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2008.10.18

再生数は少ないけれど――ミクオリジナル曲選

 ニコ厨となり、ミク廃ともなると、誰がどんな曲を書いているかが気になって、ニコニコ動画にアップされた「ミクオリジナル曲」タグの付いた動画をせっせと閲覧することになる。

 実際、ミクに歌わせたオリジナル曲は「アマチュアの手すさび」で片づけることができないほどの市場性を見せており、人気トップクラスは100万再生を遙かに超えている。CDのミリオンセラーとの単純な比較はできないだろうが、すべての閲覧者が10回再生しているとしても、100万再生ならばユニークなリスナーが10万人いる計算となる。これはまったくもってバカにできない規模だ。

 とはいえ、あれこれと聴いていった印象では、もう少し再生数の小さいところ、数千から数万再生のあたりにユニークで面白い曲が多い。
 
 以下、数千から数万再生あたりで、私が面白いと思った曲を紹介していくことにする。もちろん投稿されているミクオリジナルをすべて聴いたわけではないから、私が聴いた範囲、しかも私の好みを反映したセレクションではある。それでも、ニコニコ動画で多彩な才能が楽しく遊んでいることの証拠ぐらいにはなるだろう。

ハンドル名への敬称は省略させていただいた。



 野尻抱介さんに教えてもらった、ハンドル名、長靴Pの作品三連発。長靴Pの作品は、達者なギターから繰り出される爽快なロックンロールと、シュールとも間抜けとも人生の機敏を描いているとも取れる歌詞、そして特徴的なミクのイラストが、三位一体の絶妙なコンビネーションを作り上げている。
 実に楽しいと思うのだけれど、どういうわけか私の評価ほどには再生数が伸びない。おやじっぽいミクが嫌われているのだろうか。「出てねえ腹なんて背中と同じだ」とか、最高だと思うのだがなあ。



 魔術的な繰り返しが特徴的な曲。極端な繰り返しが陶酔を生む系統の曲としては、「ストラトスフィア」がVORCALOID殿堂入りとなっているが、私はこの曲のほうが「ストラトスフィア」より好きだ。
 ミクオリジナルではこういう南米系のリズムの曲もけっこうアップされているのだけれど、どういうわけか再生数が伸びない傾向がある。シックスティーンビートのJPOPテイストだけが音楽ではないのだけれども。


 ハンドル名、子猫Pの曲、初音ミクの登場当初は、ミク自身を主人公としたキャラクターソングが多数アップされた。その中でも最大のヒットは「みっくみくにしてあげる」だったわけだが、こちらはラテンリズムのキャラクターソング。なんともかわいい。ちょっと一連の「うる星やつら」のキャラクターソングを思い出させる。


 同じく子猫Pの曲。キャラクターソングも、「そのキャラクターが、そのキャラクターたる理由はどこにあるのか」というメタな視線を入れると、こういう異色作になる。一発ネタといえばその通りだが、プロからはまず間違いなくでてこないであろう視点が面白い。


 あれこれの要素を付加して音楽を豪華にしていくのではなく、逆にぎりぎりまで切りつめていった歌。まったく無駄がないシンプルさがいい。


 ハンドル名、トゥルララPは、歌詞をつけずに「ラララ」とミクに歌わせることに執心している。歌詞を歌わせることができるのがミクの特徴なのだが、あえて歌詞を禁じ手にして伸びやかな声のサウンドを生かし、素直な曲に仕上げているのが快い。
 この曲も野尻抱介さんが見つけてきたもの。ちょっと聴くと単純に思えるが、メロディの細かいところまで神経の行き届いたうウェルメイドの曲だ。たとえば女性声優のボーカルアルバムのラストにこの曲が入っていたら、アルバムの締めとしては理想ではないだろうか。私はこの曲から矢野顕子の「オーエスオーエス」を連想した。


 これはもう立派な室内楽伴奏付きの歌曲。よく考えられた音楽の構成や、達者なビデオの作りからすると音大、美大系の出身者の作品かとも思う。


 沖縄の音階を使ったシンプルな佳曲。



 最後も猫ネタで。再生数からいえば立派なヒット曲だ。まだまだ伸びるだろう。

 ちなみに作者のハンドル名の最後にPが付いているのはニコニコ動画の慣習だ。これはプロデューサーの略。ニコニコ動画で一世を風靡した「アイドルマスター」というゲームに由来する。このゲームでは、プレイヤーが芸能プロダクションのプロデューサーになってアイドルを育成する。画面にプレイヤーの名前が「●●P」と表示されることから、いつしか、ニコニコ動画でのハンドル名は最後にPが付くようになった。ハンドル名は自称する場合も、ユーザーが投稿者の特徴を捉えて「この人は●●Pだ」と命名することもある。ちなみに私は「L/DP」というハンドル名をもらっている。

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Comments

うんざりするような愛の永遠ばっかり歌われる、流れ作業による規格工業製品のようなJポップよりか、ずっと面白く聴けました。

挙げていただいたリストの中では、「水に流してくれまいか」がなかなか秀逸ですね。もし実際にキース・リチャーズがこれを聴いたらどう思うかはわかりませんが、おそらくマーク・ボランならあの世できっと喜ぶことでしょう(笑)。

長靴Pのファンです。今回は取り上げて頂きありがとうございます。
ウイットに富んだ歌詞とイラストの「おっさんミク」が抱腹絶倒だと思うのですが、思ったほど再生数が伸びていないのが残念です。
この記事を機会に多くの人に聴いてもらいたいです。

初めて乗ったバイクは覚えているけれどもはじめて乗った自転車は覚えていない事が多い事に気が付くと少しさびしかったりします。しかし今,夢中になれるおもちゃが手中にある幸せを、思いをかみ締める事の出来る現実を、改めて感じ入る事ができるのだなあ、と読みながら聞きながら思いました。

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