非実在青少年条例改正の継続審議 必要なのは都議会議員を動かす「数」である
昨日の転載内容について、予告した通り自分の意見を書いておく。
まず、転載した理由。同じラインから以前に流れてきた情報の確度が高かったためである。誰が書いたかが分からない匿名の文章ではあるが、都議会に近いラインからの情報が掲載されていると判断し、転載した。
そして内容について。
この文章の作者は、廃案は不可能で6月可決はほぼ不可避としているが、私はそんなことはなく、十分廃案ないし否決は可能だろうと考える。
……要するに継続審議というのは、 「すぐ決められる状態ではないけれど、廃案にすべきものではない」 ということのようです!つまり。改正案に手を加えて、どういう形にせよ、確実に通すことはこの時点で決定してる、という話でした……。
(※満場一致で決まったため、どうしてもそうなるようです)
この部分は、まず間違いなく「これまでの都議会運営の慣習においては」ということであり、なにか成文化された法律なり条例なりで、「継続審議は可決を意味する」などと決まっているわけではないだろう。
都議会の習慣がどうであれ、制度的に禁じていない(もしも制度的に禁じているならば、それは「継続決定後の審議など無意味」ということになる。結論が変わる可能性があるからこそ継続審議するのだろう)以上、より強く都議会関係者に訴えかけ、より良い結果、すなわち廃案なり「憲法違反とならない形での条例改正」を実現することが可能になる。
我々が都議会の慣習に配慮して主張を弱める必要はない。主張すべきをきちんと主張すべきだ。
とはいえ、その道は容易ではないだろう。というのも、児童ポルノ規制には都議会第一党である民主党も趣旨に賛成しているからだ。そして習慣というのは、意外に頑強なものである。
ただし、希望はある。都議会議員は皆、都民によって選出されている。彼らは民意に反した行動をすれば、次の選挙で落選するということを自覚している。
従って、都民の大多数が「そのような条例改正には反対である」という心証を得れば、議員は態度を変えざるを得ない。落選した議員はただの人となるからだ。
日本が議会制民主主義の国である以上、この条例改正を阻むのは選挙民の「数」である。
●採決が想定される6月までに
●より多くの人が
●大人、子供、老人、会社員、主婦、クリエーターを問わずより多種多様な人々が
●実名で
●反対であるという意見を
●一人でも多くの議員に
●手紙という実体ある形で
●採決に関与する都議会議員に送付する
●合わせて、ネット、ネット以外を問わず
●可能な限り多種多様な場所で
●実名により意見を公表する
これができるかどうかが、今後の推移を決めることになるだろう。6月までの3ヶ月間、ネットを中心に持続的に意見を、ひとりひとりの都議会議員に届けられるかどうかが課題となる。
これは「ネットに集う人々は飽きっぽいから」では済まされない問題である。
何度でも書いておこう。
●今回の条例改正の問題点は、児童保護、児童ポルノ規制の美名のもと「他人様の頭の中身を権力が良い/悪いと判断すること」だ。これは、思想の自由、表現の自由を侵害する、憲法違反の行為である。
●児童保護が必要ならば、「他人様の頭の中身を権力が良い/悪いと判断しない」形で実施しなくてはならない。
●この件は「本当に保護が必要か」というレベルから先入観を廃し、客観的データに即して考える必要がある。「薄汚い猥褻なマンガやゲームは規制して当然」「青少年に害悪を与えているに決まっている」という先入観で物事を判断してはならない。
●性は生であり、人間の根幹に本能として刷り込まれていることを直視する必要がある。道徳の建前ではなく、人間を直視した本音のレベルで考えねばならない。
以下、今回の件に関して有益なまとめへのリンクを掲載する。
- 「非実在青少年」問題とは何なのか、そしてどこがどのように問題なのか?まとめ:GIGAZINEによる的確なまとめ。
- 「非実在青少年」規制:目に見える形で反論を提示する(山本弘のSF秘密基地BLOG):SF作家の山本弘氏による、具体的データに基づく条例改正への反対意見。条例改正に賛成する者は、少なくとも具体的データに基づいて山本氏の示すデータを論破する必要があるだろう。
- 「表現規制」を都議会と国会で議論する素地が生まれた (保坂展人のどこどこ日記):前衆議院議員・保坂展人氏のblog。今回の改正に反対の態度を明確に表明している。同blogから政治情勢についても何らかの情報が出てくる可能性が強い。要注目。
- 「非実在青少年・条例改正」をめぐる、都小Pの緊急要望への違和感表明(PTAの会の性質という観点から)(リヴァイアさん、日々のわざ):作家の川端裕人氏による、社団法人 東京都小学校PTA協議会(都小P)の青少年健全育成条例改正案の成立に関する緊急要望書への違和感の表明。すべての保護者を代表しているわけではない都小Pが、あたかも代表者であるかのように発言することへの違和感。
- 非実在青少年関係 「青少年育成条例改正? ふーん、いいんじゃない?」 と言う人へ [ヘボ論](ヘボログ):ハンドルネーム「へぼや」さんによる、秀逸な論考。過不足なく今回の件の問題点をまとめている。
追記:21日、児童ポルノ:日弁連が「単純所持」禁止…規制で方針転換(毎日.jp)という報道があった。毎日の飛ばしでなけれれば、児童ポルノに対する単純所持禁止の実施が見えてきたことになる。
これは「非実在青少年」関係ではないが、非実在青少年への規制と単純所持の禁止が組み合わさると、PC Onlineの記事に書いたように、いつでも誰でも逮捕できる恐怖社会が現実化する恐れが十分にある。ますます、今回の条例を廃案にしなければならない理由が増えたといえる。
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まずは行動をと思い、昨日の情報を参考に議員さんへ早速メールしました。
Posted by: qzt | 2010.03.22 08:06 AM
封書や手紙・メールを送ろうと思っているのですが、神奈川県民なので、送った所で読んでもらえるか見てくれるか不安です。都民ほどは考えていませんが、他の県民の意見も効果はあるのでしょうか?
Posted by: 921 | 2010.03.23 01:44 AM
都民ほどではないと思いますが、他の府県民であっても一定の効果はあると思います。政治家は有権者の雰囲気に敏感ですから、「雰囲気として世間がこうなっている」と知らしめることができるでしょう。
Posted by: 松浦晋也 | 2010.03.23 11:27 AM
わかりました。ありがとうございます。ただ、私は今、19歳でギリギリの所、有権者ではありません。来年にはなれますが。ここのサイトを見る方々にも、高校生・中学生の方もいると思っています。今回の条例改正案を思うに未成年の方が反対意見を送るのは大変有意義な事でしょうか?
メールや手紙を出す場合に、自分の名前はきちんと書くつもりですが、現住所まで、やはり書かなければいけないんでしょうか。正直、住所を、あからさまに書きたくありません。
Posted by: 921 | 2010.03.23 12:33 PM
住所については最終的には個人の判断となると思います。その場合も「●●県●●市に在住する学生です」というようなことを書いておく必要があるでしょう。
ただし、きちんと住所を添えることで手紙に対する信頼性を上げることができるのは間違いありません。
私自身は、政治家に住所を添えて手紙を出すことはさほど危険ではないだろうと考えています。
仕事上知りうる個人情報を漏洩しても悪用しても、あるいは別目的の政治活動(突如訪問してくるとか)に使用しても、いずれにしても政治家にとってはスキャンダルとなり、政治生命に傷が付きますから。
昨今、誰でもネットに情報を流せますから、まともな政治家なら、集まる個人情報の取り扱いには、非常に気をつけていると考えて間違いないと思います。
政治家にしてみれば、匿名掲示板にでも「突如●●党の運動員がやってきてうるさく勧誘してきたんだが、その党の●●議員に手紙を送ったことぐらいしか思い当たることはないぞ」などとスレを立てられることのデメリットを考えれば、個人情報の取り扱いに極力注意したほうがずっと得でしょう。
Posted by: 松浦晋也 | 2010.03.23 01:02 PM
わかりました。大変ありがとうございました!
Posted by: 921 | 2010.03.23 01:22 PM
>児童ポルノ:日弁連が「単純所持」禁止…規制で方針転換(毎日.jp)
弁護士山口貴士大いに語る に記事がありました。
【ミスリーディングな記事】児童ポルノ:日弁連、「単純所持」禁止 規制で方針転換?【毎日新聞】
http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/2010/03/post-923c.html
重要な箇所を故意に隠した記事だそうです。
醜悪の一語に尽きますね。
Posted by: Rick=T | 2010.03.23 07:08 PM
> Posted by: Rick=T | 2010.03.23 at 07:08 PM
日弁連として
法律の枠外で対処すべきものだと
以前は主張していたのに、
新たに法律で明文での禁止規定を設けるように
求める主張を取るというのですから
それは明確な方針転換です。
Rick=Tさんのコメントこそは、
醜悪の一語に尽きますね。
Posted by: うみねこ | 2010.04.16 11:20 AM