ロケットはどこまでも上へ、上へと宇宙の彼方に突き進んでいく…わけではない
北朝鮮が数日中に打ち上げをするということで、記事を書いたり問い合わせに出来る範囲で答えたりといったことをしている。
その合間にネットをさ迷っていると、イラストレーターの速水螺旋人さんが、3月29日付けの日記で以下のようなことを書いていた。
北朝鮮の銀河2号打ち上げ関連についてmixiを眺めていると、ロケットやミサイルについて相当初歩的な情報も知られていないのだな、と痛感しました。「人工衛星なら真上に打ち上げればいいのに、東へ発射するのはおかしい」とか……いやその……。
「ああ、そうだわなあ」とうなずいて読み進むと、コメント欄にローランさんということがこんなことを。
……すいません(汗)あたくしも「え?真上に打ち上げるんじゃないの?」とおもってました。書き込みをみても「なるほど、原理はわからないが、東にうちあげなければならないのか」としか考えれませんし。 (中略) さほどニュースを知らなくても明日は来ますし、人工衛星のことを知らなくても拙いことはおこりませんでしたし、だからじゃないでしょうか、知らない人が幾人も居たのは。
もっと頑張って記事を書かねば、と思ってしまった。
多分にローランさんのような方は非常に多いのだと思う。「普通の人にとって地球は平らで、地球が回るのではなく太陽が東から昇って西に沈むのだ」とは笹本祐一さんの名言だが、実際そんなもんだと思う。なによりも、それで日常生活には支障ない。それは責められるようなことではない。日常生活の範囲内ならば。
しかし逆にいうならば、日常生活の常識で宇宙の事を考えてしまうととんでもない間違いをしでかしてしまうことになる。せいぜい200km、東京-浜松間にも届かないような距離に垂直に登り、地球を周回する軌道に入るだけで、地上に生きる我々の生活感覚は通用しなくなる。
もしも地球が完全に均一な球で空気もなかったら、ロケットは真横に向けて打つのがもっとも効率的なのだ——知ってましたか?
この件に関しては日経PCOnlineの連載に書いたので、興味のある方は読んでほしい。
普通の人が宇宙の事を知らなくとも、別にどうということはない。しかし宇宙基本法成立以降、宇宙の事を政治家が知らないとなると、それは罪であり怠慢であると思う。彼らの意志決定が、私たちの宇宙開発の未来を決めるのだから。
追記その1:この記事を書くにあたって、速水さんの日記を再訪してみたら、コメント欄で私の記事を紹介してくれている方がおられた。ありがとうございます。
追記その2:同じく速水さんの日記に書き込まれたコメント。
……まあアレですよね、アレが西へ飛ぶものだろうが東へ飛ぶものだろうがウチら帰化人にとって「アレが物凄い迷惑の元」って事には何の変わりもないんですよねー。 こっちらはただでさえ色々と肩身が狭いっていうのに(つか、帰化したんだからあっちとはもう何の関係もないっつーのに!)拉致やらミサイルやら核やら何やら、マトモな元同胞が「チョーセンジン」って指をさされるようなネタを振り込むのはいい加減やめてくださいよ将軍様と思ってしまうこの頃……
いや、本当にそうだろうなあ。
追記その3(4月3日17:45):私は見ていなかったのだけれども、今日になって読売テレビの「情報ライブ ミヤネ屋」で、森永卓郎氏が「人工衛星は上へ飛んでいくのに、なんで日本の上を通っていかなきゃならないんだ」と発言したとのこと。メディアに出るということは、世間に影響力を持つということだから、せめて知らないことは話さないようにしないと…。他人事ではないなあ。
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弾道でも宇宙空間に到達しさえすれば
あとは無重力で無抵抗なのだから
軽く押しただけでずーっと宇宙の果てまで飛んでいくみたいな感覚が
テポドン騒動からアポロ捏造説までどこか根底にあるような
Posted by: STC | 2009.04.03 03:06 AM
あと、いまだに「で、あれはロケットなの?ミサイルなの?まだわかんないの?」とか言う人、結構いますね。
Posted by: Prius | 2009.04.03 12:58 PM
人工衛星が軌道を回るとき、どれぐらいの高さを飛んで
いるかということを(言い換えると、宇宙に出るとはど
ういう事かを)頭の中でハッキリとイメージ出来るよう
になったのは、私のようなハンドルを名乗る者でも、か
なり年齢を重ねてからの事です。
Posted by: 科学報道ウォッチャー | 2009.04.07 12:40 AM
森永卓郎さんなら王立宇宙軍を見ていて、理解していてもいいはずなのに。
Posted by: 吉川卓 | 2009.04.07 01:14 AM