iPhone 3G発売から10日
iPhone 3Gが発売されてから10日以上が過ぎた。友人の数人は早速入手して色々と遊んでいるが、私自身は未入手。しばらくは様子見の予定。
一度はソフトバンクから逃げた身というのもあるし、途中で乗り換えると違約金というのもあるが、最大の問題はソフトバンクの通信網がどこまできちんと高速通信を確保してくれるのか、危ういというところにある。私の場合、種子島の路上でも通信が出来ないと困るのだ。
すでにネットでは賛否両論が渦巻いている。私の意見は「これがきっかけになって、携帯電話各社の囲い込み商売が終わればいい」「だからといってアップルの新しい囲い込みに入るのはかなわんな」というものだ。
日本の携帯電話キャリアは、様々な囲い込み商売を展開してきた。データ通信でちょっと便利なサービスを受けようとすると、すぐに月100円〜300円の契約を要求される。それらがお金を払わねば入手できないサービスだったときには「仕方ないか」と諦めることもできたが、昨今インターネットの開かれた世界では同等のサービスが、より使いやすいインタフェースで提供されていたりする。しかもそちらのほうが使いやすかったりする。
だからといって、お仕着せのメニューから外れて携帯電話から自由にネット接続しようとするとパケット単位の法外な料金を取られるという仕組みになっている。最近は若干崩れつつあるようだけれども。
着うたの一曲315円低ビットレート著作権保護機能付き、というふざけたサービスが代表例だ。iTunes Music Storeでは、一曲150円高ビットレートファイルコピー自由の曲が入手できるのだ。
iPhone 3GでiTMSからのデータを着うたにする方法も、さっそく見つかっている。
無線通信のデータ転送速度が高速化した現在、有線のインターネットと無線通信によるネット接続とを区別する理由はない。無線端末からもすべてのネット環境に平等にアクセスできるべきである。
iPhone 3Gはそちらの方向に一歩を踏み出した端末だと言える。
携帯電話キャリアにすれば、これまで儲かってきたビジネスモデルが崩壊するのだからたまったものではないだろうが、技術の進歩はこの方向を向いている。
私としては「技術の進歩に逆らっても無駄だから、キャリアはさっさと便利な土管になってくれ」というしかない。携帯電話キャリアが今後とも儲けるビジネスを継続したければ、既存のビジネスモデルにしがみつくのではなく、「自分たちがデータ通信の土管であることを前提とした新たなビジネスモデル」をいち早く構築するしかないだろう。
出先でノートパソコンを使うことが多い私としては、ハンディルーターとしても使える携帯電話が、種子島や内之浦でも通信可能なキャリアから出れば、すぐにでも乗り換えるだろう。以前紹介した神環境はかなり理想に近いのだけれど、イーモバイルは残念ながら種子島に基地局を置いていないし、電話番号も持って行けない(端末のOSは是非ともWindows mobile以外でお願いしたいところ)。
ちなみにJailbreakというアングラ的手法を必要とするものの、すでにiPhone 3Gをハンディルーター化する方法が見つかっている。これは本来、正規の機能として搭載しておいてしかるべきだと思うのだが。
携帯端末メーカーに関しては、以前書いたことの繰り返しである。
要は、ムーアの法則をどう考えるかということだったのだろう。ムーアの法則により、プロセッサーは高速化し、メモリーは大容量化していく。いずれ携帯端末で、かなり重いとされたOSも軽々動く時代が来る。すると、パソコン用だろうが携帯端末用だろうが、「筋の良いOS」が一種類あればいいということになる。筋の良いOSとは、優れたメモリー管理とタスク・スレッド管理機能、優れたユーザー・インタフェース、生産性の高い開発環境を兼ね備えたOSだ。OS のサイズや実行速度については、気にする必要はない。いずれムーアの法則が解決してくれる。ただ一つの筋の良いOSをブラッシュアップしていけば、いずれそのOSでパソコンから携帯端末までをカバーできる未来が来る。
iPhone 3GはMacOSXで動いている。UNIXの堅牢性とNEXT STEPにルーツを持つ使いやすい開発環境、そして初代MacOS以来磨かれてきたユーザー・インタフェースの思想を実装した環境だ。アイデア次第で、この上でいくらでも新しいサービスを展開しうる。
それに対して、その場しのぎの新サービスを付加することで消費者の目を眩ませてきた日本の携帯電話メーカーが、どこまで対抗できるか、ということである。
リンクは張らないが、2ちゃんねるのプログラマー板にはかつて「もういや 携帯電話開発 お前ら元気ですか」というスレッドがあって、携帯電話のソフト開発に従事するプログラマーがそのデタラメな開発状況を告白していた。おそらく今頃、あちこちで「iPhoneのあの機能を実装しろ、なぜできない」という叱責が飛んでいるのだろう。
できるわけがない。時間をかけて開発に必要な基礎から作っていかなければiPhoneのレベルには到達できない。MacOSXは、ジョブズがアップルに戻ってから考えても10年以上の開発期間をかけている。一貫した思想の元に10年をかけたソフトウエアに、仕様変更でプログラマーを振りまわしつつ半年で作り上げたソフトで対抗できるかといえば、かなり難しいだろう。
ネット上でiPhoneの欠点として言われるものが、すべてCPUや電池などの要素技術の発達とソフトウエアのアップデートで対応可能であることは、皆気が付いていると思う。
そして「日本の携帯電話のきめ細かいサービス」とされるものの、おおかたが1)実は大して必要ない(ワンセグ受信機能のように)、2)ユーザー側で簡単に置き換え可能(お財布携帯のように、Suicaカード1枚を別途持って、チャージに気をつけていれば済む話)、3)iPhoneのほうが安くて便利(着うたのように。中高生からぼったくるのはいい加減にやめにすればいいのに)、4)そのうちiPhone用サービスが出てくる(例えば、「常識的に考えればそのうちにモバゲータウンがiPhone用インタフェースを用意するであろう」、とか)——のどれかに該当する。
今のiPhone 3Gのみでその成否を判断してはいけない。iPhoneを評価するには今後の発展性をも視野に入れておかなくてはならないはずだ。
我々としては、アップルやソフトバンクがなんらかの囲い込みを行わないよう監視しつつ、どのサービスが便利かをみきわめて、ちゃっと乗り換えればいいのだろう。
イヤな客かな?でも、これが当たり前だよね。