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2008.05.29

はやぶさ2とマルコ・ポーロ

Keii
 本日、幕張メッセで開催中の地球惑星科学連合大会で開かれた、「始原天体サンプルリターンミッション会合」に参加した。JAXAの月・惑星探査プログラムグループ(JSPEC)が、関係する科学者を対象に開催した、はやぶさ2、はやぶさマーク2の現状説明会である。

 概要は以下の通り。

・はやぶさ2



Hayabusa2


 ロケットを海外から調達することが実施の条件となっており、NASA/ESAと交渉中。打ち上げロケットについて、近日中にESAから回答がある(はやければ6月中)。海外からの調達が不調に終わっても実施に向けての道を探っていくが、かなりきびしいことにはなるだろう。

 関係者の発言からして、打ち上げは2014年に設定される可能性が大きいようだ。

・はやぶさマーク2



Mark2_1


 欧州の研究者と共同でESAの将来探査計画「コスミック・ビジョン」に、「マルコ・ポーロ」の名称で提案したところ、一次審査を通過した。応募総数は50を超えたが、一次を通過したミッションは8つ。そのうちのひとつが「マルコ・ポーロ」。

 現在、計画は「マルコ・ポーロ」が正式名称となっている。探査機本体と次世代「ミネルヴァ」ローバーを日本が提供し、大型ランダーとロケットをESAが担当する。従来のはやぶさマーク2とは、大型ランダーが入ったところが異なる。



Mark2_2

 コスミック・ヴィジョンでは、今後さらに二次、三次の審査があり、最終的に8つのプランが2つまで絞り込まれる。最終審査に通った場合には2011年に開発を開始して2018年に打ち上げる。探査目標はウィルソン・ハリントンという枯渇彗星核だ。

Orbit

 もちろんESAだけではなく、今後JAXA内部の審査会もクリアしなくてはならない。

 ESAのセレクションに落選した場合には、改めて日本独自の「はやぶさマーク2」として計画を立ち上げ直す。これまでの検討結果を使えるので計画の急速な組み替えを行うことになるだろう。その場合、到達可能な都合の良い目標天体を見つけることができるかが重要となる。現在、観測を行って候補を探している。

 ライバルの動向として、アメリカの小惑星サンプルリターンミッション「オシリス」の話が出た。

 オシリスはアメリカの探査機シリーズ「ディスカバリー」に応募したが2007年12月のセレクションで落選した。ディスカバリーのコスト上限である4億2500万ドルを超過したことが響いた。小惑星サンプルリターンはNASAとしては初めてであり、技術開発費がかさむことがコスト超過の原因。
 ただしオシリス構想そのものは死んでおらず、現在「ニューフロンティア」という別のシリーズのセレクションに参加しようとしているとのこと。

 はやぶさに関連して、現在相模原に建設中のキュレーション施設、つまりはやぶさが持ち帰るサンプルの分析と保管を行う施設の概要が説明された。

Setubi

 全体を通して感じるのは、小惑星・始原天体探査に対する理不尽な逆風である。はやぶさは、日本が世界で初めて前人未踏のフロンティアを探査したミッションとなった。我々の前には、小惑星・始原天体という、それこそ「世界的な成果があげ放題」のフロンティアが立ち現れたはずなのに、集中投資するどころか、「海外からロケットをとってきたら計画を進めてもいい」という仕打ちはいったいどうしたことだろうか。

 「成果をあげたから金を回さない」?そんなバカな。

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Comments

> 成果をあげたから金を回さない
「すでに」成果をあげたから、「今後は」お金を回さない
という論理展開かな、と。
同じようなプロジェクトをやろうとしているとしか考えられなくて「新規性が無い」ということで判断しているとか。

もしかしたら「はやぶさ」自体を満身創痍になってもしぶとくがんばっているプロジェクトという見方ではなく、失敗続きなのにダラダラ続いてしまっているしょうも無いプロジェクト、と見ているのかもしれません。

http://robot.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/05/29/1079.html
こっちでは2010年打ち上げになってます。
どっちもJAXA資料ですよね。大丈夫か?

GXもうまく行っていない状況で、今度は宇宙基本法制定でJAXAの見直し論も出てくる状態・・・。

現実的な解として、ESA系のロケットに載せてもらうのは現実的と思います。
将来的にはロシアのソユーズとかプロトンなども候補に入ってくるかと思いますが、日露の協力ができるかどうか・・・。
(ロシアが興味を持っていると聞く、月面ぺネトレーターの件は??)

脱線失礼します。
今l、日本の大学の地質学鉱物学系学科は、将来に危機感があります。
(その結果、日本鉱物学会と、岩石鉱物鉱床学会が統合に至りました)
小惑星サンプルリターンって、日本の大学の地質学鉱物学系にとって
奇貨置くべきチャンスだと思うのですが、
どこの大学も「はやぶさ2:に名乗りを上げていないように感じます。

ISASに対して積極的な地球物理学系とは好対照なんですよね。

全然関係ありませんが、

ディズニーのトイ・ストーリーでおなじみのキャラ「バズ・ライトイヤー」くん?が星出飛行士とディスカバリー(STS-124)で打ち上げられるとのこと。(なぜかJAXAの方にはバズのことは出てません。ソフトバンクとコラボ・・・そりゃディズニーのケイタイでしたね。)

http://www.local6.com/education/16420699/detail.html
(英語ですけど動画も付いてます!)

「みんなビンボウが悪いんだ!」(松浦さん著作中より引用)という負のスパイラルから抜け出すためにも、民間資金を使った宇宙探査を考える時期に来ているのかも知れません。

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