はやぶさリンク:JAXA相模原一般公開での「はやぶさ2」展示
昨日のはやぶさ2はサンプルリターン機・インパクターの2機構成にについての補足だ。本日25日、JAXA相模原キャンパスの一般公開に行って、少し話を聞いてきた。以下、訂正と補足である。サンプルリターン機と書いていたものは、日本語正式名称は「着陸帰還機」、インパクターは「衝突機」という名称だった。
以下箇条書きにする。
- 衝突機は、イオンエンジンも観測機器も持たない。
- 衝突機はやや小さい。着陸帰還機が500kg程度なのに対して、衝突機は300kg程度。推進系はイオンエンジンを搭載せずに化学推進系のみを使用。
- 衝突機は、通信系は最低限のもの、センサーは衝突時の誘導用のもののみ。いかに安く作るかが勝負。
- 打ち上げはH-IIAを予定。H-IIAを使えるだけの予算を確保するのが目標。
- 着陸帰還機はイオン推進、地球スイングバイ。衝突機は地球スイングバイのみ。それぞれ別の軌道に投入する。
- 着陸帰還機は、目標天体の1999JU3に到達後、1年間に渡って表面の観測を行い、またサンプル採取を実施する。
- 衝突機は、1年遅れて1999JU3に到達。相対速度3〜4km/sで衝突。直径15m前後のクレーターができることを期待。
- 衝突時、着陸帰還機は安全な距離まで待避し、光学センサーで衝突を観測。
- 衝突後に再度表面を観測。個別の岩石の移動状況を調査することで、内部構造を推定する。
- 可能と判断できれば、衝突で生成したクレーター内部からのサンプル採取も実施する。
- 衝突は、小惑星帯形成における重要な要素であり、人工衝突実験は学問的価値が高い。
- 地球に小天体が衝突するのを防止する、スペースガード構想の初期実験としても意味がある。
- 2014年打ち上げ、2020年帰還を目指す。
ポスター展示を撮影したので、そのまま掲載する。これを読めば、現状がほぼ分かるだろう。
関係学会からの支援文書も公表されていた。文書を出したのは、日本鉱物科学会、日本地球化学学会、日本スペースガード協会。
すべて2008年10〜11月にかけての日付であり、この時期に「ほんとうにはやぶさ2ミッションは、サイエンス的な意義があるのか」を巡って、JAXA内部で激論があったらしいことが推察される。すべて、文書が読める解像度で、掲載する。
ひとつ大きな疑問がある。惑星科学を専門とする日本惑星科学会は、「はやぶさ2」支持声明を出さなかったのだろうか。科学者にすれば、「はやぶさ2」は、JAXAの予算で論文を書くチャンスのはずなのだ。
日本惑星科学会 学会概要には以下のようにある。
日本での惑星科学研究結構大変な状況ではありますが, 国産のロケットもあり, 月, 火星, 金星への探査, 惑星間物質のサンプル取得計画も進行中で, 鋭意奮闘努力中です.
ここに、声明文がないということは、「鋭意奮闘努力していない」ということになるのだが、はて?
この件に関して、説明者から納得のいく説明は得られなかった。
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