つくばりんりんロードを走る
昨年末に発作的に青春18切符を購入した。1万1500円で5枚綴り。1日2300円で、どこまでも普通列車に乗れる「地上の銀河鉄道切符」だ。「カムパネルラ、僕たちはどこまでも行けるよね。鈍行だけど」
ところが18切符の期限があと一週間というのに5日分のチケットをまだ1日しか使っていないではないか!
どこかに行こうとあれこれ調べているうちに、土浦から岩瀬まで、茨城県道501号桜川土浦自転車道線、愛称「つくばりんりんロード」という自転車専用道があるのを思い出した。かつての関東鉄道筑波線が廃線となり、跡が自転車専用道になっている。全長約40km、Frogで走るにはちょうど良い距離だ。
子供の頃の記憶が蘇る。母方の祖父母は土浦に住んでいた。そして祖母の故郷は、筑波線沿線の雨引だった。筑波線には何回か乗っている。
よし、Frogを輪行して行って来よう。というわけで13日日曜日に走ってきました。
こんなコースです。筑波山を回り込み、雨引観音をかすめて岩瀬へ。
走り出してから気が付いた。西高東低の冬型気圧配置ではないか。つまり風は西から東に吹く。西に向かって走るということは向かい風だ。しまった、岩瀬から走るべきだったと思うも後の祭り。強い向かい風の中、軽いギアでひたすら脚を回して進む。
風景はもう北関東の冬そのもの。空はあくまで澄んで、寒くて風が強くて、道はまっすぐ続いている。道路が遠近法そのものでまっすぐ地平線に消えているという風景を、東京の近場で楽しめるのだ。
季節の良い時期は、自転車で一杯になるという道も、誰も来ない。道を独り占めというのはなかなか気分がよい。脚はつらいが。
空に伸びる鉄塔のなんと魅惑的なことよ。鉄塔武蔵野線の世界だ。
沿線には加波山事件の加波山がある。なにやら自由民権運動のにおいのする看板を発見。民声新報で検索すると色々出てくるが、これはたぶん小地方紙じゃないかなと思う。
筑波線のホームが、自転車用の休憩所となって残っている。横を走ると自分が列車になったような気がする。気分は「どですかでん」の六ちゃんだ。頭の中で武満徹のテーマ音楽を鳴らして、「どですかでん、どですかでん」と声に出して走ってみる。すると、近所の子供が「わーい、バカー」とはやし立てて追っかけてくる…ということはない。
廃線になって20年経つのに、まだこうやって線路が残っているところもある。
母方の祖母の故郷、雨引。祖母は、大地主の六人兄弟の末っ子として生まれ、何一つ不自由せずに育った人だった。子供の頃はこのあたりの野山を思うがままに駆け回っていたそうだ。
生前、色々と聞いた田舎の地主末っ子のワイルドライフ。
「カエルを捕ってもって帰っとな、女中さんがカエルの皮をプリっと剥いて醤油で焼いてくれるんだ。あれはおいしかったな」とか。
「アオダイショウふんずかまえっと、しっぽもって振り回して頭を石にぶつけて殺すのさ」(これも食ったんだろうなあ)とか。
「虫下し飲んだら、山で遊んでたらお尻の穴から長いのが出てきちまってよ、虫ぶらさげたまんま泣きながら山を走って降りて、家で取ってもらった」とか。
その他サンショウウオも捕ってきて焼いて食べたとか。
せっかくなので、雨引観音に詣でる。急な坂を自転車を引いて登る。
大学に入った年の春、「おまえのために取ってきた学業成就のお札を雨引さんに返すから来い」といわれ、祖母と二人で雨引観音に詣でた。筑波線で土浦から確か一時間以上かかったはず。
祖母はぜいぜいしながら「雨引さん」への坂を登っていた。そのあと、祖母の長兄が継いだ実家に寄ったが、その長兄との会話が、生粋の茨城弁。もう何を話しているのかさっぱりわからなかった。
「ああ、楽しかった。年に一回。また来年来るさ」と祖母はにこにこしていたが、直後に急逝。雨引観音詣では祖母との最後の思い出となった。
感傷的な記憶が残る雨引観音だが、お札を買おうとすると、キティちゃんの刺繍の付いた恋愛成就のお守りがなどというものが売っていた。なにか間違っている。なんだかがっくりしてしまい、買わずに下山する。
雨引観音から見る日没。この、北関東のなにもなさというのは決して嫌いではない。
日没少しすぎに水戸線の岩瀬駅に到着。きちんと計ってはいないが、走行距離は雨引観音への寄り道を含めて46kmぐらいか。
東北本線に出て湘南新宿ライナーで帰るつもりだったが、なにやら人身事故があったということなので常磐線経由に変更。
途中、土浦駅で買った。我が心の菓子「吉原殿中」。水戸名物なのだが、土浦でも売っている。子供の頃、大好きでたまらなかったお菓子。
本日現在で、青春18切符はあと2日分残っている。期限は今週末。さあどうしよう。
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