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2008.03.03

伊福部の「管絃楽法」、復刊!


 音楽好きには大ニュース。長らく絶版だった伊福部昭「管絃楽法」が復刊された。

音楽之友社HPの紹介

 作曲においてオーケストラの各楽器にどのような音を担わせるかという作業をオーケストレーションという。オーケストレーションにあたっては、それぞれの楽器の音域から始まって、音域毎の音色の特徴、発音原理や運指などから来る限界、さらには複数の楽器を組み合わせたときに得られる効果などを熟知している必要がある。

 そのようなオーケストレーションに必要な知識をすべてまとめた教科書的な本が、この「管絃楽法」だ。

 自らも魔法のようなオーケストレーションの腕前を持つ伊福部が、第二次世界大戦中、二十代の頃にから構想し、戦後執筆を開始。最初の判は1958年に出版され、15年後の1968年の改訂時にこれを「上巻」として、新たに下巻を加えて完成したという、とてつもなく時間を掛けた大著である。

 オーケストレーションの教科書は、古くはベルリオーズやリムスキー・コルサコフのものから、近代ではウォルター・ピストンのものなど各種ある。伊福部の「管絃楽法」は、それらの中にあっても、最高峰と評価される名著なのだ。

 今回の復刊にあたっては、著者自身が死の直前まで校訂し、その後伊福部門下が作業を引き継いだとのこと。上下二巻だったものを一冊にまとめると共に、内容をが一部追加されている。

 「専門的な教科書を紹介してどうする」と言われそうだが、私は買う。高い本だがそれでも買う。長年捜して、これまで手に入らなかった本だから。

 作曲家になりたくて勝手な音符を書き散らしていた高校生の頃、この本が読みたかったのだ。結局手には入らず、私は全音のポケットスコアに入っていた諸井三郎による薄っぺらい「スコアリーディング」に載っていた各楽器の音域表を頼りに、オーケストラの曲を書こうとしたものだ。もちろんものになるはずもなく、あの頃書いた音楽まがいの楽譜は後で全部棄ててしまった。

 大学に入ってからも、この本は見つからず、代わりにウォルター・ピストンの本を買った。だからといって、自由自在に作曲ができるようになるわけではなくて、結局私は理工学部を出て記者になり、今は皆さんがご存知の通りである。

 それが今になって、この本が買えるようになるなんて…複雑な気分ではあるが、なんと幸せなことだろうか。

 音大作曲科の学生なら買うべし、伊福部ファンなら買うべし。そして——

 ニコニコ動画あたりに初音ミクで投稿していて、なおかついつかはシンセの代わりに本物のオーケストラをがーんと鳴らしてみたいという野望を持っている人は買うべし。覚悟を決めて買うべし。そして、伊福部が書き残した技術を、知と情の両面で喰らい、咀嚼嚥下すべし。


 
 伊福部の技術が、「管絃楽法」に詰まっているとするなら、伊福部の精神はこの「音楽入門」に凝縮されている。本来はクラシック音楽初心者のため平易な入門書として企画された本だが、出来上がってみれば伊福部の音楽芸術に対する態度がはっきりと現れた本になった。1951年初版なので、まさに「管絃楽法」を執筆している最中に書かれた本である。
 「2万5200円なんて高い本、しかも音大生用教科書なんて買えるか!」という人はこちらの本を読もう。

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Comments

http://www.thm-store.jp/cnts/st01.html
未使用曲と限定製造にそそられ買うべきか買わざるべきか・・・
VSメカゴジラにおける伊福部さんのパワーに今更気づかされ
俄然物欲がうぎぎっ・・・

おお!この本が復刊されるのですか!
これは確かにそのスジの人々(笑)にとっては、名著と言われるものなのでしょうね。自分は以前、図書館にこれを取り寄せてもらって読みました(とは言っても、そのスジの人ではないので、もちろん全てを理解できたわけではありません:苦笑)。もちろん専門書なのですが、専門的な技術論の部分を差し引いても、この本は、彼の執念(?)がそこかしこから感じられるような内容だと思います。

松浦さん、この本を購入されますか!スゴいですねぇ、気合(と執念?)が入ってますなぁ!

松浦 晋也 様
「完本管絃楽法」について、当ホームページでのご紹介と、ご購入誠にありがとうございました。伊福部先生は、松浦様同様、科学者の目を持った音楽家で、恐るべき教養と知識の持ち主でした。全面改訂に当たっては、細心の注意を払って正確に、美しく仕上げたつもりですが、お使いになった上でのご意見などがございましたらぜひお教えください。
音楽之友社代表取締役社長
堀内 久美雄

堀内様

 なんと、版元のトップ自ら、こんな場末のblogにいらっしゃるとは。どうもありがとうございます。

 お礼を言わねばならないのはこちらです。おかげで私は、この名著を手に取ることができたのですから。
 これは、たんなる出版ではなく、立派な文化事業でしょう。厚く御礼申し上げます。

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