今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議第6回会合 泉内閣府副大臣記者レクチャー 月探査の方針変更への動き
今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議第6回会合では、有識者会議が提言する宇宙庁という組織の構成内容が出ていた。
政務三役と理事5名による「経営会議」と、各分野別のコーディネイトを行う3名の委員からなる「専門調査会」という2階層の組織を提案している。
政治の側は「今の体制でもできることはある」と、この案があくまで有識者会議の提案であることを強調しているが、同時に「有識者会議と民主党政策集の方向性は一致している」として、その方向性を目指すことは否定していない。
今日は、有識者会議の後に月探査に関する懇談会メンバーと前原大臣以下政務三役との「円卓会議」が開催された。
注目すべきは、泉政務官の「月探査懇談会を開催したから月探査ありき、というわけではない。月探査に意義はある。しかし水星、金星、火星などにも意義がある。その比較は別途行う必要がある。」という発言だ。アメリカがコンステレーション計画をキャンセルするのを受けた方針変更が、日本の政府レベルでも徐々に始まっていることを意味する。
私の見るところ、有識者会議は非常に合理的な提言を出すことになるのではないだろうか。
今日の資料を見ると、ここ数年宇宙関係者の間でさんざん議論されてきたことがそのまま反映されている。
資料6-1-2の「パッケージ化戦略」では、官庁が抱える問題の解決に宇宙を利用すること、海外への宇宙産業売り込み戦略、外交への利用などが盛り込まれている。
資料6-1-3「グリーンイノベーション」では、今後地球観測においては、時間分解能の向上が重要になるということがきちんと盛り込まれている(これまでのJAXA-文科省の地球観測プログラムではこの部分が軽視されていた
資料6-1-3「イノベーションエンジン」では、イノベーションの原動力として宇宙輸送系、太陽系探査、超小型衛星、無重力環境利用が挙げられている。これも妥当な選択だ。特に太陽系探査が技術力向上の原動力になることは、私自身も過去に主張していたことであり、本格的に政策に組み入れられるならば、それはうれしいことである。
明らかに有識者会議は、行き詰まりがはなはだしい日本の宇宙開発への効果的な処方箋を描きつつある。
次の問題は、それを政治がどのように受け止め、実行するかだ。
今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議第6回会合の配付資料
今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議第6回会合ブリーフィング
2010年4月13日午後5時40分~
中央合同庁舎第4号館605会見室
定刻に泉政務官登場
今日はまず、午後3時15分から会合を行った。午後4時半からは、月探査懇談会のメンバーを入れて月探査に関する円卓会議を実施。大島副大臣のみが欠席。他の政務三役は出席。
お配りした資料(松浦注:掲載したもの)は前段で使われたもので委員の先生方が作成したものである。徐々に有識者会議で戦略をまとめつつある段階に来ている。
これまでもお話してきたことの繰り返しとなるが、これまでの研究開発が先行して利用が不十分であった。衛星を開発し打ち上げることはしていたが、複数計画を系統立てたり 体系的に位置付けて取得データを利用していこうという動きがなかった。それをやろうというのが、資料6-1-3にあるグリーンイノベーション戦略だ。様々な監視衛星、観測衛星を複数運用しつつデータアーカイブセンターを設置して利用を促進する。
データを取得1時間以内の配信というのは、リアルタイム更新の価値を追求ということ。これは一つの例であって、このような形で宇宙を利用していく体制の構築をしていくという方向の意見を、委員の方々から頂いている。
資料6-1-3のデブリ対策。アメリカもデブリ対策には力を入れて来つつある。日本はしっかり目を向けていくべきという意見を頂いた。
資料6-1-2のパッケージ戦略。たとえば自動車事故が起きたら自動的に救急信号を出して救急車が出動するというようなもの。パッケージ化により新たな価値を創出する。
資料6-1-4のイノベーションエンジンについては、今日の会合ではあまり詳しく内容に触れることはできなかった、小型衛星、小型打ち上げシステムなど。月探査というだけではなく、探査をより大きくとらえて優先順位の高いところから探査を行うということだ。
資料6-2の新体制について。トータルバランス戦略。国費投入がずっと続いているにも関わらず産業規模は縮小。民需をどう広げていくか。委員は、そのような問題意識を持っている。
だから新しい宇宙開発体制が必要になるということだ。これは将来的な一つの姿と考えており、現在の宇宙開発戦略本部の仕組みでもできることはそれなりにある。その中でしっかりと議論していけば当面の問題は解決するだろう。
有識者会議が提出するのは理想の体制である。
今後の予定。20日は今日の資料にさらに修正を加えたものが出る。
有識者会議の後、午後4時半からは、月探査に関する円卓会議を開催した。大臣、委員は初めての顔合わせであった。我々も興味深く聞かせていただいた。
非公表扱いなので誰が何をいったかは言えないが、自分として言えるのは、月探査懇談会の委員の皆さんは、自分たちが積極的に基本計画に月探査を入れて自分たちが主役になって探査を進めるというのではなく、宇宙基本計画に月探査が入ったから、基本計画に沿って懇談会に集められた人々だということである。
なぜ、月探査が宇宙基本計画に入ったのかについては、政治の側が過去の政策決定を検証していかなければならないものである。今後出てくる報告書をどう扱うかも政治の問題である。
懇談会は月探査をどのように実施すべきかの議論を行うべき場所として設定されており、何か月探査を他のミッションと比較したという議論をしていない。月探査がいいのか、他の場所の探査がいいのかは月探査懇談会で議論すべきものではない。
ではどこに行くべきなのかは、政治が決めていかなければならない問題かと認識した。
質疑応答
朝日新聞
6-2新しい宇宙開発体制について。宇宙庁は現在の戦略本部にとってかわるものなのか。民主党政策集にJAXAの企画部門と各省庁宇宙部門を内閣府に統合し、日本版NASAを作るというものがはいっているが、整合性は?
泉
委員は、民主党政策集を考慮してこのような案を出してきたわけではないだろう。民主党とすりあわせをしたわけではないが、方向性は一致している。現段階では政府として宇宙庁を採用するというわけはない。
経営会議・専門調査会については、より踏み込んだ組織構成についての提言だ。
宇宙庁ができればそれが宇宙開発戦略本部と別ということはないだろう。
東京新聞
無重力を使ったタンパク質結晶成長実験がイノベーション戦略の例として資料に入っているが、これは2015年以降もISSきぼうをつかって実験を行うという意味か。それはISSの利用延長を認めるということになるが。
泉
今日は時間がなかったので、まだ委員に聞いたわけではない。私も疑問に思ったところなので、委員の皆さんに質問しなくてはならないと思っている。
読売新聞
月探査については、宇宙基本計画に月と書いてあるから月ではなく、別の目標を設定するということもあるということか。
泉
宇宙基本計画は月探査について書いてあるが、実施するかどうかは別途判断してもいいのではないかと思う。
基本計画では「国の総力を挙げて検討する」としているが、懇談会の皆さんには、「そういう環境が与えられていたか?」ということを私も質問した。かつての政府審議会の運営に近い形で議論されているので、必要な取り組みがあれば追加で入れてもらってかまわないと月探査懇談会には伝えてある。
月探査懇談会を開催したから月探査ありき、というわけではない。月探査に意義はある。しかし水星、金星、火星などにも意義がある。その比較は別途行う必要がある。
読売
白紙検討か
泉
これまで月について懇談会で検討してきたという重みはある。が、実施するか否かは別問題だ。
以上質疑応答終了
去り際に泉政務官曰く
前原大臣は本日の会合に終日出席した。最後に大臣から「星はなぜ丸くなるのか」という質問があった。重力が関係しているのだそうですね。星は形成過程で一回溶けるので…難しいですね。やめましょうか。
記者からでったつぶやき
「ISS延長容認か?」