NHKの「探査機“かぐや”月の謎に迫る」
本日、NHK総合/デジタル総合で、以下の番組があります。
探査機“かぐや”月の謎に迫る
〜史上初!「地球の出」をとらえた〜
午後8:00〜8:43
デジタル総合では、昨日発表された「地球の出」の映像を、フルハイビジョンで観ることができるようです。
不安要素は以下の通り。
出演者
稲垣吾郎
眞鍋かをり
市川森一
アラン・ビーン(アポロ計画宇宙飛行士)
司会:桂文珍
與芝由三栄
解説:国立天文台准教授…渡部 潤一
語り:礒野佑子
土田大
眞鍋かをりはともかくとして、稲垣吾郎・市川森一がなにを言うか非常に不安だ。
NHKには前科がある。昨年の11月18日、NHKは「史上初!ハイビジョン生中継 LIVE宇宙ステーション」と銘打って、国際宇宙ステーション(ISS)からのハイビジョン中継番組を放送した。
ISS内部の画像が見られるということで、私は期待していたのだが、スタジオにゲストが出て、どうでもいいことをしゃべるしゃべる。
この時のゲストは、以下の通り。
山崎直子 (JAXA宇宙飛行士)
米村でんじろう (科学実験プロデューサー)
野口健 (登山家)
江川達也 (漫画家)
安めぐみ (タレント)
米村でんじろうは優れた実験プロデューサーだが、宇宙関係に詳しいわけではない。野口健はアルピニストとして一流だが、もちろん宇宙に(以下同文)。江川達也は、卓越した漫画家だが(以下同文)。安めぐみ(以下略)。
テレビの前で「いいからお前らしゃべるな!ステーションの中を写せ」と怒鳴ってしまった。
この時は生中継だったので、間を持たせるためにスタジオにゲストを呼ぶというのもまだ理解できた(うっとうしいだけだったが)。
が、今回は録画画像なのだ。完全に制作者側がコントロール可能なのである。
この件、取材先で同席したNHK関係者に尋ねたことがある。
「どうしてあんなに素晴らしい素材が、あそこまでダメな番組になっちゃうの?」
「そうしないと視聴率が取れないんですよ」というのが返事だった。
「みんなの知っているタレントがゲストに出ないと、視聴率が取れないと思いこんでいるだけじゃないのですか」と突っ込むと「うーん」という返事。
「『タレントが出ないと観ない』なんて視聴者をバカにしていると、お金があって質の高い視聴者層はみんなディスカバリーチャンネルやBBCに逃げちゃいますよ」
「そうなんですよねえ。僕らも危機感あります」
現場は分かっているらしいのだ。現場は。
とりあえず、今晩の番組では、月からの画像もさることながら、誰が何を言うかに注目である。43分しかない番組だ。私としては余計なおしゃべりは最小限に留め、密度の高い映像と解説を視聴したい。
追記
観ました。かなり悪かったが、最悪ではなかったという印象。さんざっぱらゲストがくっちゃべって、かぐやからの映像は3分というのを予想していたが、それよりはずっと良かった。
ぐちゃぐちゃだったISS番組に対する反省もあったのだろう。
映像の素晴らしさに圧倒される。科学解説部分は手慣れたもので、分かりやすい。
もっとも、ハイビジョン映像は、実時間ではなく高速度再生だったり、一部を拡大したり、ということをやっていた。これは、その旨説明しないと、放送したものがリアルタイム画像と誤解する人が出そうだ。
もちろん「地球の出」が、月周回軌道からのみ見えるもので、月面から見ると地球は空の一点にいつでも止まって見える(もちらん裏からは見えない)ということも説明すべきだろう。
ともあれ、ゲストの人数が多すぎる。43分しかない番組だ。どのゲスト本人もしゃべり足りず、月への興味ではなく、ゲストへの興味で観た視聴者も、どのゲストのファンであれ欲求不満になったのではないか。
しかも、危惧した通り、ゲストのしゃべりに意味がない。映像があまりに雄弁なので、ゲストの「きれいですねえ」というような言葉が空虚に響く。ましてや「ハイビジョン」を強調する演出は「またNHKの宣伝か」としらけるだけ。
そして司会の桂文珍はしゃべり過ぎ。しゃべりを本領とする彼を司会に持って来る意味はどこにあったのだろうか。
ゲストはアラン・ビーンと渡部先生だけでいいだろう。
せっかくアポロ12号で月に行ったアラン・ビーンが出たのだから、もっと彼の話を聴きたかった。番組進行の都合からか、ビーンの発言を遮るようなところがあったのは残念。
今回の映像取得にはディスカバリーチャンネル・カナダも噛んでおり、同じ映像を使った番組を用意している。
- Return to the moon : The First images(ディスカバリーチャンネル・カナダのホームページ)
私の周囲の反応は以下の通り。
「NHKは自分たちが撮影したものの価値を信じていない」
「想像していた悲惨な番組と比較するとずっと良かった」
「司会が駄目駄目」
「ゴローちゃんの評価、その出番の少なさ故に急上昇」
そして、やはりというべきか…
「ディスカバリーに期待だな」
日本でも、デジタルCATVに加入していればディスカバリーHDを見ることができる。
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平成19年11月13日
宇宙航空研究開発機構
日本放送協会
宇宙航空研究開発機構(JAXA)および日本放送協... [Read More]
ろくでもない。
月は同じ面を向けているから、「地球の出」そのものが、「フィクション」であることが抜け落ちて伝えられるのは残念。
重力場の観察の件が絵のないが故に、新聞テレビで極めて低い扱いをされていることがまた残念。
Posted by: pongchang | 2007.11.14 12:03 PM
>「地球の出」そのものが、「フィクション」であることが抜け落ちて伝えられる
それはありますね。今後、月の地平線から地球が昇るというような描写が、あちこちのドラマやアニメに出てくるとまずいかもしれません。
Posted by: 松浦晋也 | 2007.11.14 12:17 PM
>「地球の出」そのものが、「フィクション」
秤動による「地球の出」ならありそう。
# ちと苦しいか
Posted by: tarosuke | 2007.11.14 01:01 PM
http://freedom-project.jp/wp/freedom_6022_1024.html
上のような場面が「かぐや後」に作られたなら
地球はもっと小さく描かれたはず。
かぐやのハイビジョン映像は全人類の脳に
計り知れない影響を及ぼしたのでは
Posted by: STC | 2007.11.14 06:55 PM
番組を見ていますが、ああ、予想通り!
アラン・ビーン氏の宇宙アートの紹介はおざなり!(おいおい!)
JAXA運用担当者へのインタビューはどうした?
昔の「あすへの記録」(わかんないよね)の硬派な番組はどこに??
Posted by: DVDを見せたがる男 | 2007.11.14 08:19 PM
お、相模原のエントランスからの中継入り!
佐々木先生、出演ご苦労さまです!
失礼!
Posted by: DVDを見せたがる男 | 2007.11.14 08:35 PM
やっぱりなぁ、というNHK定番の演出でしたね。とろくさ。
これならアラン・ペッテション聴いていた方が気分的に滅入らないですみそうな。。。
Posted by: 大澤徹訓 | 2007.11.14 11:27 PM
>かぐやのハイビジョン映像は全人類の脳に
>計り知れない影響を及ぼしたのでは
アポロの時代に(はるかに不鮮明ではありますが)同じような動画も静止画も撮られて公表されていますがね。
一部の日本人の脳にはきわめて限られた影響を及ぼした可能性はありますが。
Posted by: ROCKY 江藤 | 2007.11.15 12:04 AM