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2007.10.21

かぐや、観測軌道に到達、定常制御モードに入る 午前10時半からの記者会見

 午前10時半からのかぐや定常制御モード移行の記者会見です。

 出席者は滝澤悦貞プロジェクト・マネージャー、佐々木進プロジェクト・サイエンティスト、祖父江真一セレーネプロジェクトチーム主任開発員。


「いつもニコニコ記者会見ですが、」という広報の言葉から始まりました。


滝澤:初期クリティカルフェイズが終わった。

 定常制御モードとは、月にセンサーを向けた三軸姿勢制御状態のこと。

 発表文読み上げ。

Sofue 祖父江真一セレーネプロジェクトチーム主任開発員から、今回公開された画像に関する説明.モニターカメラの画像。カメラの視野は71°×94°。高度120kmからの撮影で1ピクセル300mの分解能。

 松浦注:モニターカメラの視野は35mmフィルムカメラ換算で、焦点距離19~20mm程度。

質疑応答。今回は名乗らない人が多かったので、質問者不明が多いです。

NHK 撮影された写真の過去との違いはどんなものか。今回公開された画像の特徴的な部分を知りたい。例えばクレメンタインよりも低い高度で取っているとか。

滝澤:我々としては臨場感のある写真だと思っている。かぐやの一部が写っている。

不明 クリティカルフェーズ終了の感想を知りたい。名前を乗せた人やデータを待っている科学者の皆さんにひとこと

滝澤:ここまでのことがきちんとできないと観測ができないわけで、今後の観測が可能になったことでほっとしている。期間が長かっただけでなくいつどんな操作を行うかのイベントのリストも長かった。見返してみてこれだけやったんだな、と思った。
 今後、機器の立ち上げをしていく。新しいどんなデータが出てくるか楽しみである。


佐々木 かぐやはオリンピックで言えばオリンピックの会場に来たところ。これから試合の準備を始めるところ。
 これから、中国、インド、アメリカとプレイヤーがどんどん月にやってくる。かぐやの観測機器は我々としては自信作なので、いいデータがとれることを期待している。
 予想された観測成果だけではなく、予想できない新たな発見があるのではないか、それがとても楽しみだ。
 観測機器の立ち上げが順調に終わらないと定常観測に入れないので、今のところは機器の立ち上げで心が一杯である。

Takizawasasaki
不明:クリティカルフェーズ終了の日付はいつか。搭載機器の確認はどんな順番で行うのか。

滝澤:定常制御モードに19日に入れ、20日にきちんと定常制御モードに入れたことを確認した。

佐々木:今後のスケジュールは、まずはバス系のチェックアウトを行う。冗長系のチェック。
 観測系では、最初に磁気センサーのマスト伸展、レーダーサウンダーのアンテナの展開、超高層大気プラズマイメージャー(UPI)のを搭載したジンバル機構の立ち上げを行う。

 次に14の観測機器の低電圧系の立ち上げを行う。これが終わるのが11月半ばまでに。
 最後に、高電圧系を少しずつ電圧を上げていくという方法で1ヶ月かけて立ち上げていく。

 ただしこれは予定であり、動く可能性はある。


フリーランス青木 かぐやと子衛星の軌道について。現在かぐやは80×120kmの軌道に入っているがこれは100km円軌道に近づけるのか。子衛星はねらった軌道に入ったのか。

滝澤:結論から言うと現在の軌道はねらったとおりの軌道である。100kmの円軌道に対して月の重力場のひずみで高度は変動する。かぐやの観測軌道は30km程度の誤差を許容している。現在の軌道は誤差の範囲内。
今後月の重力場のひずみの影響で、だんだん100kmの円軌道に近づき、やがて近地点と遠地点が入れ替わり、まだ軌道が楕円へとなっていく。その誤差が30kmぐらいになったらスラスターを噴射して軌道制御を行う。

中国の探査機が上がることについてのコメントを。

滝澤:共に成功したいと思っている。お互いに取ったデータで月研究を高め合うようにしたい。

佐々木:1+1が3にも4にもなるような協力関係を構築できれば期待している。


毎日新聞 電力、推進剤、通信系なども予定通りなのだろうか。

佐々木:推進剤は予定よりも多く残っている。ロケットの軌道投入精度がよかったことと、軌道制御が効率的にできたため。電力は予定通り。通信もきちんととれている。

エイビエーションウィーク 推進剤のこと。もう少し具体的に。予定より何kg余ったとか。

滝澤:予定に対して数十kgは余計に残っているという状態である。

喜多:10年間の開発と2ヶ月のクリティカルフェーズおつかれさまでした。打ち上げ以降大量のやることをこなしてきたと拝見したが、そのために相当準備したのではないかと思う
 そのあたりでひとつなにか自慢をしてもらいたい。

滝澤:月周回軌道投入は失敗すると大きな影響がある。失敗した場合に備えて、さまざまな対策をすごく考えた。
 かぐやは相模原で追跡管制をやっているが、そこが災害に遭った場合どうするかも考えた。月周回軌道投入にあたっては相模原が駄目になっても大丈夫なように臼田から直接コマンドを打つ体制を整えた。色々なバックアップを考えて本番に望んだ。幸いにしてそれらは使わずにすんだ。
 かぐやは新しいデータを世の中に出すというのが最終的なゴールなので、そこまでは新たな気持ちでやろうと考えている。

佐々木:ここまで順調に来ているのは、数十人の運用関係者が心をひとつにしてシステマティックに動いているから、それが大きいと思う。

 会見後のぶらさがりにて。

祖父江:今は月の出に合わせた生活をしています。時刻はUT(世界標準時)を使っています。まだまだ昼夜関係ない生活が続きますね。
 かぐやはこれまで、スラスターの噴射で姿勢を保っていました。軌道変更のための500Nスラスターの噴射時も、リアクションホイールを動かしていません。定常制御モードで、はじめてホイールを動かして姿勢制御を始めたわけです。


滝澤:これからは世界に誇るべきデータを静かに出していくことができればね。

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Comments

松浦様

お疲れ様です。今回もJSpaceにて翻訳させて頂ければと思っております。ご検討の程よろしくお願い致します。
http://jspace.misshie.jp/

ちなみに前回の記者会見の記事翻訳は米国惑星協会のPlanetary Blogでもご紹介頂きました。ありがとうございました。

 naoさん、了解です。了解ですよろしくおねがいします。

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