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2010.06.23

転載:圦本尚義・「はやぶさ2」科学技術評価委員会委員長の談話

 今日は、秋山演亮さんの日記に掲載された、圦本尚義・「はやぶさ2」科学技術評価委員会委員長の談話を転載する。

 圦本尚義(ゆりもと・ひさよし)北海道大学・大学院理学研究院・教授は、日本の太陽系生成論の第一人者のひとりだ。同時に「はやぶさ2」ミッションの評価を行う委員会のトップでもある。その人物から、このような談話が出ることの意味はとても大きい。予算査定側に対して、川口プロマネのような工学試験衛星である「はやぶさ」に直接係わった工学者だけではなく、理学者もまた「はやぶさ2」ミッションの実現を欲していることを示すことになるからだ。

 また「「はやぶさ2」科学技術評価委員会委員長としては,「はやぶさ」の成功により,只今計画中の「はやぶさ2」ミッション成功の確実性が実際に計算できる様になった事は大きな収穫です.」というくだりは、理学側が「はやぶさ」ミッションの工学的成果をきちんと理解していることを明確化するという面で、大きな意義がある。

「はやぶさ2」科学技術評価委員会委員長談話

小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワの探査を終え地球に帰還し,試料回収カプセルが外傷なく無事回収された事に対し,「はやぶさ2」科学技術評価委員会委員長として心よりお歓びし,関係各位の7年間におよぶご努力・忍耐および機転の利いた発想と実行に対し最大の敬意を表します.
 「はやぶさ2」計画の科学技術評価に携わっている一科学者として,このミッションが帰還という成功により完結されたことは日本の新しい惑星探査の幕開けを飾るものであり,同時に,人類の根源的な問の一つである「我々の起源」の解明について日本が世界のトップランナーに躍り出た瞬間として感無量でありました.無傷の回収カプセルの中には,宇宙環境そのままのイトカワ試料が採取されている事が大いに期待でき,それは地球環境に汚染されない太陽系形成の記録を直接解読できる人類史上初の宇宙試料であるはずです.今後,初期分析チームの基本的な物質科学的分析とそれに続く国際公募による本格的な研究により太陽系起源研究における数々の新しい扉が開かれていくに違いありません.
 「はやぶさ2」科学技術評価委員会委員長としては,「はやぶさ」の成功により,只今計画中の「はやぶさ2」ミッション成功の確実性が実際に計算できる様になった事は大きな収穫です.「はやぶさ2」計画は,小惑星リモートセンシングによる科学的成果,打ち上げから小惑星到着を経て地球帰還までの工学的成果,および,これから達成されていく物質科学的分析による科学的成果等の「はやぶさ」のすべての成果を土台にしつつも,新たな観測手段を加えて一新をはかった独創的な計画です.「はやぶさ2」探査天体はイトカワよりさらに太陽系初期の状態を保存していると期待される小惑星です.「はやぶさ」により開かれた扉の先の新しい扉を発見し,それを次々と開いていき,我々の起源を太陽系形成より昔の時代にまで遡って解明していく事が「はやぶさ2」には期待できると本委員会では評価しています.そして,その証拠が地球の実験室で宇宙物質中に直接観察でき,それをその場で国民と共有することができるのがサンプルリターンミッションです.「はやぶさ2」の速やかな実現により,日本が世界の惑星科学をリードし続け,国民が「はやぶさ」を通じて感じた夢と希望と誇りをもう一度体験してくださる事を願っています.また,新しい惑星探査と宇宙物質分析によって開発された新技術は,人類の生活と幸福へとフィードバックされる事も願い,その努力を惜しみません.

「はやぶさ2」科学技術評価委員会委員長 圦本尚義
2010年6月18日

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