「今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議」第2回(2010/3/9)の配付資料は必読だ
突然、という感じで始まった宇宙開発戦略本部の「今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議」だが、3月9日開催の第2回会合の配布資料をhandsout.jpに掲載した。
まず、「日本が宇宙開発を行う理由」:山川宏京都大学生存圏研究所教授
そして、「薬師寺メモ」:薬師寺泰蔵・慶應義塾大学法学部教授
秋山演亮・和歌山大学特任教授の資料は、すでに秋山さん自身がネットで公開している。
「有識者会議のアウトプット」(pdfファイル):秋山演亮・和歌山大学特任教授
これらの資料は3月9日夕方に内閣府で開催されたブリーフィングで公開されていた。最近の宇宙開発戦略本部は割と早く資料を公開するので、次の日に宇宙開発戦略本部の開催状況ページに掲載されるのかと思っていたら、」3月13日現在に至るまで掲載されていない。
これでは一般の議論が起こりようがないので入手し、スキャンして公開した次第。
宇宙開発戦略本部は、資料をネットで同日公開すべきだろう。関係者への回覧が必要な議事録とは違い、資料は開催同日・ないしは翌日の公開が可能で、実際一部会合ではそうなっている。メディア向けのブリーフィングで配布しているので、別に「一般に見せない、見せたくない」というものでもない。なぜ引っ張るだろうか、理解できない。
ちなみに、3月9日の泉政務官によるブリーフィングの内容は、ライターの大塚実さんのblogに掲載されている。
また、Twitterの宇宙クラスター(宇宙開発関係に興味のある人々の総称)で起きた議論や意見は、「今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議なうっ!」にまとめてある。Twitterにおける宇宙関連発言を精力的にまとめている@nyossiさんが、今回も素早くまとめてくれた。
これらの資料を読めば分かるように、有識者会議では、宇宙庁の創設、JAXAの機能別解体と再編成という、かなり大がかりなリストラを行って、日本の宇宙開発をスリムで筋肉質な、機動性の高い体制に組み替えようと提言している。政治と直結しているだけにこの動きは要注目だ。
私としては、山川教授の資料にある、「陸域・海域観測衛星システムと安全保障衛視システムは統合して効率化が必要」というところに注目する。早い話、防災衛星の末裔であるALOS-2/ALOS-3を初めとしたJAXAの地球観測衛星システムと、内閣官房・衛星情報センターの情報収集衛星は一つに統合すべきということだ。
これは当然出るべくして出た提案だと考える。地球観測衛星の高分解能化に伴い、国際的に見ても安全保障用途の衛星情報は単に、諜報当局の独占物ではなくなった。
「安全保障用途は機密度最高でなによりも優先」というのは大間違いだ。「地球全体をカバーする衛星観測情報をどのようにして扱うか」の一部門として安全保障用途があると考えるべきだ。
冷戦が終結して四半世紀近くになる今、「インターネットが全世界を結びつける情報環境の中で衛星取得情報をどう配布するか」という大きな戦略の中に、そのごく一部として安全保障用途が存在するのだ。そして安全を保障するという字義の中には、当然のことながら防災も含まれるのである。かつての内調のヒューミントの方法論をなにも考えずに衛星に適用し、すべてを秘匿するのは大間違いである。
今回の3つの資料は宇宙に興味を持つ人ならば必読だろう。
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文部科学行政からみるなら学術会議の報告書も大事でしょう
要旨
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-t90-2.pdf
個別の案件
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-t90-2-2.pdf
もっとも、SNS(株)が目指すような世界とは異なりますが。
Posted by: sionoiri | 2010.03.18 04:35 PM