新型インフルエンザ・パンデミックを知るための書籍
新型インフルエンザ関連の書籍で、今現在簡単に手に入る本を紹介する。今後もめぼしい書籍を読んだら紹介することにする。
なお、私はSAFTY JAPANの書評欄で、「H5N1型ウイルス襲来」と「新型インフルエンザH5N1」、および「日本を襲ったスペイン・インフルエンザ」と「史上最悪のインフルエンザ」を、それぞれ紹介する記事を書いている。
どれか一冊だけ、それもあまりぶ厚くない本を、というならこの新書をお薦めする。新型インフルエンザの基本的な性質から、自分でできるパンデミック対策までがコンパクトにまとまっている。
ウイルス学の観点からもっと踏み込んだ情報が必要ならば、この本だ。ウイルスの系統や、強毒型と弱毒型の具体的な差異、プレパンデミック・ワクチンの現状など、ウイルス学が今現在、どこまでインフルエンザ・ウイルスの性質を解明しているかを知ることができる。今後、本当に新型インフルエンザはパンデミックを起こすのか、起こすとしたらどのような準備をするべきなのかが様々な形で議論されることになるだろう。議論に主体的に参加したいと思う方は、最低でもこの本を読んでその内容を押さえておく必要があると思う。
おどろおどろしい表紙と、「エヴァンゲリオン」もかくやと思われるフォント操作を含む本文とで、キワモノ系と誤解される危険性のある本。実は現時点でもっともよくまとまった「個人でできるパンデミック対策」のノウハウ本だ。自分と家族を救うために今日から自分で行うことができる準備について、必要な情報を一通り掲載している。
一冊と限らずに、何冊かの本を読んで広く知識を身につけたいと思う方は、「新型インフルエンザH5N1」と「パンデミック・フルー 新型インフルエンザ Xデー ハンドブック」の2冊をまとめて読むことをお薦めする。この2冊を押さえておくと、H5N1ウイルスの性質からパンデミック対策までの、新型インフルエンザに関する情報の全体を見渡すことができるだろう。
特段の対策を持たない現状のまま、高い致死率の新型インフルエンザのパンデミックに襲われた場合、日本はどうなるかを描いたシミュレーション小説。著者は研究者であり、本職の作家ではないために小説として読むと大して面白くない。そもそも一般向けの啓蒙を目的とした小説が、面白かろうはずもない。
だがそれでも本書は、「今のままではどうなる可能性があるか」を知るという一点で読む価値がある。
なんでも著者は、パンデミック啓蒙小説を書いて欲しいと複数の作家にアクセスしたものの果たせず、結局自分で書くことになったという。
描かれるすべての描写には、論文の裏付けがあるということだ。今程度の準備だといかに大変なことになるか、具体的な形で見せてくれる本である。
1918年から20年にかけて世界を襲ったスペイン・インフルエンザが日本にどのような被害をもたらしたかをまとめた研究書。おそらくは日本におけるスペイン・インフルエンザに関しては唯一のまとまった本だ。著者は経済史と歴史人口学を専攻する経済学者。過去の人口統計を計算処理して、さまざまな社会の動向を抽出する手法で、被害の実態を調べていく。
欧米でも忘れられた災厄となっていた、スペイン・インフルエンザに史学の光をあてた、歴史的な名著。スペイン・インフルエンザのパンデミックがどのように広がっていったかから、パンデミックにより歴史はどのように変わったまで、その影響を幅広く検証していく。特に、第一次世界大戦とパリ講和会議にパンデミックが与えた影響を考察した部分は圧巻。パンデミック対策を考えるにあたっての基礎的文献の一つであろう。
スペイン・インフルエンザの被害を、主にアメリカの医学研究者はどのようにして立ち向かったの焦点を当てて描いたノンフィクション。当時も研究者達は手をこまねいたわけではなく、新たな治療法を求めて必死に戦ったのだった。しかし、まだウイルスの存在が知られていない当時、研究の方向は見当違いのものにならざるを得なかった。
SAFTY JAPANインタビュー記事の中で、田代氏が言う「20世紀の防疫」と「21世紀の防疫」について深く考えさせられる。
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