Web検索


Twitter

ネットで読める松浦の記事

My Photo

« 「今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議」第2回(2010/3/9)の配付資料は必読だ | Main | 非実在青少年条例改正の継続審議 今後の動向についてmixiから転載 »

2010.03.18

東京都の「非実在青少年」を巡る条例改正の動きについて・児童ポルノ規制の美名のもと、思想信条への恣意的規制の道が開きかけている

 ここ一週間ほどで急速に沸騰している、東京都の「非実在青少年」に関する条例改正について。

 このような記事を書いた。問題の所在から、何が問題なのかまで一応分かるようになっている。

 私の意見は冒頭の部分に書いてある。

これは青少年保護の美名の下に、権力が市民を恣意的に支配する根拠を与える恐るべきファシズム条例だ。このような条例は成立させるべきではないし、間違って成立してしまった場合には、日本という国家の尊厳のためにも速やかに廃止に追い込む必要がある。

 小泉政権のころから、美しい名前の法律・条例で、実際には過酷な内容を国民に押しつける動きが目立っていた(その典型例が障害者自立支援法だった)。その集大成が、今回の東京都の動きであると言えるだろう。

 この件については産経新聞が都側の主張を伝えている。

 この記事における都の説明は、むしろ改正案の問題点を露呈している。

 「表現の激しさよりも、設定を重視する。通常のストーリーで必要な表現として描かれた性行為ではなく、強姦や近親者との性行為を肯定的に描くなど青少年の感性がゆがむような表現が規制対象となる。現在も月3~4冊が『不健全図書』に指定されているが、極端に増えることはない」

 問題は、「青少年の感性がゆがむような表現」と判断するのが都という権力であるというところにある。私たちが都に「良い設定です/悪い設定です」などと判断してもらう理由はどこにもない。それは私たちが主体的に判断すべきことである。
 今は何を言っているとしても、都は今後いくらでも恣意的に判断の範疇を広げることが論理的には可能であり、それに対する制度的歯止めすらなにも存在しない。「論理的に可能」という時点ですでに制度としてアウトである。

 以下、この記事における都の説明は、すべて現時点ににおける「解釈」でしかない。正確なところは条例本文の解釈のみに依存する。都の説明には改正条文に言葉として書き入れられていない事項も入っている。つまり、それだけ恣意的解釈と恣意的運用が可能ということであり、むしろこの都による説明は、改正案の危険性を示していると言える。

 もう一つ、この件に関しては、社団法人・東京都小学校PTA協議会が、改正に賛成の意見を出している。

 子どもを守るため、子どもが健やかに育つために、児童ポルノを根絶すること、子どもを性的対象にする図書が青少年の目に触れないようにすること。  たったこれだけの願いであるにもかかわらず、一部には、えん罪や 表現の自由の規制を理由に、この条例改正案に反対している人がいると聞きます。  これは、子どもを守るよりも自分を守ることが大事だ、と言っていることに他なりません。

 ところが、継続してPTA問題を調べ、発言してきた作家の川端裕人さんによると、この社団法人・東京都小学校PTA協議会は、東京都の大多数の保護者の意見を代弁しているわけではないのだそうだ。それどころか、東京のPTAすべてを組織しているわけでもないし、しかも今回の件について傘下のPTAからの意見集約すらしていないとのこと。

 まず第1に、都小Pは、東京都のすべてのPTAを束ねているわけではありません。  都小Pに参加している市区町村のPTA連合は、区部では、世田谷、目黒、荒川、足立、文京の5区だけです。

 ほかに大島、神津島、新島、八丈島などの島嶼部。そして、都下のいくつかの市(あとで正確に調べます)のみです。これだけを観ても「代表性」に疑問があるのは分かるはず。

 単純に考えて、東京都の小学生保護者の過半数は都小P会員ではないはずですね。

 第2の理由として……都小Pに参加している、PTAの連合体でも、このことは特に支持されているわけではないのです。

 都内小学校のPTA組織の総意に見える意見書は、単にこの組織のトップのほうの私見でしかないということだ。

 社団法人・東京都小学校PTA協議会がかくもあやふやな組織であることを、不勉強ながら私は知らなかった。彼らはPTAを名乗っているけれども、PTAを代表しているわけでは全然ないのだね。まったくもって、勉強になりました。川端さん、ありがとうございます。


 
 真に悪辣な表現があるとするならば、都のような権力に依存するのではなく、私たちひとりひとりが排除していかなくてはならない。そうすることによって、はじめて思想の自由、表現の自由が保たれる。それは面倒なことではあるが、民主主義社会が許容しなければならないコストである。

« 「今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議」第2回(2010/3/9)の配付資料は必読だ | Main | 非実在青少年条例改正の継続審議 今後の動向についてmixiから転載 »

ニュース」カテゴリの記事

Comments

私はこれを文化のデスノートと呼んでいます。

誰かの主観で、「私の嫌いなものは削除」ということで

そんなデスノートは誰も望んでいません。

松浦先生といえばロケット系のノンフィクションライタの印象が強かったのですが、都条令改悪の件に言及されるとは予想外でした。
意外なところからも反対意見が上がるほどに問題なのだと改めて認識しています。


なお、その都小Pですが実は会長が当の条例案の元になる答申案を作成した専門部会の委員です。

http://www.ptatokyo.com/pyuki/wiki.cgi?2010%cc%be%ca%ed
>平成21年度名簿
>会長 新谷珠恵 役員・理事

http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/09_seisyokyo.html
>第28期東京都青少年問題協議会委員名簿
>学識経験者 新谷珠恵 東京都小学校PTA協議会会長

そして差別意識丸出しの暴言を部会にて連発していたことが議事録から明らかになっています。

http://d.hatena.ne.jp/killtheassholes/20091002#p3
>こういった汚らしい過激な性表現を許すという事自体がおかしい。こういった物が発行出来て誰も罰せられないというのは如何なものか。こういった物が日本の文化や価値観を変えていき、犯罪を助長するという事にも繋がる。

>雑誌・図書業界の為にも、きちんとした規制をしてあげる事が、悪質な出版社が淘汰されていくという事にもなる。

>細かい議論が沢山あると思うが、何で反論している人の事まで考えなきゃいけないのか。不愉快で子供に危険が及ぶ物と公共の福祉とのどちらに重きを置くのか、ガンと後者に持っていけば良いと思う。マイノリティに配慮し過ぎた挙句、当たり前の事が否定されて通らないというのはどうしても納得出来ない。

>漫画家団体に対して説明や調査データを示す必要も無いくらい規制は当たり前の事だ。


都小Pによる改正賛成意見とは、絵に描いたようなマッチポンプそのものといえます。

それにしても……。
「規制している国」と「我が国」。
どちらが「性犯罪が少ない」か、単純に比較すればそれで全て結論が出るだろうに。
目の前の「1たす1」すら見ようとしない馬鹿が多すぎる。
何なんだこの無思考人民は……。

非実在青少年条例改正の件

規制するより
成人コーナーの拡充(コンビニなどの一般スタンド販売の禁止)
成人確認の厳格化(タスポのようなID使用)
の方が先だと思います。

ただこれを行うと、一般小売業とか販売会社などへの売り上げ影響が大きく
都議会からも反発を受けるので
「とりあえず反撃を受けることが少ないターゲットに向けて規制をかける。」
という意図も見えます。

非実在青少年条例改正の推進者はこれほどの騒ぎになると思っていなかったのでしょう。
あげくの果てに自分たちが東京都のすべてPTA協会から参加されていない、
会社内の第二組合のような存在であると暴露されてしまう。
などなど

落ち着いて見ていきたいと思います。

The comments to this entry are closed.

« 「今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議」第2回(2010/3/9)の配付資料は必読だ | Main | 非実在青少年条例改正の継続審議 今後の動向についてmixiから転載 »