A-Bikeが壊れた(その2):観察する、調達する
A-Bikeの続き。
香港にメールを出すと、すぐにルイスという署名の入ったメールが帰ってきた。
曰く"We will check and advise shortly. Thank you."(調べてみるよ)
ということなので、まずは返事を待つことにする。その間に分解したA-Bike駆動系の観察だ。
実際、駆動系は本当にぎりぎりの設計をしているなという印象である。
1次系のギアは、14歯(T)と8Tだ。8Tというのは、チェーンで使える限界まで小さなギアではないか。
自転車部品の業界最大手、シマノの小径車用のコンポーネント(フロントとリアのチェーン駆動系全体のことを指す)「カプレオ」は、リアの最小ギアが9Tだ。通常の自転車用コンポーネントだと最小11Tである。
2次系も、リアタイヤ側のギアは9Tと、ぎりぎりの小ささを選んでいる。小型軽量化のために、可能な限り歯の数が少ない、小さなギアを選んでいるようだ。
ギアには耐摩耗のための熱処理を一応施してあるようだ。それでも歯を観察すると摩耗が始まっている。知人の機械技術者に見せると、「高周波焼き入れはしていないようですね」ということだった。
回転部分はすべてメタル軸受けではなくベアリングが入っていた。中間軸などは、荷重のかかり方を考慮してだろう、右端はベアリングひとつ、左端はベアリング2つで力を受けるようになっていた。予想通り、いやそれ以上にA-Bikeは考え抜かれた設計をしている。
2次系に使われている細いチェーンは、調べてみると1/4インチピッチの「25」という規格品だった。エンジンのカム駆動や、ゴーカートの駆動系などに使われているらしい。
チェーンの質はお世辞にも良くない。中国製らしい分厚いプレートのぼったりとしたチェーンが使用されている。しかも妙に動きが渋い。これは交換したほうがよさそうだ(写真は25チェーン。左がオリジナル。右が東急ハンズで買った椿本製)。
1次系は、シマノの標準品に交換することにする。シマノは8段変速までと9段、10段変速機のためにそれぞれ幅の異なる3種類のチェーンを出している。8速用チェーンは幅が太く、10速用は細い。重量面では10速用の方が軽いが、ギアの歯が分厚いことから8速用チェーンを用意した。自転車屋に聴くと、シマノのチェーンはどうやら台湾製らしいとのこと。
細い25チェーンは、東急ハンズであっさり見つかった。椿本製の国産である。オリジナルは「25H」というプレートの分厚い引っ張り強度の高いチェーンが付いていたが、まあ国産なら強度的に余裕があるはずだから大丈夫と、あまり根拠もなしに通常の25チェーンを使うことにする。
ちなみに椿本のチェーンは全量国産だそうだが、以前椿本を取材した経験のある知人によるとプレートのための鋼材は、韓国のポスコ製を購入していたとのこと。
台湾も韓国も日本も、国際分業が進んで、垂直方向で見ると一蓮托生になっているのだった。
ここで困ったのは、チェーンを必要な長さに切るチェーンカッターだ。チェーンはコマをつなぐピンを押し出して抜く、チェーンカッターという専用工具で切断する。
自転車用のチェーンカッターは持っているのだが、25チェーン用のものは持っていない。東急ハンズの店員は「チェーンの頭をグラインダーで削ればOKですよ」というが、駆動系に傷を入れる可能性のあるようなことはあまりしたくない。こういうときは専用の道具を使うかどうかで結果が大違いになる。ここは多少高くとも専用のチェーンカッターを入手すべきところだろう。
色々探し回り、モノタロウという工具専門Webショップから、25チェーン用のチェーンカッターを購入した。専用工具を捜して専門店を巡り歩く手間がはぶけたのは非常にありがたい
あれこれ、準備をしているうちに、香港のルイスから返事が返ってきた。
"Just received call from our production manager and found out that the replacement wheel will cost you US$23 per unit plus shipping cost of US$15 via speedpost. "
部品は25ドルで送料が15ドルとな。
本当はギアが割れるなんてのは設計ミスか、製造ミスのどちらかだろうと思う。「保証期間はどうしたあっ」と、暴れたいところではあるが、まあ5000円以下ということもあるし、この値段を受け入れることにする。ここで部品を入手できないと、困るのはこちらである。
Since our website does not have this part listed so the most efficient way for you to order this part will be by putting through an order of "one unit of Inner tube" (Total sum will come to US$37) and pay by credit card."
はあ?
なんで私がお前さんとこのWebショップでタイヤチューブを買わねばならんのだ?
ちゃんとメールを読めば良かったのだが、流し読みで前段を見落としてしまった。ルイスに「こっちが必要なのはタイヤチューブじゃなくてギアだ。なにいってんだかわかんねーぞ」というメールを送る。
するとルイスから"We understand your broken part (gear) from the pictures you sent us. We just have different part name to it."と帰ってきた。
そうか、37ドルの部品をオーダーすれば、値段は同じ(実際には38ドルだがまけてくれるということだろう)ということで、こっちの必要な部品を送ってくれるということか。
ギア割れの対策をしたものを送ってくるかと思ったら、前と寸分違わぬ部品を送ってきた。
少々不安ではあるが、これを取り付けるしかない。
さて、組み立てようか。
で、続きます。
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