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2010.07.01

はやぶさ2予算を削ったのは民主党か?

 まずは様々な話。

 秋山さんが連日日記を更新している。

月探査は実施されるべきである(有人宇宙港をめぐる冒険 2010年7月1日)

 月探査に反対なのではなく、「現時点で2020年までに2400億円といった規模の月計画を決定するのはあまりに時期尚早」ということだという話。私も賛成である。

 面白いソフトウエアが、フリーウエアで出現した。

あのラストショット画像をお手軽に作成「はやぶさ地球光」

 要するにどんな画像でも、はやぶさが最後に撮影した地球のような画像に加工してしまうというソフト。リンク先では、信楽焼のたぬきの画像が、はやぶさラストショット風に加工されている。対応OSは、Windows 98/Me/2000/XP/Vista/7。けっこう面白そうだ。

 pixivでは、はやぶさだけではなく、IKAROSとあかつきも人気となっている。特にIKAROSは、Twitterのイカロス君がかわいいということで好評だ。

検索:あかつき:あかつきという名前のマンガのキャラクターが混ざってしまうのは、仕方ないところだ。
検索:イカロス君:こちらは間違いようがない。


こんな感じの絵が他にも多数アップされている。


非公認?ミッションパッチだ。イカロス君が涙目なのは、はやぶささんの帰還を見届けたから?

 イカロス君は誰がデザインしたか知らないが、素晴らしい広報素材となっている。イカロス君の生みの親は自らのセンスを誇ってよいと思う。

 ちなみに本日時点で、はやぶさ関連画像のアップ数は999件となっている。

 さて、今日の本題。
 「民主党政権がJAXA予算を仕分けしたので、はやぶさ2の開発予算が付かなかった」という話について。

 昨年の第一次仕分けにおけるJAXA予算の審議内容は、以下の資料で読むことができる。

行政刷新会議ワーキングチーム 「事業仕分け」第3WG(内閣府ホームページより:pdfファイル)

 この中では、「はやぶさ2」について一切触れていない。そもそも民主党政権ははやぶさ2について何一つ問題にしていなかった。
 明らかに仕分けの俎上に乗っているのは、問題を起こしている電波望遠鏡衛星ASTRO-Gである。しかも俎上に載せたのは仕分け人側ではない。
 この議論の中で、ASTRO-Gという名前は3回出てくるが、すべて説明者側からである。

 まず4ページ目に説明する文科省側から名前が出てくる。

○説明者(文部科学省)(前略)一点だけ申し上げさせていただきます。電波天文衛星「ASTRO-G」と いうものが宇宙科学衛星の中にございました。これにつきましては、技術的な課題が判明してきた ということを踏まえまして、その課題の検討を行うということで来年度の概算要求はゼロというこ とで、要求させていただいていないことになっておりますので、ここに掲げさせていただいており ますけれども、要求としてはないということでございます。

 次いで財務省が触れる(5ページ目)。

○説明者(財務省) 主計局から御説明いたします。(中略)…注でございますが、先ほどお話がありましたように、既に宇宙基本計画に位置付けられておりま した「ASTRO-G」というものが今回、開発を中止してございます。このように一旦決まった計画 でも変更があり得るということも踏まえて御議論いただければと思います。

 財務省は議論が進んだ段階でも、またASTRO-Gについて触れている(13ページ目)。

○説明者(財務省) 先ほど海外との共同のものは動かせないのかというお話がございましたが、 例えば今回、文科省さんで開発を中止・凍結した ASTRO-G という衛星は多国間共同という位置付けでございます。その辺どの程度、科学技術の分野で他国との共同でスケジュールが動かし得るのか等々も御議論いただければと思います。

 この議論の中で、科学衛星の順位付けに関する質問が出ている。

○中村評価者 衛星の方でよろしいですか。先ほどから衛星の側は国民生活に直接ではなくても非 常に大事だということで、私もそう思っているんですが、1、2、3、4と4つ種類があって、1、 2は既にある意味では実用性で動いていますけれども、4は新しい宇宙開発ですよね。これも随分これまでの成果と精査してあると思うんですが、この中で例えば、優先順位みたいなものはJAXAの中でおありなんでしょうか。これはすべて同等に今必要と見ていらっしゃるのか、何かの優先順位が中でおありなのか教えてください。
○説明者(文部科学省) 1、2、3については、特に1、2については環境利用という観点もあ って。
○中村評価者 伺っているのは4です。

 ここで4といっているのは、説明資料に記載された衛星区分の4番目のこと。科学衛星である。

 これに対する文部科学省の説明は以下の通りだ(18ページ目)。


○説明者(文部科学省) 4は、大学の研究者が共同で宇宙科学研究本部というところの機械を使って競争的にミッションをつくっていくということで、ここは従来から、ある種別な考え方で動いてきたものがJAXAの中に一緒に入っている形になっています。全体としては1つのJAXAの予算の中で考えられますけれども、そこは後ろに別の研究者の大きな母体があるということが考慮されて、ある種別枠で動いています。

 「科学衛星の順位付けは、研究者が決めていて文科省の裁量の別枠だ」と言っているわけだ。同時にASTRO-Gについて何度も触れているということは、文科省としては、仕分け人の意識をトラブルを出したASTRO-G及び、そんなASTRO-Gを選定したJAXA/ISASの体制に向けさせたかったのだろう。

 実際、週刊ダイヤモンドに書いた通り、この件は、LUNAR-Aの残りであるペネトレーターと共に、JAXA/ISASがきちんと片を付けなくてはならない問題である。この時点で、「きちんと実現可能なトップサイエンスの計画を選定する能力」が疑問視されているわけで、仕分けではその部分を文科省に利用されてしまったといってもいいかもしれない。

 結果として衛星全体がどうなったかといえば——

 後段の衛星の打ち上げでございますが、縮減が11名、うち半減1名、3分の1程度が3名、2割が1名、1~2割が2名、1割が4名、予算要求どおりというのが2名でございます。こちらも国際約束の問題もありますし、また、まさに科学という意味で意義があるということで要求どおりという声がある一方で、優先順位やコスト削減についても努力していただきたいという視点がございますので、こちらは1割は確実に縮減するようにしていただきたいということで、どちらも1割の縮減ということでございますが、若干ニュアンスの違いをつけて1割の予算要求の縮減というこ とで、それぞれ結論させていただきたいと思います。

 仕分け人は、衛星計画全体で一割を確実に削れ、という結論を出した。が、「どこを削れ」ということは言っていない。どこを削るかは、JAXAの経営判断に任されたわけだ。

 これを「民主党が予算を削ったから、はやぶさ2に予算が付かなかった」と解釈するのは無理があると考える。


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Comments

いつも勉強になります。ありがとうございます。
「「民主党が予算を削ったから、はやぶさ2に予算が付かなかった」と解釈するのは無理がある」ならば、なぜ日本の宇宙開発に予算がつかないのか、違う角度から考えてはどうでしょう。

 日本には47都道府県あるのです。それなのに、JAXAの情報センターは丸の内に座したまま。
選挙でさえ宣伝カーで連呼して回るのですから、全国区なら全国行脚してナンボではありませんか。

全国区での予算が必要なら、北から南まで、全国の科学館と協力して駅前にロケットエンジンを持って行き、街の人々と駅前宇宙を語る必要があるはずです。
東に祭りがあれば、御輿のとなりに探査機の実物大を置き、西に帆船が来れば、宇宙ヨット実物大を広げて客寄せパンダになる。
この国でサポーターを獲得するには、ドブ板が有効であることは選挙で証明されているのですから、丸の内なんかにいるカネも時間もないはずです。

 はやぶさは小惑星まで行ってきた。あかつきは金星まで行く。それなのに丸の内で何しているのでしょう?
予算とは税金であり、説明なければ予算はない。当然のことだと思います。

宇宙開発予算全体の枠が小さくなったことがJAXA内部での不透明な駆け引きの
原因になっているというのを外野から眺めていても感じ取れます。

全体の予算の枠を広げていくのが一番の処方箋かと思いますが、それには欧米
は予算を増やしているのに、とかいう理屈になっていない理由ではなく、将来
何兆円の経済効果が見込めるとかいう第三者機関の評価を添えた意見書とか、
説得力のある資料を用意すべきかと思います。

最近、国の補助で行った研究において、事後の報告を全く行うことなく次の
補助を受けていた件がありましたが、これこそまさに研究者が自らの地位を
貶めている原因ではないかと思います。

国の経済が大赤字なら赤字の削減に努めるのは政治家の責務です。
研究者が聖域に閉じこもれば聖域を狭められるのが今の時代です。
何の役に立つか説明責任を問われる時代の到来だとも思いますし、ロビー活動
とかいうつまらん習慣が必要な時代の到来でもあるのかと感じます。

連日の更新お疲れ様です。とても勉強になります。
どこか一つだけが悪いのではなくで、
戦略を示す政府と戦術行うJAXA相互に、問題があるのですね。
経済的側面で宇宙科学の価値と何なのか切ってしまうと
国家が火の車なのに、小惑星探査などに具体的にいくらの経済効果があるのか?となってしまう。
これを、研究者にプレゼンしなさいとゆうのは無理があります。
じゃあ、ビジネスになる通信衛生でも打ち上げて、宇宙科学に予算は割けないと…
(ビジネスとしての宇宙事業を否定するつもりは、ありません)
なので、そこは政府が戦略と信念もって大枠を決めるべきじゃないかと
(一番では無いが自国で獲得すべき技術、どこもやっていない先駆者的な研究等で、国際的な評価を上げ国益になる、技術発展に寄与)
本当の無駄は削減を指示する(前回の失敗が全くフィードバックされず同じ失敗を繰り返し続ける等)
後は、JAXAが具体的なプランニグを行い、科学者、研究者が腕をふるう
その結果、はやぶさのような私たち一般国民を、熱くさせてくれる成果がでるといいなと…
私は、JAXAに対しては、変なお祭り騒ぎ的イベントは期待しません、オープンカレッジ等
大人も知識を深める機会を増やして頂けると、うれしいです。
地方で巡回展示等をやって頂けるなら、ぜひ本物のカプセルを展示し、
子供達に「これが本当に遠い小惑星イトカワに行って帰ってきたんだよ」と誇らしげに説明してください。
乱文、失礼いたしました。

ASTRO-GについてはJAXA/ISASだけではなく、それを推薦した機関にも責任がある。

新聞報道でも二転三転して曖昧だったところが良く分かりました。ありがとうございました。

ところで、JAXAの経営判断というと、はやぶさ2の打ち上げは海外のロケットを使って、
無償で打ち上げてもらうことが前提のような、新聞報道を見た記憶があるのですが?
そちらの方は、実現の可能性は有るのでしょうか?

>仕分け人は、衛星計画全体で一割を確実に削れ、という結論を出した。が、「どこを削れ」ということは言っていない。どこを削るかは、JAXAの経営判断に任されたわけだ。

すいません、この件に関してですが、「JAXAは衛星計画全体に関して前年比2割増しで予算請求をおこなったので1割減らされても結局はプラスだ」という話を聞いたのですが、この件については正しいのでしょうか?

こちらの方がJAXAに情報公開請求を行ったようです。

自民政権時に17億要求、政権交代による再提出で5000万、仕訳で衛星全体の削減を受け、3000万になったようです。
http://togetter.com/li/29435

現在wikiをはじめ、多くのブログやツイッターが松浦氏のブログをソースとして、はやぶさ2はJAXA内部の問題と結論付けています。
しかし、内容を見る限りでは民主政権の歳出見直しを見落として、政治の問題ではないと結論付けているように見えます。

記事の件について、再調査お願いできませんでしょうか。
このままでは悪戯にJAXAの内部対立を煽っているようにしか見受けられません。

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