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2010.06.17

はやぶさ2にむけて:最後の障壁は身内にあり…か

 日本に帰ってきました。

 はやぶさの帰還を受けて、はやぶさ2を巡る動きが一気に活発化してきた。JAXA内における水面下の動きも急速に流動しているようだ。

 多くの人は、これだけの成果を挙げながら後継機「はやぶさ2」の計画が一向に予算が付かないのに奇妙さを感じているだろう。2006年初頭に2010年打ち上げを目指して検討を開始した「はやぶさ2」は2010年現在、2014年打ち上げという計画実行のぎりぎりまで来ているにも関わらず、まだ正式計画化していない。

 ネットでは民主党政権が悪いとする声もある。が、これまで取材してきた者としてはっきり言うが、民主党はこの件には関係ない。
 文部科学省も、あまり関係ない。2007年度予算折衝では、文部科学省側が「もっと予算を付けようか」と提案したにも関わらずJAXA側が断るという前代未聞の事態が起きている。

 このことから分かるように、はやぶさ2が開発フェーズに入れないでいる問題は、すべてJAXA内に原因がある。権限を巡るJAXA内の争いだ。これまでに色々な難題がはやぶさ2の前に立ちふさがったが、今現在、最後の障害となっているのは――大変悲しむべきことだが――ISASの理学関係者、組織としては宇宙理学委員会である。

 宇宙理学委員会――旧宇宙研の根幹を支えてきた意志決定組織だ。1980年代から1990年代にかけての宇宙研の栄光を導いた組織といってもいい。ところが宇宙三機関統合後の急速な宇宙研の組織文化の崩壊の中で、宇宙研を守ろうとする動きが、かえって「はやぶさ2」の足を引っ張ることになってしまっている。

 私がそう断言できるのは、以下に示す電子メール文面を入手したからだ。転送に転送を重ねたらしいメールは私信の形は取っているが、実際にはかなりの数の関係者に送信されたもののようだ。さらに関係者のメーリングリストへのフォワードなどを通じて、けっこうな広範囲に衝撃を持って広がっているらしい。私のところには複数のルートから独立して届いた。
 文面はいくらか削除されているらしく、送信者が誰かは私が入手した文章からはわからない。ただし、文面から見るに、メール送信者は宇宙理学委員会上層部の誰かと考えて間違いはない。
 メールヘッダーをチェックしてみたが、オリジナルの送信者に関する情報はなかった。

 この文面そのものを偽造と疑うことも可能だ。

 しかし、このようなメールを偽造することで誰が得をするかがはっきりしない。逆に本物だと考えると、その内容は、今までに私が取材で得た感触や断片的事実とすべて一致する。また、6月11日という発信の日付からして、「はやぶさが成功したらはやぶさ2を潰せなくなる」という、かなりせっぱ詰まった気分で書かれたものであることが推察できる。「眠ることが出来ず起き出してメールを差し上げる」「必要であれば私がそこに飛び込むつもり」という記述もリアルであって、偽造ならば入らないような表現であろう。

 以下にメールを掲載する。その上で、「はやぶさ2」を巡る現在の状況について、私の知りうる限りを解説することにする。



差出人: 【削除】
日時: 2010年6月11日 23:26:04JST
宛先: 【削除】
件名: はやぶさ2について

【送付先削除】

 はやぶさが国民的歓呼の中に帰還しようとしていることは大変有り難いことと思います。しかしながら本日読売新聞の紙面で立川理事長が”はやぶさ2を早期に概算要求し実現したい。設計は出来ている。”と言っているのを見て背筋が寒くなりました。床についていたのですが、眠ることが出来ず起き出してメールを差し上げる次第です。

 はやぶさは工学的チャレンジとしては大成功であったと思います。特にイオンエンジンの実証と言う意味ですばらしかった。

 しかしながら、同じ機体のコピーをもう一度飛ばす”はやぶさ2”を企画すること自体、JAXAが技術者集団である事を疑われかねないと思います。あれだけ多くの不具合を起こした機体をもう一度フライトさせるのですか?
 1.イオンエンジンの信頼性をはやぶさより上げたものを使わなければ、次には帰還はないかもしれません
 2.機体重量マージンが無く、3つしか積んでいないモーメンタムホイールを踏襲するのでしょうか?あかつきでは故障を考慮して4つ積んでいるだけではありません。はやぶさで問題を起こした振動対策措置を回避できるように、従来のホイールで振動に保つ位置にホイールを配置しています。MVからH-IIAにロケットが替わって振動条件が緩和されたというだけの事ではありません
 3.はやぶさの小惑星の資料を閉じ込めるカプセルは地上で開けるときの事を考慮せずに作られています。この為にキュレーション設備の件では##先生まで巻き込んで大騒動を起こしている事はご存じの通りです。同じ轍を踏むことは許されないと思います
 4.カプセルを毎秒12キロという未曾有の速さで地球大気圏にもう一度突入させるのでしょうか?##先生には怒られるかも知れませんが、確実性という意味では避けられるものならば避けるべき突入速度だと思います。H-IIAで”はやぶさ2”を上げるのであれば重量的には原型機より余裕を持った設計が出来るはずです。化学推進系を備えた機体とし、十分に減速して地球周回軌道に入れてからカプセルを落とすべきではないでしょうか?
 5.小惑星にアプローチしたときには当初の予定通りの光学航法は出来なかったと聞いています。その為、その場で知恵を絞ってアプローチしたと。そのままの設計で”はやぶさ2”を作るのでしょうか?

 はやぶさ2は理学ミッションとして考えるべきであり、その為にはサンプルの地球への帰還を最優先とした最適な設計をするべきです。決して”はやぶさ”と同じであってはならないと考えます。今、歓呼してはやぶさを迎える人々が”はやぶさ2”の起こりえる失敗を看過したJAXAのエンジニアリングを許してくれるとは私には思えません。

 最後に”はやぶさ2”の大きな問題はこれを強く引っ張る人が居ないことであることはよく言われることです。私もそう言って皆と同じように嘆いてきましたが、その様な段階では無いと感じます。必要であれば私がそこに飛び込むつもりです。

【差出人氏名削除】

メールの文面を分析する。

●全体について
 メールの内容は、外から取材しているだけの私から見ても、突っ込みどころ満載だ。メール送信者は考え得る限りの「難点」を挙げているが、そのことごとくが外している。、はやぶさ2を潰すという意図が先行して存在し、それに合わせて理由を並べたと考えるべき内容となっている。

●メール発信者について
 1)指摘する難点が工学的ポイントを外したものであること(つまり工学分野に土地勘がない)、2)「はやぶさ2は理学ミッションとして考えるべき」と強く主張していること、3)メール受信者に「##先生」と呼びかけていること、4)理学ミッションである「あかつき」の設計を規範として挙げていること――から、メール発信者がJAXA/ISAS内部の理学関係者であることがほぼ確定する。また、「必要であれば私がそこに飛び込むつもりです」と、自分がはやぶさ2プロマネになる意志を示していることから、その気になればプロマネになれるだけの経歴の持ち主であることも分かる。

●メールが指摘する「はやぶさ2」の問題点について
 すべて、外部で取材しているだけの私ですら反論可能だ。ましてはやぶさ2の検討に参加している関係者なら誰でも論破することができるだろう。

1)イオンエンジンについては、むしろ信頼性の高さをはやぶさの全ミッションを通じて実証したと考えるべき。3年も延びた宇宙空間への露出に耐え、最後には2個イチ運転による冗長性確保まで実証した。この7年の運転によりノウハウは蓄積しており、次があればむしろ無事帰還の確率は向上すると考えるべきだろう。

2)「はやぶさ2」は「はやぶさ」の同型機であるが、完全な同一設計ではない。「はやぶさ」の教訓を汲んで直すべきところは改修することになっている。メールが指摘するホイールの問題も、「はやぶさ2」では4基搭載に増やし、しかも「あかつき」で行った改良をふまえた上でさらなる安全策が検討されている(「はやぶさ」も「あかつき」も担当主メーカーは同じNECだ。「はやぶさ2」の設計にフィードバックがないと考えるほうがおかしい)。
 「同じ機体のコピーをもう一度飛ばす」のではない。直すべきところは直しているのである。

3)カプセルの設計は、文面だけでは詳細は不明だが、これも「はやぶさ」と「はやぶさ2」は同型機だが同一設計ではない、ということでおしまいだろう。繰り返すが直すべきは直しているのである。

4)カプセルは6月13日に完璧に近い再突入を行って地上で無事回収された。確実性は実証されたのである。メール送信者も指摘するように重量マージンが厳しい小惑星への往復飛行ミッションなら、化学推進系による地球周回軌道投入は、ミッションの成立性をあやうくするほどの重量増加を招く可能性がある。しかもマージンを重視した結果の新設計は、また工学試験衛星で実地に試す必要が出てくる(安全よりに振ったつもりでも新しい設計は、もう一度技術試験を行わねば安全性を確認できないのだ)。
 はやぶさの成果を生かすという点で、はやぶさ2でも12km/sの再突入は許容すべきリスクだろう。

5)小惑星へのアプローチ時の光学航法が、当初の予定通りに動作しなかったのは事実。しかし、それはメーカー技術者が一晩で書いたソフトウエアにより「人と機械(はやぶさ)を協働させる」ことで解決した。当然「はやぶさ2」では教訓を取り入れたソフトウエアで運用することになっている。メール送信者は、2005年11月の私ほど熱心には、はやぶさのタッチダウンをウォッチしていなかったようだ。

 つまり、「今、歓呼してはやぶさを迎える人々が”はやぶさ2”の起こりえる失敗を看過したJAXAのエンジニアリングを許してくれるとは私には思えません。」というのは、はやぶさの成果を過小評価する意図的な誘導である。
 はやぶさ2は起こりえる失敗を潰すべく、はやぶさに設計変更を加えた探査機である。決してリスクを看過した同一設計の機体ではない。そこまでJAXAのエンジニアリングを過小評価してはいけないと思う。

 そして、なによりもこのメールの悲しい部分は、「はやぶさ2を強く引っ張る人がいない」と書いてしまっていることだ。これは、現在のはやぶさ2関係者に対する間接的誹謗ではないか。外から私が見る限りではあるが、「強く引っ張る人がいない」というような状況ではない(そもそもはやぶさ2には“あの”川口プロマネも主要人物として関わっているというのに「人がいない」とはいかに??)。
 その上で、「必要であれば私がそこに飛び込むつもり」というのは、「潰せないなら自分がはやぶさ2計画を乗っ取ります」と宣言しているとも読める。


 私は、このメールを、「古き良き宇宙研、その中核組織だった宇宙理学委員会の黄昏」と読み解く。
 宇宙理学委員会は、1980年代から1990年代の宇宙研黄金時代を主導した組織だ。科学者による自治は極めて効果的に働き、日本の宇宙科学を世界の第一線に押し出す事を可能にした。
 しかし2003年の宇宙三機関統合以降、宇宙理学委員会を中心としたシステムがうまく働く前提が崩れた。古き良き宇宙研は崩壊した。社会の状況も大きく変化した。

 その中で、時計の針を元に戻そうとする無駄な努力が行われていることが、このメール、ひいては「はやぶさ2」を巡る状況から浮かび上がってくる。時はもとには戻らない。宇宙理学委員会が主導した“科学者の楽園”としての宇宙研はもうあり得ない。

 その状況下で、「もっとも宇宙研らしいミッション」と評価されたはやぶさの後継機に、かつての宇宙研の栄光を支えた宇宙理学委員会の関係者ががこのようなメールを出してまで反対するところに、私はどうしようもない皮肉と悲しさを感じる。

 宇宙理学委員会を巡る、はやぶさ2の状況については次の記事で書くことにする。

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Comments

「はやぶさ」の帰還を心から祝福する。しかし、
宇宙開発の予算を大幅に削った腐敗・民主党には、夢も希望も持てない。
子ども手当などの税金のバラマキの10%でも充てれば十分の科学技術予算が得られる。

ある程度の大組織なら、怪FAXや怪告発手紙の類は年に1回は出回っていると思われます。数百人単位の組織なら普通にある話じゃないかなと。大抵は、とるに足らない一個人の恨みや嫉妬の感情を自己正当化するために、もっともらしく組織の問題を嘆いたり、個人の犯罪を暴くなどと憤っていたりする内容です。

組織内で騒いでいる様を見て溜飲を下げるのが目的の愉快犯なので、こういう公の場所で公表するのは差し控えて、黙殺するのが大人の対応というものだと思います。組織の問題ではなく、個人の問題なのです。

某掲示板でも、スレッド荒らしと称される行為が頻繁に行われていますが、正しい対応は「放置」ではないかと思う次第。むしろ、こういう場で公にしてしまった時点で、松浦さんは、このメールを作り出した悲しい個人の片棒を担いでしまっているという事になりませんか?

まぁそりゃ改善はしなきゃだめだろ。
そこを直してこその二号機でしょう。ただの色違いとかじゃないんだから・・・

同じ話を関係者から直接聞きました。既に民主党にそれに関する意見を投じております。悲しい話ですね。
7月の甲斐さんのイベントでお会いしませんか?久しぶりに(笑

このメールが本物かどうかは別として、内容的には松浦さんが取材を通じて得た情報と整合する訳ですね?

だとして、どうしても分からないのは、この方が何故「はやぶさ2」を潰したいのか、仮に潰せたとして、その方にどういうメリットがあるのか、ということです。正直なところ部外者&野次馬にはサッパリ分かりません。

メールに書かれている様な工学的な問題は、問題として把握出来ているなら改良すればいいだけの話で、これから作る物に対して「こういう問題があるからダメ」というのは理由にならないでしょう。

では何故潰したいのか?潰して何のメリットがあるのか?折角予算を付けてやると言われていて、しかも国民から切望されている、そして同じ「イトカワ」を探査するわけではなく別の、しかもカテゴリーの違う対象を探査するのだから理学的にも大変大きな意味がある。それを潰しても、大きなデメリットは有れどメリットの欠片もありません。

分からない…全く理解できない。

単なる怪文書で済ませるには内容が重すぎるとは思いますね。
真偽の程は分かりませんが。
ただ、本当だった場合には「はやぶさ2」が潰される可能性があります。
宇宙の分野でよく言われる最悪の事態を想定するならこのメールは事実であると想定して事態に当たるべきでしょう。

私達がこの問題に関心を持ち、活動などで皆の好奇心を引く事が出来ればただの笑い話で済ませられるかもしれません。
とりあえず、自分もネット署名してきました。

怪文書問題ですが、松浦さんのおかげでこうして日の目を見たことは良いと見ます。

通行人さま

>組織内で騒いでいる様を見て溜飲を下げるのが目的の愉快犯なので、こういう公の場所で公表するのは差し控えて、黙殺するのが大人の対応というものだと思います。組織の問題ではなく、個人の問題なのです。

これが壁の落書きで実害がなければその通りでしょう。しかし予算減額など明確な意図を持ち、実際にはやぶさ2の予算減額に成功しているとなれば、宇宙コミュニティーと国民への明確な背信行為です。
怪文書作成者に理由はあるでしょうが、自分の主義主張に合わないものを排除し予算削減をもって活動を妨害するとなれば単なるエゴ、国家と納税者への背信行為でしかありません。

ある意味今回の怪文書で製作者は尻尾を出してしまったわけですが、松浦さんが指摘した

>その上で、「必要であれば私がそこに飛び込むつもり」というのは、「潰せないなら自分がはやぶさ2計画を乗っ取ります」と宣言しているとも読める。

部分について、

怪文書製作者様

では乗っ取ったあとチームやグループをまとめて製作者ご自身が「自分の理想の計画」を遂行できるのでしょうか?それとも自分のプロジェクトに利用できる人材、施設、予算だけを横取りして残りは廃棄するおつもりですか?そうなればJAXA内の優秀な人間は黙って見ていませんよ。

「はやぶさ2」の計画を潰すことにより、「はやぶさ」成功によって地位の上がった特定勢力の勢いをくじきたいのでしょう。

そして「はやぶさ2」の代換計画に自分が名乗りを挙げることにより、「はやぶさ2」を潰し、それを改善したとする計画で生まれる予算を得ることを目的とする。

組織内の内ゲバ話かと思います。差出人は本気で恐らく「はやぶさ2」を欠陥計画として捉えている。そしてその上で「自分ならもっとよいものを提案できる」と考えている。恐らくそれは無理だと思いますが。

JAXA内の組織内闘争に「はやぶさ2」が巻き込まれるのは残念ですね。

私の知る限り、「はやぶさの予算を削ろうとしている、また実際に削ってのけたのがJAXAの身内である」と主張しているのは松浦氏だけです。
その他の人の主旨を同じくする主張は、情報源を辿ると必ず松浦氏の記事で終着となります。
そして。今回この記事でもって宇宙理学委員会を追求する根拠は、出所不明の怪文書です。

田中一葉さん
> 私の知る限り、「はやぶさの予算を削ろうとしている、また実際に削ってのけたのがJAXAの身内である」と主張しているのは松浦氏だけです。
観測範囲狭過ぎなのでは?

「はやぶさ2」が動かないのは政治のせいではない
http://www.nurs.or.jp/~ogochan/essay/archives/2478

_ とか書いてたら あら。松浦さんところで、はやぶさ2の経緯が詳しく書かれてますね(^_^;
http://www.akiaki.info/akiyama/tDiary/?date=20100616#p04

本当に変な、まさに怪文章です。
どうにも半可通な感じをぬぐえません。(私もその半可通の一人ですが)
ISAS内部の方、少なくとも責任ある地位の方が書いた文書とはとてもは思えないのですが。

まず一つ。
打ち上げ失敗により失われたASTRO-Eと、その代替機であるASTRO-EII(すざく)の関係でさえ改良設計は多々あったことは、一般にも広く知られております。
ましてや「はやぶさ2」ではミッションの違いによる機体側および搭載機材の変更があることは当然でしょう。

そしてもう一つ。
予定以上の酷使に耐えたイオンエンジンを問題視し、実際にトラブルを起こした化学推進系の利用に強く傾いていること。
はやぶさの化学推進系のトラブルについては、再運転もかなわなかった以上、原因は絞りきれず、完全な対策はできていないはずなのですが。


さて、こういった問題においてはあまり下手な事は言えない立場なので、ネタに走ります。

まずは川口先生。
菅首相に「予算をつけます」と言われても、「だが断る!」と言って欲しかった。
科学予算全体が増えた結果として「はやぶさ2」が実現しなければ意味が無い、と。

そして、はやぶさ。
あの地球を写したラストショットと、今回の怪文書とをかけて、暇をもてあますお偉いさんと解く。
その心は、「頭上の余白は敵だ!」

では、お目汚し失礼いたしました。

2006年末に盛り上がった「はやぶさ2を実現させよう勝手にキャンペーン」のときから、どうしても気になって、はっきりさせておいて欲しい事があって、ずっと言い続けているのですけど、また言います。

ISAS全体の予算的・人的リソースは変わらず、「はやぶさ2」とそれ以外の計画とで、予算的・人的リソースの奪い合いになっているという状況ではないのでしょうか。「はやぶさ2」に予算がつくコトで、それ以外に使うべき予算が削られ、人的リソースが割かれてしまうというコトにはならないのでしょうか。
それとも、「はやぶさ2」が実現しても、その代わりに、他の計画が潰されるようなコトはないのでしょうか。
とにかく、この前提をはっきりして欲しいと、つねづね強く願っています。

個人的には、「はやぶさ2」を実現して欲しいと、強く思っています。
でも、もしかしたら、たとえば、日本人宇宙飛行士の活躍のマスコミ報道に踊らされ、「有人宇宙開発をもっと推進しろ! そのための予算をもっと増やせ!」と喚き立て、科学探査などに使われるべき予算・人的リソースを、圧迫させるようなコトをしているのではないか――という危惧を、完全には拭い去れないんですよ。
だから、本当に心から純粋に「“はやぶさ2”を実現しろ!」と無邪気に主張して良いのか、いまいち自信が持てないわけで……。

理学ミッションのコトは、理学コミュニティの人たちが一番良く知っている(少なくとも私よりは知っている)と考えるのは、ふつうは間違っていないでしょう。
「もしかしたら、理学コミュニティの(一部の)人たちは、本当は、“はやぶさ2”をやる予算・人的リソースがあるのなら、“はやぶさ2”よりも理学的・工学的意義のある、別のミッションをやるべきだ――と考えているのではないか……」と、2006年末の「はやぶさ2を実現させよう勝手にキャンペーン」のときから、気になって仕方ないんです。

だから、理学コミュニティの人たちには、「はやぶさ2」に反対し、文句をつけるのではなく、「“はやぶさ2”の予算・人的リソースがあれば、“はやぶさ2”よりも意義のあるこんなミッションができる」「“はやぶさ2”のおかげで、その意義あるミッションが潰されるコトになる」と、主張して欲しいです。これは、本当に心からのお願いです。
そういうハナシが出てこない限りは、私も、「“はやぶさ2”を実現せよ!」という主張なり運動なりを、(ちょっと躊躇しつつも)しつづけざるをえないです。

>takeshi 様
情報のご提供有難う御座います。
上の方のエントリは私が先のコメントで指した通りなので語るに及ばず。
下の日記には大変興味を惹かれました。松浦様の仰りようとは大分ニュアンスが違いますが、秋山様の言及された内容からは確かに松浦様の描かれたストーリーが矛盾無く成立しますね。メールの出所が止む事無き方面である事も非常に信憑性を増しました。
ただ、一点、あのような稚拙な指摘を並べ立てた文面を本当に科学者たる地位や自覚の有る方が書かれるのだろうか、という一点でのみ受け入れ難い思いです。

逸れますが、上の方のエントリ経由で笹本様の呟きを抄録されたtogetterを拝見し、思わず唸る一文を見つけました。

 > そして、JAXA広報にも、なぜはやぶさ2の計画に予算が付かないのか、進まないのか、はやぶさを支持してくれた国民に説明する義務があるとおもうのだがどうだろう?

正に。

氏名を削除したとはいえ、私信を本人に了解を得ずに公開したことは、一般的な常識に反します。内容を要約するなどの手段は当然取れたはずです。公開の方法として明らかに間違っています。内容がおかしいからといって、一般常識を逸脱しても良い理由にはなりません。

この内容が一般に公開されたからといって、状況はなんら変わらないと思います。言い出した人の引っ込みがつかなくなるだけです。この内容であれば、指摘のとおり簡単な誤りが多いわけですから、当事者同士で解決できる問題、あるいは解決すべき問題です。

外部の力を借りるにしても、この私信の公開はなんら有効な効果は出さないでしょう。議論がまとまっていない事実を関係者以外に拡散するだけで、はやぶさ2への応援にはなりません。

はやぶさ2を引っ張る人がいないという指摘は、はやぶさ2を引っ張る理学の人がいないということでしょう。小惑星探査を、宇宙研のあるいは日本の宇宙科学の1つの大きな柱にするという合意が、コミュニティーの中で取れていないのではないでしょうか。

日本の狭いコミュニティーの中では人数がそろわなくても、世界の科学コミュニティーの中では人数が確保できるかもしれません。この意味では、海外でロケットを提供するという強い協力を得ることを要求された意味は理解できます。

誤解は議論で解消されます。小惑星探査を日本の限られた予算の中で実現すべき理学的理由を明確に示す必要があります。どの程度の数と量のサンプル回収できれば、太陽系のきげんが解明されるのか。はやぶさが10機必要であれば、日本の予算では支えきれないでしょう。また、先行のプロジェクトが頓挫している以上、次のプロジェクトには確実性がより要求されます。はやぶさ2は他のプリプロジェクトよりも確実性が高いですか?単位予算あたりの論文数は多く出来そうですか。関心を持ち続ける必要はありますが、過度な介入はやめましょう。

松浦さん
「はやぶさ」タッチダウンの時以来のコメント書き込みです。大変ご無沙汰しておりました。
#当時は、ブログ内で色々脱線転覆の議論をしてしまい、御目汚し失礼いたしました。

未だにJAXA殿の内部が一枚岩でないのですね。(しかも旧ISAS殿の内部ですら。。)

ただでさえ
・国家予算の元締め側(政府&民主党)が宇宙開発や基礎科学研究への先行投資に余り協力的では無いところで、、
・かつ、NASAが(当初より「はやぶさ」帰還が失敗であろうとの憶測のもとで)虎視眈眈と米国内で小惑星探査&サンプルリターンのプロジェクト計画を推進しているところで、、
JAXA殿の内部でも足の引っ張り合いをしている有様だったとしたら。。

素人考えでも、プロジェクトの計画・推進(次期「はやぶさ」型小惑星探査機の開発計画)がギクシャクしてきてしまうのは明白ですよね。
「はやぶさ」が大成功を収めて、国民の視線・関心が今まで以上に「はやぶさ2」へ集まっている状況だというのに。。がっかりさせられます。

我が国の「先端頭脳集団・先端技術集団」内部でのお粗末な『派閥争い』!!
『「はやぶさ」の輝かしい成果と運用チームの不撓不屈の業績』を目の当たりにした直後なので、より一層、嘆かわしく感じてしまいます。

とは言うものの、
どこの組織・企業でも「派閥」なるものは存在しますし、「派閥」の思惑に沿わない相手グループの足を引き合うという事は、ありがちな事ではありますが。。
#JAXA殿のお偉い先生様・研究者様方も、所詮、人の子という事なのでしょうね。。(ーωー;;)

少々拡散した私見ながら、宇宙に限らず、
「工学は理学に敬意を払い、理学は工学に感謝する」
という文化があった時代から、
「工学は理学のいうことを黙って聴けば良い。」
というような文化に変化しかかったけれども、日本の風土ではそうならなかったといいますか。
理学の先生は頭が良いので、「理学者とメーカーさえあれば全てうまくゆく」「工学主導のミッションはけしからん」
と信じたいのでしょうけれど。

余談ながら、流行りの「ハーバード白熱授業」ではないけれど、何が値打ちのあるミッションかは、意見の一致はありえないですね。
最後に「ケツを持つ」のは国民ですから、それなりに考えた上でなら、じゃんじゃん意見を言って良いのだと思います。

連投すみません。
コメントを信じがたい思いで読みました。
(1)学者は、「名声と知識の亡者」です。特に出世の早い学者ほどこの傾向が強いです。もちろん、「碩学にして伯楽」もいらっしゃるけれど。
(2)袋叩きの感があるISSや有人も20年以上心血を注いできた無数のエンジニアや研究者がいるわけで、これもまた、足の引っ張り合いですね。
福祉だとか、初等中等教育の充実だとか、そういう立場から「宇宙は予算を減らせ」というのは尤もだと思うのですけれど、宇宙業界のあるコミュニティーが別のコミュニティーを叩いて我田引水というのは、いい加減にしてほしいですね。


怪文書、これはこれとして、面白いですね。

・一体、誰に読ませる為に書いた文章なのか、さっぱり解りません。
・「あかつき」のリアクションホイールの配置に言及しているにしては、
 「はやぶさ2」に関する記述が幼稚すぎます。

以上2点により、僕の中ではガセ判定ですが、
が、これがガセであろうがなかろうが、松浦さんの「次の話の趣旨」には
あまり関係ないですよね。あくまで、これは枕であって・・。

しかし、勝手ながら「怪文書の発表」やら「堀江貴文への接近(公知のソースで言いますが、今年3月に債務不払いで東京地裁に家財差し押さえを喰らった人間が、道楽でロケットを打ち上げるのはカタギのやる事じゃありません)、やら、
物騒な話題が多いですね。

最近の松浦さんは、なんだか心配です。

はじめまして。
最近松浦さんの書かれた「おそるべき旅路」読みました。関係者の方の熱い思いに感動しました。
ところで今回のメールですが、上の方にも書かれているように、はやぶさ2にプロジェクトの価値があるのかどうか、
理学コミュニティで問題にされているということですかね。
ただこれは何も今に始まったことではないと思うのですが。
はやぶさの時もなかなか理学コミュニティで承認されず、工学ミッションとして認められて予算がおりたとか聞きました。
まあ、はやぶさの時は工学系の長老上杉先生がプロジェクトメンバーにおられたようですから。
(ミッションアドバイザーとしてだそうですが、内部の方が前プロマネと呼んでいたのでもしかしたら、途中でマネージャーを川口先生が引き継がれたのかもしれませんが)
関係者の話では、プロジェクトが開始されても、無理だとさんざん叩かれたそうです。
はやぶさで少なくとも実行可能なことは証明されたのですから、今後はこの技術をいかにいかすかですよね。

ISASのよいところは、工学系と理学系が協力してプロジェクトを推進していくところだったと思います。
これからもそのところは引き継がれていくと願っています。

はやぶさ2が何故予算的に認可されないのか?
だれもが不思議に思う中、JAXA内部の事情を垣間見れる記事本当にありがとうございます。
 twitter上で@madnodaさんがお怒りですね。
確かにメールを晒すのは問題があるのかもしれませんが、発信者は隠されてることと
akiakiさん指摘するようにメーリングリストなどで広く流布したメールとの事なので、別にいいのではないかと思います。それにメールを送信した人も意見として主張するならそのぐらい自信を持って堂々とするべきですよね、ましてPMに立候補するというのならば。
 宇宙開発に関するJAXA内の議論の内容はもっとオープンに出来ないものなのでしょうか?
関係者だけの密室で話し合い、一般には何も知ることができないというものでしょうか?
それは科学のあるべき姿ではないと思います。
『どんな事でも、とことん議論するのが、宇宙研流。』というなら科学者同士の本気の議論を見せてほしいです。議論の内容または議論の結果示された理由により仮に「はやぶさ2」が見送りになってもそれはあきらめがつきます。
訳が分からないまま「はやぶさ2」が潰えてしまうのだけはやめてほしいです。
 松浦さんの記事をきっかけにtwitter上で喧々諤々の議論が始まると思いきや、madnoda氏の激怒により他の人が発言を控えてるように見えるのも残念です。そんなに怖い人なんでしょうか? 悪意の解釈をするとmadnoda氏はJAXAが結論を出すまでは観衆は黙っとけ知らなくていいと言ってるようにも感じます。

松浦、野田両氏を以前ロプトプラスワンにて拝見しており、応援しております。

タッチダウンの頃から、はやぶさ2についての関係者の何とも心苦しそうでかつ歯切れの悪い発言を聞かされてきたファンとしては、
「内々で何とかするから余計なことをするな」と言われるのはちょっと残念です。
(結局今まで内々でどうにか出来てない様ですし…)
俺らの援護射撃は何だったのかなあと思ってしまいました。
失礼ながら、今の角界と同じような印象を受けます。

もちろん一般人がアクセス可能な情報レイヤ(TVなど)においては川口氏や的川氏が2をさりげなくアピールしているのは存じています。
関係者が怠慢をであるという訳ではないと思いますので、私はこれからも内閣などへのメール等を続けていきたいと思います。

メール暴露に関しては、現場に嫌われて一番困るのはほかならぬ松浦氏ですから、色々お考えあっての事だと思います。続報を期待します。

すみません。追伸です。
ひとそれぞれに取り方が違うと思うのですが、私ははやぶさ2に反対というより、
はやぶさプロジェクトを大成功とられる(日付は帰還前ですが)ことに危機感をもって発信されたもののような気がします。
はやぶさは、資料の採取、探査という点では、弾丸発射が確認できなかったこと、ミネルバ着地失敗で、その点では及第点を与えていいのか疑問があります。
工学実験探査機でしたし、プロマネは、はやぶさの安全を第一優先しておられたようですから(はやぶさの状態を考えれば、正しい判断と思います)。
しかし、資料をとってなんぼ、実験をしてなんぼの理学の人にとっては御不満があるのかもしれません。
はやぶさ2を理学的目的のため、サンプルリターンを最優先目的とする理学ミッションとしてやりたいとおっしゃられるのなら、むしろ喜ばしいことかと。
(はやぶさは成功の可能性が低いことで工学実験探査機になったんですよね)
プロマネを理学の人がやっても、工学は必ず補助につきますから、経験豊かな川口先生とかがメンバーになられれば問題ないと思うのですが。
でも、松浦さんの方が事情はよくご存知と思うので...どうなんでしょう。
メールも他の人の手を渡っているうちに、削除されたりして、曲解を招く文書になっている可能性もあると思います。

いつもの日経BP系の媒体に記事が載らんなぁと思ってたらブログに書いてたんですね。
この記事の内容自体はウラが取れないという意味で大手媒体系のサイトには載せられないでしょうが
「はやぶさ」とその後継機の開発の経緯について、改めて何処かしらに(日経BPあたりに)記事が
掲載されることを望みます。
あっちこっちで思い込みからくるデタラメ(「事業仕分けのせいで開発が中断になった」なんていう
のが最たるもの)が流布してるのが目障りで仕方ない今日この頃です。

コメントへのメントになりますが、「どうしてJAXAは開発を渋るのか」。
まぁ単に「カネがないから」でしょう。「はやぶさ2」の開発に着手したら他のプロジェクトが中止・
凍結・見直しされるわけで、ワリを食う人はいるでしょうから。ついでに「はやぶさ」のチームを
妬む人達もいるでしょうしね。人が三人集まれば派閥ができるもんですよ。
そんなに難しく考えることでもないでしょう。
今後も予算が増えていくなら他のプロジェクトが予算とっていっても気にならないでしょうが、今後
減少し続けるのは確実なわけで少ないパイの奪い合いをしてるんでしょう。不毛ですけどね。

私信の公開というのはまあ、問題かもしれませんが、この期に及んでこんなレベルの議論しているのを暴露していただいたのはむしろありがたく思います。
徹底的に議論を尽くす・・・というと聞こえがいいですが、JAXA内で計画を潰し合って誰が得をするというんですか?
予算が無いからこその潰し合いでしょうけど、これだけはやぶさが国民の注目を集めている今なんですから、どうしてこの機に「もっと予算を」と言えないんですか?
やるべきミッションがあるならもっと広く国民に広報して全てのミッションに予算を付けさせるぐらいの気概を持って欲しいものです。

・・・そういえば広報の方は仕分けされちゃいましたっけ。

松浦さんのさまざまな解説記事やブログは楽しみにしており、今週のはやぶさ帰還でも大いに喜びを共有させてもらいました。しかし、今回のエントリーは正直言ってがっかりです。ひいきの引き倒しではないでしょうか。科学研究の立場からは惑星探査のやりかたにいろいろの意見があるのは当然で、それが多くの関係者の間でフランクに議論されるされるのは、少数の裏談合で決まる(政府の公共事業、補助金事業の多く?)より、よっぽど健全です。理学委員会が諸悪の根源のように書かれていますが、旧宇宙研プロジェクトを圧迫してきた統合後のJAXAの経営判断が根本原因ではないのですか?
「怪文書」というレッテルを貼って、自分と異なる意見を攻撃するやり方はファシズムや人民裁判的アジテーションによる言論封殺に通じるものが感じられます。本来の回覧の対象から差出人名を消して転送する行為が本来、健全な議論であったものを「怪文書」に仕立てることになったのではありませんか? このような記事を書かれたことを実に残念に思います。

これまで興味深くよませていただいていたのですが、今回の記事にはショックを受けました。
事の真偽は別として、公的な場所に個人推定の可能性がある私信や、噂を掲載してはいけない、ということは、高校生、大学生でもインターネット社会の恩恵を受ける上で守らなければならない倫理として教育されていることです。インターネット社会の一員として事の真偽以前によく冷静にお考えになってください。面白半分に反応している人も同じです。
皆さん、認識が甘過ぎます。

>公的な場所に個人推定の可能性がある私信や、噂を掲載してはいけない
 2010.6.21付け記事で、掲載を決断するに至った状況を掲載しました。読んでみて下さい。

>「怪文書」というレッテルを貼って、自分と異なる意見を攻撃するやり方
 秋山さんの記事と併せて読んでもらうと分かると思いますが、これは世間一般で言う出所不明の「怪文書」でありません。また、私もレッテル貼りはしていません。

>2010.6.21付け記事で、掲載を決断するに至った状況を掲載しました。読んでみて下さい。

早速ありがとうございます。しかし、読みましたが、理解できませんでした。もしこれが本当なら、関わった人すべてが情報倫理に違反しているのです。しかし、最終段階でそれを公にさらしたという判断はあなた個人のものです。1桁ならだめだが3桁なら良いのですか?それは赤信号みんなでわたれば怖くないという主張と同じで、良識のある方のする事ではありません。
はやぶさは感銘をうけた一人ですが、一部の行き過ぎた応援はかえって関係者に戸惑いを与えるのではないか、今後を危惧します。影響力の大きい方だけに、どうぞ落ち着いて冷静に考えていただく事をお願いします。こんな事をしなくても応援はできるはずす。。。

私信でもなんでもいいですが、名前を隠して怪文書扱いするセンスを疑います。反論があるのならば単に議論すればいいだけではないですか。

持って生まれた人格はなかなか変えられないとは思いますけど、なにとぞ慎重に行って欲しいと思います。今までの様にこそこそ動いてると信頼されないです。

工学vs.理学という図式ですか。まるで戦時中の海軍と陸軍の不仲のようですね。実にまったく馬鹿げた話です。
馬鹿げた話ではありますが、今回の松浦さんの日記の内容は、多くの点で、私がほかの複数のソースから聞いている内容と一致しています。信憑性の高い話だと思います。
メールを公開することが倫理的に適切であるかどうかは、法律家でない私にはわかりませんが、松浦さんはそうした危険をも承知の上で、覚悟を決めて公開に踏み切られたのでしょう。
今回の日記は、多くの人が疑問に思いながら(おそらく保身のために)口を開かずにいたことへの言及でしょう。言葉を換えれば、松浦さんはイヤな猫の首に鈴を付けに行ったわけです、命がけで。その意味するところは大きい。作家魂に敬意を表します。

私は全く関係のない一般市民ですが、一般市民からどう見えたかを書かせていただきます。

やはり今回のメールは公開してはいけないものだと思います。
複数のルートから入手し、メーリングリストで回覧されたとしても、それは宇宙業界の閉じた世界での紐付けされた範囲で、ですよね。
そのメールを不特定多数に公開するのは問題があると思います。
業界内であれば”社内”の身内の事情で済みますが、一般公開であれば ご当人の隣に住む噂好きなおばさまにも伝わるわけです。
名前を削除してあるから良いという訳でもありません。 疑心暗鬼に陥ります。

本件については、メールの存在と要旨のみで済ませることは出来なかったのでしょうか?
たしかにこの内容を見ずに論旨を判断するのは難しいと思います。
しかし、ここで”読み解く”必要があったのかについては疑問に感じます。

”複数のルートから”であれば、そのルートが何を意図して流したか、流した方は何を読み取ったのか。
それらを総合して記事にすれば、元メールを掲載せずとも 論旨を示せたのではないのですか?
”取材して記事にする” という客観的立場からは数歩以上踏み込んでしまっている様に見えました。

「自分が泥をかぶってでも」というのは 結果的に読者の視線を斜めにしてしまいますよ。

今回の件も 野田さんの月探査の記事もそうですが、「何があったんだ?いったい何を焦っているんだ?!」って状態です。

乱筆失礼いたしました。

あ、一番大事な事を書き忘れました。

メールの件読んで一寸落ち込みましたが、「希望と絶望と」を読んで 少なからず熱くなりました。

踏み込み過ぎの松浦さんも気に入ってますが、遠目があってこそと思います。
これからも「接写と広角と」を記事の便箋に、ご活躍されることを期待しております。


私が日頃から考えていること並びに松浦さんの文章を読んで感じたことを書きたいと思います。

税金が原資の給料をもらい、社会に対して直ぐに役に立たない、
場合によっては全く役に立たない内容を研究する研究者は
普通一般の企業に勤めるサラリーマンと同様に考えて良いのでしょうか。

私自身は税金から給料をもらい、人前に出て自分の成果や考えを話し、
運が良ければ社会に影響を与える仕事であることから
公人である政治家、或いは文筆業などのタレントの類と大きな違いが無いと考えています。

そう考えると、場合によってはプライバシーの適用範囲に制限が出てくると考えられます。
どれとは申せませんが、確かタレントに対して裁判でそういう判断が示されたと記憶しています。
要するに公人である場合、プライバシーの一部は
市民に対して開かれなければならないこともあるのだということです。
実際、大阪府では知事を含めた公務員のメールの一部を開示しています。
そして、それらの伝達は一般的にマスコミの方々が行うことになります。
他にも下世話な雑誌で特定政党の内部で回った怪文書の記事を見たことが有りませんか?
これらは市民が公的団体の監視をする上で重要な仕組みです。

今回の件ではミッション予算となる税金の出元である国民の意見が反映されて当然の内容でしょう。
だからこそ、お役所(お役所ではないが敢えてそう書きます)内部での税金の使われ方に関係する情報は
オープンにされるべきではないでしょうか。
市民には知る権利が有るのです。

勿論、理学者の立場である私から見ても、これでは衆愚政治であるとは思います。
理学的に意味のある研究ができなくなってしまう。
しかし、これが我々の社会の仕組みなのではないでしょうか。
これを否定してしまったら社会システムの否定に繋がってしまいます。

今の日本では哲人政治ができないのです。

凄い結果を出さなければ良かった。そう思う人も居ると思います。
しかし、凄い結果を出さなければ十分な予算を手に入れることができなくなっているのも事実です。
日本はそういう国になってしまったのです。
理学者と言えどもそれに対応しなければなりません。

理学者と工学者は車の両輪のようなものです。どちらが欠けても車は上手く走りません。

ひょっとして、松浦さんの解釈は、逆では?

>はやぶさ2を潰すという意図が先行して存在し、

私も当初、松浦さんの解釈通り、批判的にこの怪文書を見ていたのですが、発信者の真意を読み取ろうと何度も読み返してみると、逆に、はやぶさ2を、世間の批判を浴びないような立派な探査機に仕上げたいという思いが伝わってきました。

>そのままの設計で”はやぶさ2”を作るのでしょうか?
>決して”はやぶさ”と同じであってはならないと考えます。
>必要であれば私がそこに飛び込むつもりです。

これらの表現は、はやぶさ2の改良を強く求めている表現であって、決してはやぶさ2を否定する内容ではないように思えてきました。

それともう1点、これは完全に私の想像ですが、このメールを文面から見ると、上司と思われる特定の個人宛てに発信された意見書のように推測されます。
その後、メールを受取った上司と思われる人が、部下もしくは内部の関係者に対して、このような意見が出ているので諸氏の意見も聞きたいというコメントを添えて転送したのではないでしょうか?
そして不幸なことに、そのメールが部外者にリークされる時に、添えられたコメントが削除されてしまったので、故意に外部に配布されたかのような印象を与えているのではないでしょうか?

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