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2009.08.03

書籍紹介:「日本の宇宙開発~果てなき空間への果てしなき夢~」(歴史群像シリーズ )


 Gakken
 先だって、同じ学研の「ロケットと宇宙開発」を紹介したばかりだが、また宇宙関連の本が学研から出た。それも「歴史群像シリーズ」の一冊である(書影がAmazonに登録されていないので、学研ホームページから借用した)。科学探査、宇宙ステーション、大学衛星、サブオービタルの宇宙観光旅行、そしてCAMUIロケットと、今話題を集めているトピックを網羅し、解説した本だ。

 私も「M-Vロケット廃止から読み解く、日本宇宙開発の変動」と題して12ページの記事を寄稿した。

 かなり多彩な人々が寄稿しているので、内容や論調には幅があり、雑多でもある。が、それだけ「日本宇宙開発の今」が詰まっている本だと言えるだろう。特に科学探査と、大学系の小規模宇宙開発の紹介には力が入っており、月探査機「かぐや」、小惑星探査機「はやぶさ」は巻頭特集だし、その他「のぞみ」「さきがけ」「すいせい」「LUNAR-A」「はるか」は独立したページ構成で紹介している。LUNAR-Aが紹介されているのにはびっくりしてしまった。大学衛星に関しても、来年金星探査機「PLANET-C」と同時にH-IIAロケットで打ち上げる大学初の新宇宙技術試験機「UNITEC-1」を中心に、衛星を開発している各大学の活動を、かなり細かく紹介している。
 種子島と内之浦の観光ガイドも付いており、打ち上げ見物のガイドブック的な性格も持たせてある。

 科学探査、国際宇宙ステーションの有人活動、大学の衛星やロケット開発、サブオービタル宇宙観光旅行——このセレクトは、「一般の人々が興味を持つ」という基準で行ったものだろう。きちんと、次期固体ロケット「イプシロン」にも紙幅を割いているというのは、ペンシルロケット以来の日本独自技術に対して、一般の人々の間にも愛着と誇りがあることを反映したものだろう。

 ここで逆に、本書が取り上げなかった事柄を考えると、色々見えてくるものもある。
 「日本の宇宙開発」という題名で分かるように、この本は、普段宇宙開発に興味を持ったことのない、ごく普通の人向けのムックだ。その本書が取り上げず、他方で宇宙基本計画にも入り、JAXAも力を入れているプロジェクトが存在する。

 JAXAは、なぜ本書のような一般向けに宇宙開発を網羅した本が、それらのプロジェクトをが取り上げないかを、よほど徹底的に考えないといけないと思う。重要なのに地味なせいなのか、広報が足りないのか、それとも、そもそも不要不急のプロジェクトに入れ込んでしまっているのか——一般向けの本だが、プロも本書を読むことで色々と得るものがあるはずだ。

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Comments

UNISEC-1 → UNITEC-1
です(^_^;

ところで学生ロケットに関しては取り上げられてないんですよね。こちらも実は、今が2回目の旬かと思っているのですが。来年3月に、飛躍に向けての大きな節目を迎えることになりそうです。

 なおしておきました。指摘ありがとうございます。

 学生ロケットは、おそらく本格的なエンジン開発に取り組むところが出てきたら、大々的にメディアの興味を惹くんじゃないかと思いますよ。

社会条件的には大学生のロケットでも高度100kmの宇宙を目指せそうですが、ロケットの専門家じゃない僕が言うのも何ですが、端から見てると多分あと2年ぐらい?したときに、一つ大きな技術的な山にぶつかるんだと思っています。
このあたりは今の学生達もわかってるんだけど、2年後ぐらいということで「自分達の次の世代が解決すべき問題」と思っているようです。

今の高校生、あるいは大学の1年生ぐらいに、そーいう問題を理解して貰って2年間ぐらい悪戦苦闘して貰えると、とんとんと行くんでしょうが。

でもその頃には、僕は自分が飛んでたいですねぇ、高度100km。

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