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2007.10.30

踊れ、買うたやめた音頭

 「買うたやめた音頭」というのは、そろそろ20年近く昔、模型雑誌「モデルグラフィックス」に寄稿していた松本州平さんというモデラーが言い出した言葉だ。

 模型店の店頭で、プラモデルを手に取り、ためらいつつもレジに歩き出し、そこで思い直して棚に置き直し、歩き出そうとしてまた思い直してプラモデルを手にとって、以下繰り返す——「買おうか、買うまいか」を迷うと、よくやってしまう仕草だが、それが踊っているようだということで、「買うたやめた音頭」と命名されたわけである・

 「あるある、俺もやったよ」と共感を呼び、一部マニアでは今でも使われている言葉である。一時期プラモデルを買い集めていた頃、私もよく踊ったものだ、買うたやめた音頭を。

 最近だとネット通販だな。ここでぽちっとするか、やめとくべきか。カーソルがあっちいきこっちいき、ああ〜どうしようどうしようと、自分の代わりにディスプレイ上で踊るのである。

 というわけで、以下は最近私が踊っているアイテム。


 宮崎監督がすべてを仕切って全力投球した唯一のテレビシリーズ。というよりも、考えようによっては宮崎駿の最高傑作であり、関係者が「コナンはどこを切っても宮崎さん」という作品である。当時37歳の宮崎監督のリビドー全開。大塚康生作画のラナを「ブスだ」「大塚さんは自分の奥さんに似ちゃうんだよな」といって自分で全部直したというのだから気合いが入っている。

 以前5万円近い値段で出ていたものが、この値段で復活だ。うわ、これは買わねば。

 だが私はレーザーディスクで出ていた全話セットを今なお持ち続けているのである。しかもレーザーディスクプレーヤーも現役だ。

 さあ、どうするどうする。ハァ〜買うたやめた買うたやめた買うたやめた…

 「未来少年コナン」は色々と思い出深いアニメだ。NHKのテレビアニメ第一作というのもびっくりだが、それが「アルプスの少女ハイジ」を思わせる絵柄のSFというのは二度びっくりだった。放映当時私は高校2年生で、合唱部の部活から帰ってきて晩ご飯を食べていると、池辺晋一郎の「じゃじゃじゃじょわーん」という音楽と共にコナンが始まるのであった。

 記憶に頼って書いてしまうと、確か池辺晋一郎のテレビ劇伴第一作だったはず。ミトラという、マリンバの共鳴筒に紙を貼ってびびり音を加えた珍しい楽器が使われている。

 当時は、高校生ともなればテレビマンガ(アニメじゃないよ)を見るのは幼稚ではずかしいという感覚があった。それがコナンで一気に引き戻されたのである。確か同時期に「機動戦士ガンダム」も放送していて、マン研の友人が「シャアだ、やっぱりシャアだよ」と騒ぎだしたのも覚えている。

 そんなに面白いのかよ、と最初に見たのが、サイド6からホワイトベースが出港して、テレビ中継による衆人環視の中でガンダムがドム6機をまとめてたたき落とす回だったなあ。




 これまた、よく残っていたものだよな、の日本語吹き替えトラックが付いた「モンティ・パイソン」。とかなんとかいっちゃったりして〜ぇ、つーんつん。

 英語で見るモンティパイソンは、ひねたロジックやあてこすりを楽しむクールな番組だが、日本語吹き替えは、広川太一郎以下の声優の狂ったような怪演で、まったく印象が異なるものになっていた。

 日本でも「シャボン玉ホリデー」から「ゲバゲバ90分」ぐらいまでは、この手の「笑えないお前はバカだ」的挑発をするバラエティがあったのだが、多分変化が起きたのは「8時だよ!全員集合」あたりからだろう。

 それでもドリフターズは演芸コントの流れを受けて緻密に笑いを設計していくというスタイルだったが、「俺たちひょうきん族」以降は、そもそも笑いを設計するという概念が消えていく。

 個人的に決定的だったのは、とんねるずの登場で、私はとんねるずをまったく評価しない。当時からどこが面白いのかまったく理解できなかった。

 昔は良かった的な物言いは、記憶に美化作用がある以上、厳しく慎まねばならないが、私は今のテレビのバラエティに一切観る価値を見いだせない。そもそも、最近は地上波テレビを観ることもまれだ。

 で、日本語版モンティ・パイソン、買うべきか。ハァ〜買うたやめた買うたやめた買うたやめた…




 最近気になっている作曲家アラン・ペッテション(1911〜1980)の交響曲全集。たまたま聞いたウェブラジオで、彼の交響曲7番をやっていて、度肝を抜かれた。「うわ、ショスタコーヴィチよりもど真っ暗な音楽がある!」。

 交響曲を、「その作曲家の人生のすべてを突っ込んだ大規模管弦楽曲」と広く定義するなら、まさにペッテションの交響曲は、交響曲の王道を行く。どの曲も1時間、さらにはそれ以上の演奏時間であり、ダイナミックな音響に溢れている。

 が、それ以上に彼の交響曲を特色付けるのは、全編を貫く、絶望と呪詛だ。

 実際、彼の人生行路は安泰とはほど遠いもので、絶望につぐ絶望だったようだ。ところが彼は絶望をパワーにして、真っ暗な交響曲を次々に書いたのである。いくつか聴いた曲は、そのどれもが漆黒の闇すら、極め、貫通すれば輝き出すといった風情を湛えている。

 20世紀音楽で、「交響曲は死んだ」と言うことが良く言われる。現代の表現に、交響曲という形式は似合わないというわけだ。確か作曲家の諸井誠は、交響曲の終着点を、オリヴィエ・メシアンの「トゥーランガリラ交響曲」とショスタコーヴィチの「交響曲14番・死者の歌」としていたな。

 ところがどっこい、色々なところに交響曲はしぶとく生きているのですな。それどころか、その暗さにおいてショスタコーヴィチをもしのぐような作品が生まれていたわけだ。

 そんなど真っ暗などれも1時間超の交響曲を集めた全集を、さあ、果たして精神のバランスを保ったまま聴き通すことができるかどうか。そもそも、これを買う前にもっと買うべきCDがあるのではないか。

 ハァ〜買うたやめた買うたやめた買うたやめた…


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Comments

>>松本州平さん 
うわ、懐かしい。ドライブラシ塗装の神様!今でもマスターモデラーズ誌で寄稿されてますね。
正確には「買うたやめた音頭」はホビージャパン誌で活躍されてた時ですね。24年前くらいです。そのときの担当編集者で、松本さんの相方的ライターでもある梅本弘さんがモデルグラフィックス誌の初代編集長になられました。

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