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2008.05.04

やはり現地の防疫体制は不徹底のようだ

 鳥インフルエンザ直近情報をまとめている小樽市保健所長の外岡立人氏が5月4日付けの日記で、現地情報に基づいて秋田県など地方自治体の鳥インフルエンザ対策が、不徹底であることを嘆いている。

「幻想と現実の狭間にて」:外岡氏日記

現場への立ち入り検査の遅れ、現場周辺の消毒措置が行われない不気味さ、周辺を行き交う車両の車の消毒、人々の靴底の消毒、…。何も行われていない。

 どうも、秋田県以下、地方自治体は「養鶏場にウイルスが入らなければ大丈夫」と思っているように見える。養鶏場に入れば金銭的被害が発生するが、野鳥が死んでいる分には金銭的損失は発生しない。逆に厳重な対策をするほどに、地方自治体の財政に負担がかかる。

 しかし、実際には養鶏場での発生と、野鳥での発生では対応策が異なり、それぞれ的確な対応をしないと感染拡大を防げないのだ。

養鶏場で発生

   ・飼育家きんの全殺処分

   ・発生源調査



 渡り鳥で発生

   ・発見地域における他の渡り鳥、家きんにおけるウイルス調査

   ・渡り鳥の飛行ルート調査(または推定)

   ・渡り鳥の感染地の特定(または推定)

   ・特定された地域での獣医学的疫学調査

   ・予想飛行ルートからさらなるウイルス拡大地域の特定

   ・特定された地域での獣医学的疫学調査



  上記作業は、推定される汚染地域への人の立ち入りを制限したうえで、作業員が感染しないような装備で行う必要がある。また基本的には発生から1週間以内に全ての予備的調査と対策を終了しなければならない。

  住民の危機管理対策も同時に進められる必要がある。

 繰り返す。どうも、秋田県以下、地方自治体は「養鶏場にウイルスが入らなければ大丈夫」と思っているように見える。

 冗談ではない。養鶏場に入ったら、鳥インフルエンザとしてはもはや緊急事態なのであって、本来的にはそれ以前の段階でウイルスを食い止めねばならないのだ。

 外岡氏の日記は以下の文章で締めくくられている。

 日本の当局者達が、これまでには野鳥からの感染が人で起きたことはないからと安易に考えていると、世界で初めての野鳥から人への感染が日本で発生ともなりうる。

 これは行政業務ではあるが、医科学的基本を背景にした業務であり対策なのである。感染症予防専門家が陣頭に立っている必要がある。失敗したなら彼の責任となるような権限と責任性を課する。欧米はそうである。

 SAFTY JAPANに、「H5N1―強毒性新型インフルエンザウイルス日本上陸のシナリオ」「パンデミック・フルー 新型インフルエンザ Xデー ハンドブック」書評を書いた。よろしければ読んでみて下さい。

 自分のための備忘録。5月2日の官報に、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律」が掲載されている。5月12日施行。読んでおくこと。

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Comments

やらなすぎというにはあたらないと思いますが、野鳥のふりをした家禽、不忍池や伊豆沼などの餌付けされた鴨や白鳥の場合、専門家が想定しているような、「他の野鳥に拡散する前に独りで静かに死んでくれる」という訳にもいかず、弱りながらもエサをもらい延命し拡散させる懸念がないとは云えないでしょう。
http://www.sakigake.jp/p/akita/politics.jsp?kc=20080429e
知識として、野鳥に餌付けをしない事、ドバトやカラス、野良犬や野良猫も同様に感染症のリザーバーとして働くという、知識というか想像力が必要ですね。
http://ttchopper.blog.ocn.ne.jp/leviathan/2007/12/post_4707.html

>野鳥に餌付けをしない事、ドバトやカラス、野良犬や野良猫も同様に感染症のリザーバーとして働くという、知識というか想像力が必要ですね。

 その通りだと思います。正直なところ、餌付けをしているところに鳥インフルエンザが入ったらどうするのかという事を考えると恐ろしいです。餌付けをやっている場所では、高密度で鳥が越冬します。鳥インフルエンザが来た時、人々は毎年慈しんできた野鳥を鶏のように殺処分できるのでしょうか。

お久しぶりです、秋田のkamiyaです。ウィルス検出の情報があった日に、現場へ取材に行きました。近くに住む人が「死んだ白鳥をカラスがつついていた」と言っていたので、近くのカラスは保菌している物と考えられます。
取材中、持っていったガウンやゴーグルを付けることも考えたのですが、現場は観光バスや行楽客のマイカーがひっきりなしに通るところで、「取材者が大げさな格好をしたので、風評被害が発生した」と言われかねない、と思い、結局着用しませんでした。本当に、発見現場と観光バスが通る道路が隣り合っているのです。しかも、湖を一周する一本道で迂回路がありません。通った車のタイヤを消毒するとなると、通行をかなり制限しなければならないでしょう。そうなると、十和田湖は観光地としてかなり深刻なイメージダウンを覚悟しなければならなくなります。かばうわけではありませんが、行政担当者はその辺も考えて、あまり大げさにしたくない、とおもっているのでしょう。
しかし、一般の人がすぐに接触できる場所でウィルスが検出された、ということは、本当に深刻な事態だと思います。国なり県なりの、ある程度高いレベルで、断固とした処置が必要、という決断が下されなければ、自治体が自主的に判断して対応するのは難しいのでは?と言う感じがします。

 kamiyaさん、現地情報ありがとうございます。

>「死んだ白鳥をカラスがつついていた」
 うわ…これはもうカラスがさっさと死んでいてくれることを願うしかありません。「湖を一周する一本道で迂回路がありません。」ということは逆に防疫には好適なのですね。

>十和田湖は観光地としてかなり深刻なイメージダウンを覚悟
 その結果、新型インフルエンザが秋田で発生し、「十和田インフルエンザ」とでも命名されようものならば、十和田のイメージは、一時の防疫どころではなく損なわれるでしょう。秋田県関係者はそのことを意識しているのでしょうか。

 今回の件は、それほどのことだと思います。

 この韓国の事例を日本は笑えないと思うのです。

韓国:鳥インフルエンザで虚偽発表 KBSテレビ
http://mainichi.jp/select/world/news/20080504k0000m030108000c.html

「道関係者はKBSの取材に「混乱が起きるから公務員は神経を使う」などと述べ、隠ぺいの事実を認めた。」

「新型インフルエンザA十和田」とか「A秋田」なんて名前がついたら、それこそえらいことです。手遅れかもしれませんが、私にも何かできることがないか、考えたいと思います。

>自分のための備忘録
お暇ならパブコメ募集中
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=495080007&OBJCD=&GROUP=
検定していない海外産の新型インフルエンザワクチンは検定不要(案)
前例は小児まひワクチンのソ連からの輸入?

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