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2007.11.07

「はやぶさ2」同時打ち上げの計算、50周年ラッシュ

 先日、nikkeibp.netにH-IIAで「はやぶさ2」打ち上げは可能?~相乗り打ち上げの可能性に言及しないJAXAという記事を書いた。ここで私は簡単な計算を行い、H-IIA相乗りで「はやぶさ2」は特段のコスト増加なしに打ち上げ可能であることを示し、相乗りの候補として、ASTRO-G(2012年打ち上げ予定)と、GPM(2013年打ち上げ予定)が存在すると指摘した。

 すると、非常にありがたいことに世界ロケット記念館というホームページを運営しているLH2さんという方が、私が行ったよりもきちんとした計算を行ってくれた。

 LH2さんの検討によると、ASTRO-Gと「はやぶさ2」の同時打ち上げは、キックモーターを使わなくとも第2段3回目の着火を行うことで可能になるという。

 私は直接LH2さんとは面識はないが、航空宇宙学科の学生さんであると聞いている。今年のエイプリルフールには「GXロケット、計画変更へ」というヨタ話を飛ばし、そのあまりの出来の良さにJAXAロケット関係者が動揺したという快挙を成し遂げている。

 なにしろ野田司令が野尻ボードで「で、改めてお願いですが、エープリルフール・ネタには、パロディだと、もう少し分かりやすいようにしてもらえますか?」と懇願したのだから、大したものだ(野田さん、私思うにこの件に関してはエイプリルフールのネタを一人歩きさせて、影響を受けてしまうような宇宙開発のプロの側に問題があるのでは?もしも役所とか財政当局とか政治家が影響されるとしたら、エイプリルフールを見抜けない彼らが宇宙政策をどうこうしていることの危うさのほうがよっぽど問題では?)。

 こういうきちんとした検証ができる人が、どんどん増えてもらいたいなと思う。宇宙という分野は、物理法則がそのまま適用できるので、簡単な計算ならば自動車や飛行機よりもずっと単純だ。LH2さんが行ったような計算ができる人が増えて、JAXAのやっていることを計算で検証できるようになれば、それだけ日本の宇宙開発は透明かつ公正なものになるだろう。


閑話休題
 日本ではあまり話題にならなかったが、今年の10月4日は世界初の人工衛星「スプートニク1号」が打ち上げられてから50周年だった。

 実は、今年の11月3日は、スプートニク2号の50周年だった。映画「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」でストーリーのバックグラウンドとなる、初めて軌道に乗り(それ以前も弾道飛行で宇宙に行った生物はいた)、帰ってこれなかった犬の打ち上げがあった日である。可哀想な犬クドリャフカは、打ち上げ数時間後に過熱のために死亡していたそうだ。


 1950年代から60年代にかけて、宇宙開発は急速に進展した。つまりこれからしばらくの間、宇宙は50周年ラッシュになるのだ。ざっとこんな感じで——

  • 2008年1月31日:アメリカ初の衛星「エクスプローラー1号」打ち上げ50周年
  • 2008年3月17日:アメリカの「ヴァンガード1号」打ち上げ50周年(現在軌道上にある最古の衛星)。
  • 2009年1月2日:最初の月探査機ルナ1号打ち上げ50周年
  • 2009年9月4日:ルナ2号打ち上げ50周年(最初の人工物体月面到達)
  • 2009年10月7日:ルナ3号打ち上げ50周年(最初に月の裏側を撮影)


 もう少し関連本が出るかと思っていたが、スプートニク50周年に出たのはこの本だけだった。長年朝日新聞の科学部で宇宙開発を取材してきた著者による、この50年に飛んだ衛星の紳士録である。科学的に華々しい成果を挙げた探査機あり、地味に技術開発を進めた衛星あり、半世紀もあると随分と人間は色々なことをやってきたというのが分かる。今のGPSにつながる「トランジット」や、最初の気象衛星「タイロス」といった、地味であまり知られていない衛星についても取り上げている。また、取材の現場で見聞したこぼれ話も今となっては興味深い。
 宇宙開発に興味があるならば、持っていて損はない一冊だ。

 スプートニク1号については、宇宙開発史の桜木さんが、謎のスプートニク打ち上げロケットT3(pdfファイル)という面白い記事を公開している。ソ連がロケットの正体を隠したものだから、西側ではいかなる推測が出回ったかのまとめだ。実際のR-7ロケットよりも格好良い図が出てくるのが、今となっては笑える。

 そういえば、かぐやの月周回軌道投入も、スプートニク50周年と重なったのだけれど、メディアはほとんど取り上げなかったな。

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Comments

http://www.jaxa.jp/article/interview/vol34/p3_j.html
planet-cのコラムの3ページ目の、切実な嫌み。
「500kgのPLANET-Cを惑星間軌道へ投入する場合は、それより遙かに重たいH-IIAロケットの2段目が一緒に金星に飛んでいくわけです。ここまでしてPLANET-Cを打ち上げてくださるH-IIAの皆様には感謝の気持ちで一杯です。」も「参笑」ください。
キックモーターの採用を中村先生も希望しています。

10月22日から11月16日まで当地で開催されている世界無線通信会議(WRC-07)の会議場ロビーには、スプートニク1号のレプリカが展示されています。

初日から来ていなかったため、開会式の挨拶で誰か言及したかどうかは承知していません。

Astro-Gの相乗りの相手は別のミッションが想定されていると聞きました。

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