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2007.10.12

「はやぶさ2」に注目する理由

 昨日の記事を読んで、「感情的に煽っている」「陰謀論だ」と思う人もいるようだ。確かに昨日は、現状説明は書いたものの、私が「はやぶさ2」を支持する理由を明確には書いていなかった。

 以下、私の意図を要約して説明しよう。私が「はやぶさ2」に注目する理由は2つある。

まず、「プログラム的探査」の重要性。

 私は、継続的、計画的に太陽系探査を進める「プログラム的探査」が、今後の日本の宇宙開発に必須と考えている。探査は継続的に実施しなくては意味が薄れるし、その場合今回の探査機と次の探査機を一連のものとして構成や目的を明確にしたほうが成果が大きくなるからだ。

 実は1970年代にプログラム的探査への動きがあった。

 日本で最初に惑星探査の重要性を主張して行動したのは、東北大学の大家寛教授(当時)だった。1)まず行きやすい金星に、2)2機の探査機を送り、3)次いで火星、4)その次に木星——という主張は、まさにプログラム的探査そのものだった。

 この主張が通らなかった経緯は、拙著「恐るべき旅路」に書いた。

 大家教授の意見が通らなかった結果、「さきがけ」「すいせい」は別のセンサーを搭載することになり、成果を増したが、「同型機を2機打ち上げる」習慣がつかなかったことは、極端に言えば火星探査機「のぞみ」の失敗に遠くつながっているかも知れない。

 「はやぶさ2」が動き出すか否かは、1970年代以来30年振りに訪れた、日本にプログラム的探査を根付かせるチャンスなのだ。ここで失敗すると、また後々に禍根を残すのではないかと私は危惧している。

 もうひとつは、「科学衛星こそが、技術開発の源泉」となりつつある現状では、宇宙科学を予算削減の対象と考えるのではなく、むしろ技術開発のテストベッドとして積極的に捉えるべきではないかという考えである。

 昨今の科学観測の高精度化により、科学衛星の実現にはハード、ソフトの両面で最先端技術の開発と採用が不可欠になりつつある。高精度の姿勢制御や高出力太陽電池、高感度、多波長のセンサー素子など、かつてならば技術試験衛星が担っていた宇宙での技術開発を、科学分野が担うようになってきている。

 その一方で技術試験衛星は、巨大化し、失敗が許されなくなってきたせいもあって、試験要素以外は極端に保守的になってきつつある。実際問題として「きく8号」は情報通信研究機構の縄張りのようになってしまっており、しかも実施する実験アイテムが実用化する見込みは立っていない。

 とするなら、宇宙科学分野に注力することで、宇宙での技術開発力を保持しつつ、同時に世界最先端の科学観測成果を上げるというのが正しいいき方ではないかと考えるのである。

 そのためにも、科学衛星や探査機がある程度以上の頻度でコンスタントに打ち上げられる環境を作る必要がある。

 以上2点、私が「はやぶさ2」に注目し、下記のような呼びかけを行う理由である。

 もちろん、根底には「またはやぶさが見たイトカワのような光景を見たい」「見知らぬ太陽系各所を探査したい」という欲求があるのは言うまでもない。

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Comments

 ESAの2015-2025での科学ミッションが選ばれたそうです。今回採択された9つののミッションのうち、JAXAとの共同ミッションが4つ(NASAとの共同の3つより多い!)。
ESA-JAXA共同ミッションの一つの Marco Polo は、地球近傍の小天体からのサンプルリターンなので、はやぶさの後継ミッションのようです。
 今後の開発予備研究の後で10年先の打上候補が絞り込まれていくようです。
 これは、はやぶさ2にとっては、吉報なのでしょうねえ。
http://sci.esa.int/science-e/www/object/index.cfm?fobjectid=41438

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