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2009.06.14

書籍紹介:「ルナ・シューター」(林譲治)

   
 林譲治「ルナ・シューター」 (幻狼ファンタジアノベルス)が3巻で完結した。面白かった。


 2025年、月に人間とは異なる知性体が出現し、人類と戦闘状態に突入する。敵は人間のような形状をした「ラミア」。ラミアはロボットなのか、ヒューマノイドなのか、知性体なのか、別の知性体が作り出した道具なのか、そもそもどこから来たのか、何の為に来たのか、皆目分からない。
 地球からの補給が限られる月面での戦闘は困難を極めた。最小の物資と損害で最大の戦果を挙げるため、人類が採用した戦闘法は、遠距離からの狙撃だった。

 第1巻では、月面での長距離狙撃戦が展開する。第2巻では月面に駐在する軍隊内の軋轢と、その結果の暴走がとんでもない結果を呼び込む。第3巻では一気にハードSF成分が増え、様々なSFガジェットが組み合わされ、驚愕のラストへと至る。

 特筆すべきは、月面の緻密な描写だ。会津大学の平田成さんと寺薗淳也さんがアドバイザーとなっただけのことはある。月面での時間経過を微小隕石が作るマイクロクレーターの数で測定したり、レゴリスを使ってあるメカニズムを冷却するなど、月面ならではの描写が次々に出てくる。
 もちろん林作品に通底する組織と人間、情報と社会という視点は健在だ。特に3巻は敵対する2勢力にとって共に有害な情報が、とんでもない仕掛けと一緒に登場する。

 このシリーズは「かぐや以降の月SF」と名乗る資格十分と言えるだろう。「2010年宇宙の旅」で、A・C・クラークは当初木星探査機ガリレオの観測データを使う予定だったが、ガリレオ打ち上げが遅れたため、データを待たずに2010年を書き上げた、という話を思い出した。逆に「ルナ・シューター」は、かぐやの観測結果をかなり色々と利用できたわけである。

 早晩、かぐやの観測データはネットで公開されることになるだろうが、それを使っての新しい月SFもまた、今後期待していいのだろう。
 特にかぐやで月に興味を持った方にはお薦めだ。

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Comments

その敵の正体は、某国が送り込んだ二足歩行ロボットだった、というオチではないですよね?

デザイン的には先行者レベルだけどね

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