ボカロクラシカから
もう少し、ニコニコ動画の初音ミク関連の作品を紹介することにする。
ニコニコ動画には「ボカロクラシカ」という検索用タグが存在する。初音ミクをはじめとした、ボーカロイドソフトでクラシック系の曲を演奏した投稿に付くタグだ。
クラシック系の曲は、ポップス系と比べると再生数は低いのだけれども、結構面白い動画がアップされている。
「いきなりこれかよ!」と言われそうだが、はい、これです。ジョン・ケージによるコンセプチュウアル・アートの極北。「音のない音楽」。これすら、初音ミクでパッケージングすると4万再生を超える一発ネタ人気動画になってしまうのだ。ケージ本人はこういう事態になることを予想していなかったろうけれども、もしも知ったら「それもありだろ」と笑うのだろう。
コメント欄のノリが面白い。
昨年10月という割と早い時期にアップされた傑作。ゾルタン・コダーイのあまり有名ではない合唱曲で、ミクにハンガリーの言葉を歌わせるというもの。曲そのものの魅力が、ミクの声質とよく合っている。
高校の音楽の教科書に載ったりもしている有名な歌曲を歌わせたもの。歌曲を歌わせたものとしては割とスタンダードな仕上がりだ。日本語専用に作られているミクで、外国語を歌わせるのはなかなか難しい。
こっちはブラームス。ミクにはシューマンよりもブラームスのほうが合っているような気がする。
プーランクも悪くない。ミクを使うと合唱もできるという例。
バッハ畢生の傑作「マタイ受難曲」に挑む勇者もいる。音域、発音など難しい部分は多々あると思うのだけれど、ずいぶんと頑張っていると思う。
バッハの器楽曲、特に最晩年の「音楽の捧げもの」「フーガの技法」は、表現と技法の統一という点で空前絶後の高みに達している。楽器指定や音の強さの指定、あるいはテンポ指定すらもされていない、音の高さと音の長さだけを書き込んだ楽譜は、恐ろしいまでに抽象的。にもかかわらず、そこには人を感銘させずにはおかないなにかが存在する。
抽象的なものだから、これらの曲はどんなアレンジをしても映える。「音楽の捧げもの」を代表する曲「6声のリチェルカーレ」は、初音ミクが歌っても、やはりバッハであり、その音楽が壊れることなない。
これが時代を下ってドビュッシーぐらいになると、バッハのように「どんなアレンジでもなじむ」というわけには行かなくなる。ドビュッシーのピアノ曲は、ピアノという楽器に密着して作られているので、そこから離れて別のアレンジを施すのにはよほどの努力と才能が必要だ。この動画でミクはずいぶん頑張っているけれども、かなりつらいところもある。
ミクやリンを電子の歌姫ではなく、独特の音質を持つ楽器として扱う方向性もある。これらの曲が典型例。ミクの音質は意外にライヒの音楽に合っている、これはライヒ自身が声を器楽的に使うことが多い(18人の奏者のための音楽とか)作曲家だからだろう。
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