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2010.07.31

2002年7月26日のはやぶさ

 本日のJAXA相模原キャンパス一般公開は、1万7000人の人出だったとのこと。行かれた方、ご苦労様でした。

 以下に掲載するのは8年前の2002年7月26日、相模原キャンパスにて組み立て真っ最中のはやぶさの写真だ。この日、私は組み立て中のはやぶさを取材した。もちろんこの時点でははやぶさという名前は付いていない。MUSES-Cである。

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 探査機本体を横方向から見たところ。右側にイオンエンジンがついているこの時点では、はやぶさはなじみ深い金色でもないし、太陽電池パドルもハイゲインアンテナも付いていない。一見するとただの箱である。

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 イオンエンジンは、ダストカバーで覆われていた。カバーの素材は、パソコン部品を梱包する静電気がたまらないタイプのシートのようだった。隅には化学推進スラスターが付いている。はやぶさの化学推進スラスターは、日本初のヒドラジンと四酸化二窒素を使う二液式だった。それまで、日本の衛星・探査機はヒドラジンを触媒で分解する一液式を使用してきた。二液式は複雑になるが性能が向上する。二液式スラスターの開発は、はやぶさの地味ではあるが大変重要な成果である。

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 反対側、再突入カプセルが付く側。下部にサンプラーホーンが見える。まだカプセルは付いていない。外壁に搭載機器が装着されているのに注意。はやぶさは搭載スペース節約のため、壁面内部だけではなく外側にも機器を搭載した。

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 ハイゲインアンテナ。アンテナ面の設計は火星探査機「のぞみ」に使ったハイゲインアンテナと同じ、3軸織りの高弾性CFRP製。

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 ダミーの治具に搭載されたタンク。通常、衛星・探査機は、力のかかる軌道変更用エンジンを中心に、円筒形の力を受ける部材(スラストチューブ)を持つスラストチューブ構造を採用することが多い。しかし、はやぶさは、強力な推力を発生するエンジンを持たない代わりに、微小推力のイオンエンジンを搭載している。このため、本体は壁面パネルで力を受けるモノコック構造を採用している。タンク類は内部の仕切り(バルクヘッド)に装着される。

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 ダミーの本体に取り付けてある、左右の太陽電池パドル。畳んだ状態である。

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 この日、組立の現場では、サンプラーホーンの展開試験を行っていた。「3、2、1」という秒読みと共にサンプラーホーンのラッチがはずれ、ホーンが延びる。無重力の宇宙空間での展開を前提に設計されているので、重力のある地上でそのまま展開すると、すとんと下に一気に伸びて、場合によっては壊れる恐れがある。この日の試験では、作業者がサンプラーホーンの下を手で支えて、そろそろと伸ばしていった。

 この時点で開発スケジュールは非常にタイトなものになっていた。「綱渡りどころか、ひも渡り状態が、糸渡りになっている」という説明が、今も耳に残っている。
 この8ヶ月半後、MUSES-Cは内之浦からM-Vロケット5号機で打ち上げられ、「はやぶさ」と命名されたのだった。


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Comments

今晩は。
TwitterのPOSTを見て伺いました。

実を言うとイトカワ着陸前のはやぶさ関連写真を見るのはこれが初めてです。
☆ですので、にわかファンと言われれば返す言葉は有りませんが・・・(笑)

打ち上げ前のはやぶさの姿を知る事が出来て大変嬉しいです。
ありがとうございました。m(_ _)m

のぞみとかの写真もありましたら、見てみたいです。
(たぶん、他の人も見たいと思います)

本当に珍しいもの、ありがとうございました。m(_ _)m

1点細かいところに気がついて^^;

HGAの鏡面は,「3次元織りC/Cコンポジット」ではありません.
「3軸織りの高弾性CFRP」でできています.

「はやぶさ」プラモに代表される(特に代表はしてないか)「はやぶさ」のイラストが,
どうも気になって(笑)
細かくてすみません.
 

 そうでした。直しておきました。指摘ありがとうございます。

smatsuさん こんにちは
> ダミーの治具に搭載されたタンク
写真はASTRO-Fのようです。

「はやぶさ」の帰還に触発されて模型を製作中ですが、精細な写真、大変に参考になります。とくに、再突入カプセルの取り付け部分、上から見たハイゲインアンテナは初めて見ました。

たかが模型、ではありますが、なるべく忠実にしたいと思い、資料を探しています。が、NIRSとONC-Wの取り付け状態が確認できる資料が全く見つからず、少し悩んでいます。もしそれらが分かるようなアングルでの写真を撮っておられたら、それも載せていただけないでしょうか。あるいは、そのような資料を何かお持ちであれば、ご教示いただければ幸いです。

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