今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議第1回会合 ブリーフィング
本日突然開催が告知された「今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議」の会議後、午後5時半からのメディア向けブリーフィングに参加してきた。以下に概要をアップする。
・今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議第1回会合の開催について(pdfファイル)
宇宙開発戦略本部 今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議第1回会合 ブリーフィング
出席者 泉内閣府大臣政務官
司会 宇宙開発戦略本部事務局・横田参事官
泉:さきほど、午後3時半から午後5時まで初会合を開催してきた。本日付けで開催を決定した。
本日中須賀先生は欠席。あまり資料を見た形での議論はせず、全般的な意見交換を行った。例えば、これまでの宇宙開発戦略専門調査会との関係。この有識者会議は3月と4月に集中的に審議するので、提言を作成して専門調査会を渡す。民主党政権の新成長戦略にも宇宙を入れていく。
限られた予算の中で宇宙基本計画を選択と集中で考え直していく必要がある。どこを強く進めていくかという方向で議論があった。
以下、本日出てきた議論の一部。
- どこを目指していくのか、地球・月なのか、深宇宙なのか、議論が必要。
- 国がやるのか民需でやるのか、どこを民間に任せるのか。
- これまでの宇宙開発がユーザーサイドの考えに立って行われてきたか。ユーザーコミュニティを育てる必要があるのではないか。
- 教育は重要である。
政務三役を含めて自由闊達な議論をするために非公開にすることにした。次回は3月9日、以下、16、30、4/6、4/20と集中的に開催していく。まずは自由闊達に議論していくところからやっていこうということになった。
質疑応答
朝日新聞:3,4月に集中議論を行って調査会に報告ということは、新成長戦略に盛り込むことを狙うのか。
泉:そうである。
朝日 それ以外に事情はあるか。
泉 ない。さまざまなところで議論を尽くされて開発利用計画が作られてきた経緯があるので、そう長く議論していいものでもないだろうと考えている。
東京新聞 長期的視点にたった、ということは20年、30年という長期的視点を考えるが、実際には今後5年間の宇宙基本計画の枠内でどこに力を入れるかということなのか。
泉 両方である。日本の宇宙政策はどうあるべきかということも考える。有人をやるかやらないかも議論する。
東京新聞 文部科学省がH20年に長期戦略を出しているが、それとの関係は。
泉 これまでの議論は、既存研究の継続や、産業が小さいこともあって、「この会社にこれをやってもらう」という形で決まってきたきらいがある。しかし場合によっては取捨選択をすることも必要だろう。例えばGXもなかなか切りにくかったのだろう。政治が決断しなくてはならなかった。有識者の方々と議論する中で、取捨選択をはっきりさせていきたい。
読売新聞 専門調査会と同じ議論を繰り返すことにはならないか。人選について。大学に偏っていないか。
泉 人選は「あらゆる人材を網羅する」となると専門調査会とどう違うんだということになってしまう。我々としては意見を頂きたいと考えた方を選んだ。明確な基準があるわけではない。この人々との議論を中心にしつつヒアリングも行う。
専門調査会との差別化。予算が限られている中で、すべてを進めるわけにはいかない。一部についてどこを具体化するかの力配分を考えねばならない。アメリカの新宇宙政策をふまえた変化など。
日経新聞 アメリカでは国際宇宙ステーション2020まで運用するとか、コンステレーション計画を打ち切るとか、大きな方針転換があった。なにか言及はあったか、
泉 今日はあまりアメリカのことは出なかった。月に対するアプローチが変わったという程度。
日経 アメリカについて議論しないのか。
泉 アメリカの現状をふまえて日本の強みをどこで出していくかを考えていくことになろう。
日経 今後の日程、4月20日に提言を出すのか。
泉 そのように考えている。
読売 大所高所の宇宙政策の議論をするけれどもというけれど、資料には宇宙産業の話も出ている。議論の重点はどこにあるのか。
泉 今日は資料をほとんど見なかった。これまで本当の意味でのユーザーコミュニティサイドに立っていなかったということについては共通認識が得られたのではないかと思う。
以上記者会見終了
以下松浦の分析。
- 泉大臣政務官は、「資料を無視」ということを再三強調。資料を作ったのは宇宙開発戦略本部事務局、つまり官僚。このことから政務三役の政治側と、官僚側の戦略本部事務局との間に、議論の主導権を巡って巡って綱引きがあったことをうかがわせる。
- 有識者会合の位置付けは前原大臣の私的諮問会合。従って有識者会合の提言は前原大臣に直接提出される。事務局はオブザーバーとして会議に参加するのみで議論には加わらない。誰が前原大臣への文章を起こすかによるが(戦略本部事務局が起草するとなると、また官僚のコントロールが入ることになる)、基本的には官僚抜きの政治優位を狙っての会合設置。
- 有識者会合の目的は「宇宙基本計画の文面をそのままにしての読み替え」、どこに選択集中し、どこを研究レベルに留めるかを明確にして、民主党の新成長戦略に入れ込むことを目指す。有人も俎上に上ることになるのは、今日の泉大臣の発言からすると確実。
- 事後のぶら下がりで事務局側からは「なかなかきれいにはいきません」という発言が出る。「~ではないでしょうか」という傍観者的語尾も多かった。「新成長戦略に入れ込んで8月の来年度予算要求に間に合わせる」という言葉も出てくる。推察するに、今までの書類で根拠を付くって予算要求するというパターンに持ち込みたい模様。
- ひとつの判断基準は、今後「ヒアリングをどこまでやるか」だと思う。ヒアリングに類することはさんざん専門調査会で行っているわけで、政治側はむしろこの場を選んだ専門家との徹底議論の場にしたい模様。一方、官僚側は息のかかった者を呼んでのヒアリングの場として、影響力を発揮したいはず。ヒアリングの頻度と誰が呼ばれたかによって、政治と官僚の綱引きがどちらに傾いているかが判断できるはず。
以上