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2009.03.07

mixiから:今回の有人月探査構想に関する反応

 mixiで私のかなり以前からの知人、ハンドル名「飛ぶプリウス」さんが、以下のような日記を書いていた。マメにあちこちのJAXAの発表に足を運んでいる人なのだけれども、なるほど、そういうことがありましたか。

 ある程度事情が分かっている人は、ほぼ間違いなくこう考えるであろうという内容でしたので、本人の許可を貰い、以下に転載します。

オリジナルはhttp://mixi.jp/view_diary.pl?id=1100634178&owner_id=1370190&comment_count=5
です。

月?月なのか? 2009年03月07日00:24

http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=770761&media_id=2
<宇宙開発>独自で有人月面探査…政府、戦略転換

やっぱ月かあ。なんだかなあ。

 去年のJAXAの検討発表では、HTVを改造してISS往復用の宇宙船を簡素に作るプランが提示されていた。ロケットはH-IIAやH-IIB、その拡大型。これならずいぶん早く、安くできそうだと思ったものだ。

 ところが今年1月の発表では、目標が月に変更されていた。HTVを改造するのではなく、月往復用宇宙船に必要な技術は何かを細かく列挙していた。乗員は4名。ロケットも、なんだかわからない大型ロケットになっていた。一言で言えば、マニアックにはなったが目的が判らなかった。そこで、僕は質問した。

「この検討は、アメリカのコンステレーション計画と全く同じ、月面へ4名を送り込むというミッション要求になっています。なぜ月なんですか?なぜ4人なんですか?日本は有人をやったことがないんだから、まず低軌道から始めるべきじゃないんですか?」

 その回答は驚くべきものだった。JAXAの担当者は、しどろもどろになってしまったのだ!

 JAXAは、「とりあえず叩き台として、NASAと同じことをやる検討をした」と言った。とりあえずです、スタディーです、と言われれば、それ以上は突っ込みにくい。

 ところがである。今日の発表は、おそらくあのJAXA案そのまんまだ。役所ってのはそんなものだ。一度作った「これはただの案ですよ」という文書が一人歩きして、いつのまにか既成事実になっているのだ。

 今日の会議では、特に異論は出なかったのだそうだ。それはおそらく、みんなが賛成だったからではなく、誰も反論が浮かばなかっただけだろう。有人はやりたいと、みんな思っていた。具体案がJAXAから出たから、じゃあそれでとなった。

 おいおい、宇宙基本法って何のために作ったんだよ。JAXAが「これは一例です」と言ったら、そのまま通しちゃうんじゃ政治主導もへったくれもない。日本国の国家として、宇宙開発は何を目指すのか、月なのか低軌道なのかそれ以外なのかを示すのが政治の役目だろう。JAXAは、それぞれの目標に対して必要な費用と時間を回答するのが仕事だ。

 思いっきりテキトーな目標に向かって、日本の英知を結集した研究開発が始まるんだろうか。こりゃあ確かに「日本版NASA」だな、と妙に納得したけどさあ。

 少し前に「今年は宇宙太陽光発電元年になるか?」と書いたけど、有人宇宙飛行の目的のひとつに宇宙太陽光発電が挙がっていた。まあ、確かに有人もあったほうが、軌道上活動の自由度は上がる。でも、絶対必要というわけではないし、むしろコスト的には無人のロボット作業がいいから、そういうつもりで研究されてきている。また、仮に有人でやるとしても、月へ行く宇宙船と低軌道用宇宙船では要求がぜんぜん違う。

 日本は、まず低軌道でやればいいんじゃないか?アメリカが月宇宙船を開発するそうだから、日本は低軌道用の安い宇宙船を開発して、月へはアメリカ、低軌道へは日本、と使い分ければいいんじゃないか?本当に考えてるか戦略会議????

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Comments

ご紹介いただきまして、ありがとうございます。
補足コメントさせてください。

JAXAの方がしどろもどろになってしまった、と書きましたが、松浦さんの「タチの悪い冗談、ないしは本当の悪夢」を読んで、理由が見えてきました。JAXAは昨年、すでにHTV改型有人宇宙船の設計案をまとめていた。ところが年末ぐらいに、急に「目標を月にしろ」という天の声が降ってきた。だから、担当者はなぜ月なのかという問いに答えることは出来ず、設計案も妙に抽象的なレベルに戻ってしまった、ということであれば合点がいきます。
なぜ月か?HTV改が安すぎるからなのだとすれば、最低コストで最良の結果を出そうとするエンジニアの努力は、政治的にはナンセンスだということになってしまうのでしょうか。

結局HOPEって何も実を結ばなかったわけで
日本版月有人探査も要素技術をポツポツ作って、
何か最近続報聞かないねぇという段階で突如終わりになるんじゃないですかね
コンステレーション計画に日本人飛行士を一人二人送り込むことでお茶を濁し
米国の月面基地への無人物資輸送だけを受け持つ、と
相変わらず日本独自の有人宇宙船は持てないままで。
一方そのころ中国は世界唯一の宇宙ステーション保有国となり
米露が”使わせてもらう”という状態になってたりして

http://slashdot.jp/firehose.pl?op=view&id=69202
3/7にあったJAXAの有人活動についてのワークショップの様子 by SS1さん

すみません。まったくの素人でMIXIも見れない者です。

>なぜ月か?HTV改が安すぎるからなのだとすれば、最低コストで最良の結果を出そうとするエンジニアの努力は、
>政治的にはナンセンスだということになってしまうのでしょうか。

「HTV改」がISSへの宇宙飛行士の「はしけ役」だとすれば、日本の役割分担として作ってしまえばよいと思います。結局、ISSへの物資と宇宙飛行士輸送、またISS上の宇宙飛行士の緊急避難用にも使えますから。(そう作ればの話ですが)
これはさらに「月」を目指すためにも使用できるのです。
つまり、低軌道(ステーションに滞在か、HTV改に留まる)へあがった宇宙飛行士達を、月面へ届ける宇宙船を別便(H2Bとか)で打ち上げ、それに軌道上で宇宙飛行士たちを搭乗させればよいだけのことではありませんか。

このやりかたでは、一回の月旅行に対してH2が二発(HTV改で宇宙飛行士を打ち上げるのに1つ、無人の月への飛行船を別便であげるのにもうひとつ)必要となりますが、十回くらいの月旅行を総合的にみると、かなり安上がりではないかと考えます。
このように全体の計画をうまく連結させる方向で進めればよいのではありませんか。
(それが米国とのコラボでできた計画だとしてもです。)

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