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2007.10.11

はやぶさ2に向けて、最後のお願い



Pioneer10 Voyager1 Garileo


Cassini Newho


上、左から、パイオニア10(1973)、ヴォイジャー1(1979)、ガリレオ(1995)

下、左から、カッシーニ(2000)、ニュー・ホライズン(2007)

Photo by NASA


 まずは写真を5枚掲載することにする。その意味は、この記事の最後で種明かしすることにしよう。

 この前の「ロケットまつり」終了後にちょっと話した、「はやぶさ2」ののこと。

 当方がもたもたしていうちに、コメント欄でうーぱーさんにハッパを掛けられてしまった。

 そう、現在「はやぶさ2」を巡る状況は非常に厳しい。10月末がひとつの区切りになり、そこまでに海外の打ち上げ手段を調達できないと、計画自体がつぶれるという状況になっている。

 「はやぶさ」の冒険を目の当たりにし、今、「かぐや」が送ってくる月の映像にわくわくしている私達にすれば、日本国民が宇宙開発に何を求めているかは、非常に明確に思える。

 太陽系全域の探査だ。

 しかし、そのさきがけとなるべき「はやぶさ2」は今、予算の帳尻合わせのために危地に立っている。10月末に向けて、現在急速に事態は動いている。

 「はやぶさ2」に始まる、プログラム的探査に必要な予算は、JAXA全体の5年間の予算からすれば、大きな額ではない。

 にもかかわらず、GXロケットを初めとした遅延と予算超過を繰り返す積み残しの不良債権的計画に押されて、JAXAは今、未来に向けたもっとも貴重な宝石を自らゴミ箱に放り込もうとしている。

 だが、諦めるのはまだ早い。関係者は実現の可能性を必死で探っている。計画を好感を持って迎え、打ち上げ手段の提供を検討しようとする海外機関もあるようだ。

 私は、見たい未来を実現するために、声を上げる時だと思う。上げ続けることが未来につながると思う。

 皆さんの声が、「はやぶさ2」を、ひいてはその先にある日本の宇宙探査を実現する鍵となる。

 訴えるべき相手として、私は以下の3つの組織を選んだ。


1)文部科学省・宇宙開発委員会(メールアドレスはvoiceアットマークmext.go.jp)

2)内閣府・総合科学技術会議(http://www.iijnet.or.jp/cao/cstp/opinion-cstp.htmlから送付)

3)JAXA経営企画(メールアドレスはprofficeアットマークjaxa.jp)

 

 すでに議論や実態がかなり進んでいることを考慮して、即効性がありそうな送り先を選定した。

 宇宙開発委員会は、委員長以下5人の委員宛となる。

委員長     松尾 弘毅   元宇宙科学研究所所長
委員長代理   青江 茂    元日本原子力研究所副理事長
委員      池上 徹彦   前会津大学学長
委員(非常勤) 野本 陽代   サイエンスライター
委員(非常勤) 森尾 稔    元ソニー株式会社取締役副会長

 総合科学技術会議は、以下の委員宛となる。

閣僚
福田 康夫 内閣総理大臣
町村 信孝 内閣官房長官
岸田 文雄 科学技術政策担当大臣
増田 寛也 総務大臣
額賀 福志郎 財務大臣
渡海 紀三朗 文部科学大臣
甘利 明 経済産業大臣

有識者
相澤 益男(非常勤議員) 東京工業大学学長
薬師寺 泰蔵(常勤議員) 慶應義塾大学客員教授
本庶  佑(常勤議員) 京都大学客員教授
奥村 直樹(常勤議員) 元新日本製鐵(株)代表取締役 副社長、技術開発本部長
庄山 悦彦(非常勤議員) (株)日立製作所取締役会長
原山 優子(非常勤議員) 東北大学大学院工学研究科教授
郷 通子(非常勤議員) お茶の水女子大学学長
金澤 一郎 日本学術会議会長 ※関係機関の長

注意:それぞれきちんと宛名に個人の名前を入れること。でなければ、メールは各委員まで届かず、途中で止められてしまうかもしれない。
 メールが組織全体で処理する形にならないように、個人への宛名は必須である。

 総合科学技術会議は、人数が多く、メールフォームが1000文字以内となっている。短い文章で的確に意見を言うため、相手を絞る、何通かに分けて出すといった工夫が必要になるだろう。

 JAXA経営企画は、「広報気付、経営企画部御中」ということになる。

 正直、ここで私が書いている事を、すぐにJAXA広報は気が付くと思うので、「また松浦さんが余計なことをして」ということになるかも知れない。それでも、JAXA広報は一般からのメールを差し止めてるというようなことはしないはずである。

 この文章を読んでいるあなたが、一昨年の「はやぶさ」の探査を、一喜一憂しながら見守った経験の持ち主ならば、少しの勇気を奮い起こしてメールを書いてもらえれば、と希望する。

 見たいものがあるならば、「見たい」と口に出して言わなくてはならない。欲しい未来があるのなら、「欲しい」と宣言して行動するべきだ。黙って待っているだけで、望む世界がやってくるはずがない。

 「はやぶさ2」が、C型小惑星に降下する勇姿を見たいのならば、ほんの少しの行動してみよう。


 以下は、先だってnikkei BP.netで書いた実現の瀬戸際に立つ「はやぶさ2」~国内外の高評価と対照的なJAXA内での冷遇 (2007年9月25日掲載)の、その後も含めた現状である。


——————————————————

「はやぶさ2」を巡る状況(2007/10/11)


 「はやぶさ2」実現にあたっての問題は、今後5年のJAXAの中期計画が、予算見積もりに縛られているということ、そしてその中に、国際宇宙ステーション、準天頂衛星、GXロケットといった、予算超過と計画遅延を繰り返したアイテムが多数存在し、処理されざる不良債権として予算を圧迫しているということにある。

 そして、文科省、宇宙開発委員会、JAXA経営企画部などは、予算を増やしたり不良債権を損切りするのではなく、そのまま抱えたまま新規アイテムを抑制することで、予算の枠内の中期計画を策定しようとしている。

 洋の東西を問わず、宇宙予算が危機的状況に陥った場合、真っ先に割を食うのは宇宙科学、それも新分野に乗り出そうとする新しい宇宙科学だ。

宇宙科学の予算が切られる理由


 宇宙科学には、学問的興味から行う不要不急の宇宙開発というイメージがまとわりついている。そして、公共事業的な巨大計画は、一応「ほら、このように役立ちます」ということを主張した上で予算を取っている(それが本当に役立つのかどうかは全く別だ)。

 予算額も大きいので「産業に与える影響が大きすぎる」という理由からメスが入ることはない。

 そこには、予算の多寡にかかわらず、1アイテムは1アイテムという役所の都合も存在する。1アイテムを財務その他で通す手間は、アイテムの大小にかかわらず同じだ。そして、産業政策としては予算の大小のみが問題となる。「小さな計画沢山」よりも「ビッグプロジェクトが少数」のほうが、管理もしやすいし、話も通しやすい。

 そして小さな計画を多数切ったほうが、「ほら、このように計画を削減して予算を節約しました」と説明もしやすい。

 「はやぶさ2」は、一番切られやすい宇宙科学の範疇にあり、しかも太陽系探査という新しい分野である。さらに、「はやぶさ2」を出発点とした一連の「プログラム的探査」の出発点でもある。このことを経営企画の側から見ると、「はやぶさ2を認めると、はやぶさ2のみならず、その後もずっと支出することになるのではないか」という危険を感じることになる。

 だから、「こんなものを、この予算の厳しい時期に認めるなんて、とんでもない」という思考に走ってしまうわけだ。

 だが、少し考えれば、健全な組織において経営企画セクションが果たすべき本当の役割は、

 1)今後の宇宙計画にとって何が必要かを真剣に考え抜き、
 2)本当に必要な計画とそうではない計画を先入観や過去の経緯を廃して峻別し、
 3)本当に必要な計画にのための予算は、なにがあっても充当する、
 4)ないしは、実施できるだけのバックアップを行う、

 ということではないだろうか。

 そして宇宙科学は、宇宙開発全体の中で、「常に行うべき事業」という地位を占めている。決して宇宙開発全体の中に占める割合は大きくないが、常時実施しつつ、次に向けた種子を蒔いていかなくてはならない。

 プログラム的探査は、未来に向けて、今こそ蒔くべき種子である。


宇宙科学を厚遇している気分になる事情


 困ったことに、JAXA経営企画セクションが「十分に宇宙科学には厚く付けた」という気分になる事情が存在する。

 次期固体ロケットの開発と、同ロケットで打ち上げる小型科学衛星が、次期中期計画に盛り込まれたことだ。次期固体ロケットは、当初開発費が100〜120億円ということだったが、この1年間の検討によりロケットが、そもそも無理がある2段式から技術的にまともな3段式になり、低軌道500kgから1.2tに能力が向上したなどの理由から200億円に増加した

 余談だが、昨年にM-Vが中止になった表向きの理由「今後4年間、内之浦のM-V発射施設を維持し、PLANET-CをM-Vで打ち上げた場合のコストは106億円になる」を、思い出してもらいたい。当時ISASは100億円でM-V第1段を改良する希望を持っていた。結果として施設維持費を考えても新ロケット開発は、M-V改良と同じだけのコストがかかることになったわけだ。

 既存ロケットを改良したほうが、信頼できる大きなロケットが入手できるのが道理である。

 次期固体ロケットの開発費用が200億円に増えたことは、ロケットの開発には喜ぶべきことだ。しかし、合理的なロケット構成を採用し、必要なコストを積み上げた結果が200億円であるということは、「そもそも、無理やりの理由を付けてM-Vを廃止に追い込んだのではないか」という疑惑に対する傍証になるであろう。

 そして、次期固体ロケットで打ち上げる小型科学衛星は1機40億円と見積もられている。

 「これだけ付けたのだから、次期中期計画で、もう宇宙科学はいいだろう」というわけである。

 しかし、そうではない。次期固体では十分なサイズの探査機を惑星間軌道に投入する能力はない(今のところ、ではあるのだけれども)。宇宙科学を次期固体に絞るということは、「日本は太陽系探査に手を出しかけたけれども、金がないから手を引きます」ということにつながるのである。
 本当に金がないならともかく、その一方で不良債権的計画は、ずるずると進行しているのだ。


なぜ、月探査WG? 「惑星」はどこにいったのか?


 宇宙開発委員会でも、JAXA経営企画セクションと連動したかのような動きがある。

 現在、宇宙開発委員会は、月探査ワーキンググループで、月探査をどう進めるかという議論が行われている。

 名称に気をつけてもらいたい。なぜ「月探査ワーキンググループ」なのだろうか。JAXAに今年度新設されたJSPECは「月・惑星探査推進グループ」だ。JAXAとしては月探査と惑星探査は一体であるという認識に立ち、まとめて推進するという意志を、組織名に示したわけである。では、なぜ宇宙開発委員会が、独立行政法人となり裁量権を増したJAXAの意志を無視しするような名称のワーキンググループを発足させたのだろうか。

 表向きは、「月に議論を絞りたいから」ということであり、惑星探査については第一回会合で報告を受けてはいる。

 だが、このような名前から入るという方法は、官僚が自分の意向を通す時によく使う手段である。後で「そもそもここは月探査について話し合う場所だから」と、惑星探査に関する議論そのものを不可能にしてしまうわけだ。

 なぜ惑星が抜けたのか。おそらく、「はやぶさ2」及びそこから始まるプログラム的探査が、議事録の残る宇宙開発委員会において、議論の対象にならないようにするためである可能性が高い。もっと具体的にいえば、宇宙開発委員会で「はやぶさ2」について語ることを禁じ手にしたわけだ。
 公的書類である議事録に、「プログラム的探査による惑星探査」「その先導ミッションとしての『はやぶさ2』」という言葉を残したくないのであろう。公的書類に言葉をを残すと、それを足がかりにさらなる主張を行うことが可能になる。
 宇宙開発委員会としては、そんな面倒な事態にしたくはないのだろう。

いいわけとしての「かぐや2」


 先だって10月5日の月惑星WGの会合後、各種メディアに、「かぐや2(セレーネ2)」の構想が一斉に出た。これはおそらく文科省の記者クラブでのレクチャーで、文科省側がしゃべったのだろう。

 これも妙な話だ。JSPECでは、プログラム的探査として、「かぐや(セレーネ)」による月周回探査、セレーネ2による月着陸探査、さらにその先のセレーネXによる月土壌サンプルリターンという流れを考えていたはずだ。これらは一つの流れで考えるべきものであり、ひとつを取り出して語るものではなかったはずである。

 なのになぜ、今、この時点で、かぐや2だけがことさらに強調されるのか。

 宇宙開発委員会(ないしはその一部)は、予算が足りないので次のJAXA中期計画では、かぐや2のみを盛り込み、その先のセレーネXにつながるプログラム的探査については、「やるかも」という程度の言質すら与えたくないのではないか。

 「かぐや2」がこのタイミングでことさらに出てくる裏には、「金がないから、かぐや2だけだぞ」という意志があるというわけだ。私達はうっかり「かぐや2が出てくるのだから、当然その次も期待していいのだろう」と思いがちだが、ロジックとしては「かぐや2は認めてやるから、それで満足しておしまいにしろ」という言い方も成り立つのである(ここらへんは、前にも書いた「官僚の文書は文面のロジックがすべて」という実態にもつながる)。

 なぜJSPECの抱える構想の中で、「はやぶさ2」ではなく「かぐや2」が選ばれたかといえば、将来アメリカの有人月探査に参加する可能性を考慮してのことだろう。

 確かに、こうして次期中期計画で、プログラム的探査の芽を潰しておけば、予算的にはJAXAは安泰ということになる。

 だが、このまま議論が進めば、次のJAXA中期計画では「かぐや2」だけ、その先はもう太陽系探査なんて大それたことは日本としてしない、というルートが、公文書の文言の中にできてしまう。

 プログラム的探査、そしてそのさきがけである「はやぶさ2」をつぶしてしまうということは、この先の日本の太陽系探査をもつぶしてしまうことにつながりかねないのである。

 一部からは「そんなことはない」と反論されそうな気もするのだが、公的文書に書かれた言葉が一人歩きし、強力な強制力を発揮することは、ここを読んでいる人ならば先刻承知だろう。
 

20年前のデジャヴ


 実のところ、月・惑星探査に関する宇宙開発委員会の議論は、私に強烈な既視感を感じさせる。

 前にも同じようなことがあった。

 20年前、私は日経エアロスペースの記者として、1987年から88年にかけて、当時の宇宙開発委員会が実施した、宇宙開発政策大綱という当時の中期計画の改訂作業を取材した。1987年度はまず「長期政策懇談会」というワーキンググループで理念をとりまとめた「長期ビジョン」を作成し、88年度に、長期ビジョンに基づいた大綱改定の議論をしたわけだ。
 この時、長期ビジョンには様々な目標が盛り込まれた。ところが実際の改訂作業に入ると、事務方である科学技術庁・宇宙企画課が「予算がない」ということを理由に、徹底的に長期ビジョンに掲載された計画を削り、結局でき上がった大綱は、夢も希望もないしょぼくれたものになってしまったのだった。
 当時の議論には、民間からも委員として多数参加していたのだけれども、その誰もが「なんでせっかく策定した長期ビジョンを無視してまで、科技庁は大綱の内容を削り続けるんだ」と不満を漏らしていたのをはっきりと覚えている。

(余談であるが、当時の科技庁・宇宙企画課課長は、青江茂・現宇宙開発委員長代理だった。今回の動きに似たところがあるのは、あるいは青江氏個人の“官僚としての仕事の手癖”が出ているのかも知れない)

 1988年の大綱改定は、結局バブル経済による税収増、そして崩壊後も続いた科学技術重視の中で、宇宙予算がそこそこ増えたことによってその問題点は隠蔽された。とりあえず予算が増えたので、危機的状況は当面回避できたのだ。

 しかし今回、予算増加を見込める国家財政ではない。財政が萎縮している今、「やらない」としてしまったら、本当に必要なことでもできなくなってしまう。


せっかくの芽生えを潰すのか


 確かに、「はやぶさ2」をつぶすということは、お役所的にはとてもスマートな解法だ。予算超過を起こさない。余計な予算を財務に要求する手間もない。既存計画を恥を忍んで潰す必要もない。

 しかし同時に、国民の期待にも応えていない。当面、役所的に平穏無事なだけで、その先になにか素晴らしい成果が得られる見込みがあるわけでもない。ただ、宇宙産業にだらだらと金を流し続ける、公共事業的計画のみが生き残ることになる。

 そして、「はやぶさ2」の終焉は、火星探査機「のぞみ」、小惑星探査機「はやぶさ」でせっかく芽生えた、日本の太陽系探査への動きを、すでに予算が付いている金星探査機「プラネットC」と、欧州との協力ミッションである水星探査機「ベピ・コロンボ」のみで打ち止めにしてしまう可能性が高い。

 検討が始まっている「のぞみ」後継機も、「はやぶさMark2」も、電力ソーラーセイルによる木星スイングバイ・黄道面脱出ミッションも、その先、2020年代の木星探査機も、「金欠日本はそれでいいんだよ」という力ない言葉とと共に、すべてなしになってしまうかも知れない。

 私としては、そのような事態は、来て欲しくはないのである。


 ここで、冒頭に掲載した5枚の写真の解説をしよう。これらはすべてネットで拾ってきた歴代の探査機が撮影した木星の画像から、大赤斑周辺を同じ縦512ドットで切り出したものである(パイオニア10の撮影した大赤斑は、木星全景しか見つからなかった。確か撮影していたはずだが)。

 それぞれの画像は、取得したセンサーも、撮影に使った波長や画像処理手法、撮影した距離やフライバイの相対速度も違う。さらにはネットに掲載するためにJPEG圧縮も受けているので、単純に比較できるものでもない。

 それでもボイジャー1号とガリレオを比べると、ガリレオのほうがより細かい気流の流れが写っていることが分かる。

 カッシーニの画像はガリレオよりもかなり遠い距離からフライバイで撮影しているが、にもかかわらずかなりの細部までを写し取っている。同じくフライバイのニューホライズンは、よく見ると、木星周回軌道から撮影したガリレオ並の精度で渦巻く流れを写し取っていることがわかるだろう。

 最初の、木星近傍を無事に通過できれば上出来だったパイオニア10から、一瞬のフライバイでも詳細観測を行うことが可能になったニュー・ホライズンへ——できることを、できるところから少しずつ、回数を繰り返してより詳細な観測へ。プログラム的探査とは、このようなデータを積み重ねていくことなのである。


 日本国民が望む宇宙開発とはどんなものだろうか。

 アメリカにお客様として乗せて貰う有人飛行ではない。

 機密保持を理由に、役に立っているかどうかすら国民に開示されない、情報収集衛星でもない。

 今になって測位信号の受信強度がどうのこうのと、最初に立てたコンセプトの筋の悪さを取り繕う議論をしている準天頂衛星でもない(そもそも準天頂衛星は2000年前後のコンセプト検討時点で、検討に参加した技術者ほぼ全員が「技術的に筋が悪いからやめろ」と主張していた)。

 ましてや、5年のはずの開発期間が10年になり、開発費は2倍かかり、上げるペイロードすら定かではないGXロケットでもない(霞が関界隈で、「何機上げたらIHIを納得させて計画中止にできるか」などという軽口が出てくるロケットの開発を続けていること自体がふざけている)。

 真に望むのは、未知の世界を探り、確実に「この世界」に対する知見を増やしてくれる、そんな宇宙活動なのである。

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Comments

最近話題?のGoogle Lunar xprizeの回者ではありませんが、はやぶさ2を有志の民間資金で打ち上げるというのは夢想でしょうか?
管制の問題を別にすれば、月着陸用のランダーとはやぶさ2はほぼ同じ大きさ重量で打ち上げエネルギーもはぼ同等と規模と考えます。(惑星間空間に入ってからイオンロケットエンジンで加速させますが。)

JAXAは民間資金や大学などの学術団体との共同活動が出来る様に独立行政法人となった(表向きの理由)のではないですか?

予算がないから研究活動を縮小すると言うのなら誰でも出来る判断です。

民間資金を含めて惑星探査に向けての資金獲得活動を行うべきではないでしょうか?

上記投書活動も含めて、考えていただければと考えます。

心あるものは声を上げよう。すべてが塵に帰る前に。

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