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2008.07.13

新型インフルエンザ、7月中旬のまとめ:与党提言出る、感染中断免疫のすすめ

 新型インフルエンザについてのまとめ。6月はサボってしまったが、もちろん脅威が消え去ったわけではない。時間が経った分だけ、新型インフルエンザ発生の確率は上がっている。

 夏の間に、我々ひとりひとりも可能な限りの準備を進め、冬のシーズンに備えなくてはならないと思うのだ。


  いつも通りだが、情報源は以下の通り。
・小樽市保健所の外岡所長による鳥インフルエンザ直近情報
・インドネシア現地情報をまとめたBerita Flu Burung
・笹山登生氏のSasayama’s Weblog
GooglenNewsだ。


●国内の政治、行政はやっとそれなりの動きが出てきた。新型インフルエンザ対策を検討してきた与党プロジェクトチーム6月20日に、パンデミック対策の提言を発表した。

  • パンデミック発生から半年以内に全国民分のワクチンを供給する
  • 鶏卵によるワクチン製造だけではなく、細胞培養法によるワクチン製造能力を国内に導入して製造期間を短縮する
  • ワクチン接種は重症化の恐れの大きい子供を優先する
  • タミフルなど抗ウイルス薬の備蓄を倍増する
  • パンデミック時の医療と物流の両面で自衛隊を活用する

 プレパンデミックワクチンだけではなく、パンデミックワクチンについても言及している。

 とはいえ、これを予算化し、動き出すのは来年度以降ということになる。もちろん今年の補正予算を使って今年度から動くことは可能だが、果たしてそこまで福田政権が踏み込むことができるかどうか。問題の重要性を理解しているかどうか。

 細胞培養法によるワクチン製造も、「海外からの技術導入で、これまで安全保障のために国内で保護されていたワクチン産業が壊滅する」という意見もあるそうで、一筋縄ではいかない。国民が多数死亡する状況になれば、ワクチン産業の生き残りもなにもあったものではないと思うのだが。

●7月10日、厚生労働省の調査委員会は十代のタミフル服用時の異常行動に対して、タミフル服用と異常行動発現の間には因果関係がないとの結論を出した。今後、十代へのタミフル処方原則的禁止が見直される可能性が出てきた。

●横浜市の中田宏市長は、6月28日放送のテレビ番組「WAKE UP・ぷらす」(読売テレビ系)で、「東京で一人でも新型インフルエンザにかかったら、横浜市内でパニックを起こさないように、市営地下鉄を止め、学校は休校にする覚悟でいる」と発言した。

 発言内容は対策を考える上で当然の事だ。感染拡大を防ぐには、人と人とが接触する機会を極力減らさなくてはならない。

 しかし、地方自治体の長で、ここまで踏み込んだ発言をしたのは中田市長が初めてではないだろうか。スペイン・インフルエンザの時のアメリカ・セントルイス市の事例を取り上げたということなので、少なくとも中田市長は、「史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック」(アルフレッド・W・クロスビー著 みすず書房)を読んでいるのだろう。

 パンデミックが起きれば、最低でも地方自治体の長は、中田市長が語るレベルのことを覚悟しなければならない。最低でも、だ。どれだけの長がこのことを理解しているだろう。

●インドネシアの情報隠蔽は続いているようだ。鳥インフルエンザのヒトヘの感染が続いているインドネシアであるが、情報が先進国に利するだけであるとして情報公表を渋ってきた。6月6日、インドネシアの保健相は、鳥インフルエンザによる人の死亡事例が発生しても、即時発表はせず、2〜3ヶ月ごとにまとめて発表すると発言した。すぐに公表してもインドネシアには何のメリットもないというのがその理由。
 6月中旬になって、インドネシアは世界保健機構(WHO)に対しては、素早い情報提供を行うと約束した。ところが、直後にAP通信が、インドネシアが公表していない死亡ケースが存在することをスクープした。

●4月から5月にかけて韓国内で大量発生した鳥インフルエンザは5月末には終息した。ただし、状況を見るに、防疫が効果を発揮して根絶したというよりも、季節が移り変わり湿度が上がったことで感染拡大の確率が下がり、自然終息したという雰囲気だ。だとしたら、カモなど不顕感染を起こす鳥の間で、ウイルスは潜伏しているだけということになる。

 6月に入ってからは香港、バングラディシュで家禽における強毒性鳥インフルエンザの発生が確認された。北朝鮮で発生か、と言う報道もあったが、北朝鮮政府は否定している。いずれにせよ、鳥の世界ではH5N1型のウイルスは完全にパンデミック状態になっており、どこで大規模感染が発生してもおかしくない状況にある。

 6月にはH7亜型の強毒型ウイルスの感染がイングランドで発生した。H7亜型は、過去にH7N7が強毒型鳥インフルエンザウイルスとして確認されている。H7N7はヒトヘの感染の可能性はごく低いそうだが、弱毒型のH7N2、H7N3の一部は、ヒトの気管に感染する形質を示しているとのこと。

●小樽保健所の外岡所長は、パンデミック時の対策として、タミフルを予防的に服用するのではなく、感染10時間以内にタミフル服用を開始する「感染中断免疫」という手法が、最善策だという意見を公表した(最善のパンデミック対策(pdfファイル))。
 感染直後に抗ウイルス剤で治療を開始することで、重症化を防ぐと同時に免疫を獲得するというもの。

 確かにプレパンデミックワクチンの備蓄と即応接種体制が不十分な現状ではセカンド・ベストに思える。が、そのためには感染初期に抗ウイルス剤投与を開始する必要がある。家庭や職場などに抗ウイルス剤を備蓄する必要がある。

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新型インフルエンザ(H5N1)」カテゴリの記事

Comments

抗ウイルス剤の備蓄をするとして、ちゃんと一般に使いこなせるのでしょうか?
いつ服用するかの判断は誰が行うのでしょうか?
こうした医薬品は過剰摂取とか副作用とか理解した上で服用しないと危険です。

行政医師の書いている「新型インフルエンザ対策の達人」も参考にされては?
多数の情報が網羅されており、役に立ちます。

特に下記の”横浜市 中田宏市長の「覚悟」と「正しい理解」”について。
御存知のとおり大きな社会的事象は、単純には決め付けられないのです。
自治体の長には思いつきではなく、”熟考”の結果、実効的に市民のためになる方策を実施してもらいたいものです。

http://newinfluenza.blog62.fc2.com/page-1.html

でも、そういう発言をして議論を喚起していくのも、自治体の長としては重要な役割ではないでしょうか。

http://ir.vical.com/phoenix.zhtml?c=83618&p=irol-newsArticle&ID=1175939&highlight=
蛾も良いけれど、DNAの方がきれいに作る事が出来る。これは、Phase IのDNAワクチンのプレスリリース。

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