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2008.05.22

かぐやは見た!

 当blogを読みに来る方は、先刻ご承知だろうけれども、出ましたね。

月周回衛星「かぐや(SELENE)」の地形カメラによるアポロ15号の噴射跡の観測について

 ネットでは「アポロ月着陸捏造説終了のお知らせ」とかなんとか書かれているが、まあ、これで捏造論者が消えることはないと思う。
 どうせ「いや、あの噴射跡はフィルム特撮を引き受けたスタンリー・キューブリックが、現地ロケをしたときに撮影用につけたものだ」とかなんとか言い出すに決まっている。

 アポロ15号着陸船の噴射跡は、当のアポロ15号自体が月周回軌道から確認している。今回の発表は、アポロの痕跡がアポロ以外の探査機で確認できたことに意味がある。

 それ以上に圧倒的なのが地形カメラが取得した立体データからコンピュータ・グラフィックスで作成した月面の風景が、アポロ15号が月面で撮影した写真と完璧に一致したことだろう。
 アポロ15号の撮影した写真には同時に、月に持ち込んだルナ・ローバーも写っている。この写真が特撮だとしたら、アメリカは1971年の時点で、月面の地形を少なくとも「かぐや」の観測と同程度以上の精度で把握していたことになる。

 ちなみに、かぐやの観測は分解能10m。アメリカがアポロ計画の露払いとして実施した無人探査ミッション「ルナ・オービター」の撮影した画像の分解能は最良で60mである。

 今年秋には、高分解能カメラを搭載したアメリカのルナ・リコナイサンス・オービター(LRO)が月に向かう。LROのカメラで、各アポロミッションが月に残した月着陸船の台座、15号以降のルナ・ローバー、それに火星でマーズ・リコナイサンス・オービター(MRO)が撮影した画像から類推するに、ルナ・ローバーの走行跡までもが写ることであろう(おお、久し振りにMROのページをみたら、フォボスの高分解能画像が出ているではないか!素晴らしい)。

 私達としては、当面の間アポロ月着陸捏造論者の言い訳を楽しむことになるだろう。


 数あるアポロ月着陸捏造論本のうち、最低にして最悪。もっとも許し難い犯罪的な本。一応アフィリエイトでリンクを張っておくが、間違っても買ってはいけない。エム・ハーガ (著), 芳賀 正光 (翻訳) となっているが、これはもちろん芳賀 正光(著)であろう。



 本気で「アポロ月着陸は捏造だ」と主張するなら、「こいつアホや」と思いつつも、そこに稚気を感じることもできないわけではない。ところがこの本は、決して「捏造だ」と言い切らない。あれこれ「これって捏造なんじゃないの」の思わせる“証拠”を提示しつつ、断定せずに「頭の体操です」と逃げている。



 つまり著者は、月着陸捏造論が虚妄であることを承知しているのだ。承知した上で、月着陸捏造論で本を売って儲けようとしているのである。これは情報を生業とする者として最低の、下劣な行いだ。



 この本に関しては原著出版時の朝日新聞社出版局局長、及び担当編集者、あきれたことに朝日文庫への収録を決定した責任者、全員切腹ものである。朝日新聞が「科学を一面トップにした男」木村繁の大活躍で、アポロ報道において他社をリードした過去を忘れたか。

 お前らあやまれ!腹切って黄泉まで下り、木村繁にあやまってこい!


 著者の品性下劣さが臭ってくるエム・ハーガ本に比べれば、副島本はまともなものだ。



 でも、アタシ、こんな本書くんだったら、せめてNASAのホームページぐらいきちんと読んだ方がイイって思うんです…



 「あ〜あ」と思っていたら、案の定第13回トンデモ本大賞を受賞。さらに、と学会面々による反論本まで出てしまった。



 決して副島本単独では読まないこと。2冊そろえると、ある意味けっこうなエンターテインメントになっているので、読みたい方はまとめてどうぞ。

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Comments

地形カメラからのコンピュータグラフィックはすばらしいですね。他のアポロの映像と比較したものをもっと見たいです。

アポロ月着陸捏造論ですが、アポロ計画当初からあったならともかく、映画カプリコン1が作られてから出てきたというのがこの手の論者の想像力の乏しさを物語っていて私は楽しいですね。
多くの宇宙人目撃情報の宇宙人も映画やテレビで登場した後に似た宇宙人が目撃されるようになるという傾向があるそうです。

少し前にある人と、アポロ月着陸捏造論の話をしていていろいろ科学的な反論を試みてもそれに対する反論が出てきてなかなか難しいと思ったものです。でも、「数年ならともかく、30年も国の組織的な陰謀を隠し通すことができるとは思えない」という私の感想には反論が来なかったですね。

「人類の月面着陸~」のほうは両方とも読みましたが、後者を呼んでから前者を読んだほうがいいかも知れませんね。無知な人は特に…

科学知識豊富な人なら、前者を読んでからのほうが後者の本が「間違え探しの解答」となるので面白いかもしれませんが。

にしても、ロケットや衛星の原理はおろか、宇宙開発関係のレポを書いている人がどういう主張をしているのかということを、理解していなくても本が出せるというのは、正直驚きです。副島氏の本にある松浦氏・立花氏の本の引用を見た際にそれをつくづく感じました。

みなさん、コンノケンイチさんを忘れてはいけません。

NASAの撮影写真に独自の見解を加えて、写真を拡大したり模式図を書いたりして「月面で誰かが土木工事をしてる!」とか持論を展開しています。(日本のゼネコンの名前入りのユンボが動いていればそれは面白いが・・・。誰か月面で公共事業をやってるのか??)

NASAの写真は著作権フリーでも、それを商業用に改ざん引用した場合の権利関係はどうなるのかしらん??(この件で米国の弁護士が来ないことを祈ります。告訴されると確実に倒産しますよ担当編集者さん!!納得あるある大辞典の納豆ダイエットの問題はテレビ業界だけの問題じゃないよ!)

コンノさん!JAXAの写真に「**型UFOが写ってる!」とかの持論を書いた書籍を作るとマジにJAXAから出版社に電話が行きますよ。
(たぶんやらないよね。コンノさんや編集者さんは相手見てから作品を作ってるから・・・)
まあJAXAから電話が来たらまたそれをネタにして「脅威(まちがつてません)の新事実!!JAXAは***を隠蔽している!!」と言う題の本とか写真集を作るんだろうなぁ・・・。

上記修正します。

納豆ダイエットの問題は、関西テレビ・フジテレビ系列で放送されたテレビ番組「発掘!あるある大事典2」で起ったことです。

記憶間違いで、番組名が異なっていました。

エム・ハーガ著の本は後書きで正体が芳賀正光であることを述べています。この人は、テレビ朝日の「不思議どっとテレビ。これマジ!?」で月着陸捏造を扱ったときのプロデューサーだったと思います。
つまり、自分自身の番組に便乗する形でなかみスカスカの本を出して一儲けしたわけです。こんな商売は許せません。
しかし、残念なことに私の職場の図書館にも置いてありました。

おっと、NHK教育でルノホートを紹介したフランスZED/アメリカ・コロナフィルムの番組を見てました。
「たろ論」によればアメリカの陰謀(アポロの月面着陸)にソビエトが対抗馬(ライバル)として一役買っていたということになりますね。
「西側のアホなインチキ計画を暴露する!!」とかアメリカの陰謀をバラした方が得策なのに何で協力するのか???

そうすると次は「ユ◎ヤの陰謀」とか「異星人との密約」の話に話題が行くんだろうなあ。

芳賀氏の本は三省堂の書店でつい先月に見かけましたが、立ち読みしただけでネット上の評判どおり、「これで1000円するんかい?」と思わされました。これ買うんならまだ「まんがサイエンス2巻」(1155円)を購入した方が有益ではないかと思った次第です。

なるほど、作者自身がまじめに書こうと思っていないので、あんな言い切りもない内容となってしまったんですね。

なお副島本もその隣にあり、そちらも立ち読みの後、ネット上でと学会本の後に購入しましたが、副島氏の熱意があるだけそちらの方が(文章が崩壊していようとも)面白い書物になっていたとは確かに思います。

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