその人が持っている能力に敬意を払います。
仕事ができない人は誰からも敬意を払われなくなり自然と別の会社に仕事を求めることになるようです。

うーん、やっぱり!!

>林さん

その団体の「敵対的」独自路線を破壊するために、もっとも猛毒のウイルス(もっとも使えない人材)を注入し弱体化させるという高度な報復手段です。
幸運にも!その人材が新聞沙汰のトラブルを引き起こせば
「ほれ!お前ら立派なこと言うても部下の不祥事でマスコミにたたかれとるやないか!部下の不始末は上司の不始末じゃ!!」
(関西圏の方、失礼します!不愉快な場合は関東モンの方言に置き換えてください。)
と、相手の独自路線を破壊又は妨害できますからね。

本題にもどって

ラテンのノリで
「おー、++ちゃん!元気ー!? どお奥さん? 息子さんテニス大会で優勝だってぇー!!すごいねー!!」
と相手を褒めちぎる「豪快で素敵なおじさま」(言葉通り)と

ヌメーとした目で相手を値踏みして、えらそーな態度で返事する「えらそーなおっさん」(くどいけど言葉通り)

どっちから商品を買いたいと思います??

パリ エアショー裏話1
の方を見てみましたが
日付はJune 22, 2005なので
今年では
ないと思うのですが(^^ゞ

 うわ、大失敗です。

 ご指摘ありがとうございます。訂正しておきました。

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