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2010.07.15

昨日の宇宙開発委員会について、補足3点

 昨日の宇宙開発委員会の件で。3つほど補足しておく。

その1

 昨日の宇宙開発委員会では、イプシロンロケットとはやぶさ2について、委員会事務局が作成した、今後の審議のやりかたについての資料が配付された。内容はイプシロンが「開発入りについて」、はやぶさ2が「開発研究入りについて」という語句の違いだけなので、ここでははやぶさ2に関する資料をスキャンして掲載する。

 それぞれフェーズを進めることが妥当かどうかの審議は、宇宙開発委員会の下に設置されている推進部会という会合で審議される。審議は8月中に結論を出すということになっている。
 その後、結論を宇宙開発委員会本会合に提出して承認を受け、予算要求となるので、推進部会は相当な速度で、イプシロンとはやぶさ2という2つのアイテムの審議を行う必要がある。

 高速の審議ができるかどうかは、事務方の文科省がどの程度やる気を出すかにかかっているだろう。推進部会長の青江茂委員(昨日書いたように、科技庁官僚出身だ)が、どのような采配を振るうかに注目したい。


その2

 毎日新聞で、はやぶさ2の予算がおよそ270億円になるという報道がされている。はやぶさは本体126億円に、打ち上げが64億円ほど。7年間の運用経費が乗って全体で200億円ちょいのプロジェクトだった。
 およそ70億円のコスト上昇は、多分にかつての宇宙研が採用してこなかった書類による品質管理が入ってきたことによる事務経費、ロケットが大型化(打ち上げはH-IIAということになっている)したことによる経費増加、そして——これを公言したものかどうか、だが——メーカー利潤を適正に積み上げた結果だろう。

 東大生産技術研から宇宙航空研究所を経て宇宙研に至る時代には、「科学の発展のためだ。伏して頼むからこの金額でやってくれ」的な、メーカー泣かせの仕事があったと聞いている。もちろんメーカーも、好意と意気込みだけで引き受けていたわけではなく、そこで入手した技術で宇宙開発事業団(NASDA)の仕事を受注して帳尻を合わせていたのである。NASDAの仕事は、積み上げコストプラス一定割合の利潤で算定されるから、一般公共事業と同じで単体で損をすることはない。


その3

 昨日の傍聴で、「一気に退出するマスコミ」に加えてもうひとつ驚いたことがあった。はやぶさに興味を持った一般の方が傍聴に来ていたのだ。「松浦さんですか」と声をかけられてびっくり。話を聞いて二度びっくりである。
 はやぶさはついに宇宙開発委員会を傍聴に、宇宙を仕事にしているわけでもない一般の人が来るまでの動きを産み出したわけだ。
 まったくもって前代未聞の探査機だ。

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Comments

270億円かけるんですから、それ相応にリターンを増やしてはどうでしょうね。
未来のプロジェクトが、たったの100万画素で数千枚では話にならないですよ。

通信がネックになるなら、カプセルにハードディスクを入れてはどうですか。
メモリーカードでも何でもいいですが、とにかくリターンのケタを増すことです。

もちろん、通信でできることはすべてやるのは当たり前ですが、
通信をネックにするのではなく、通信以外でも情報を得る。
それがはやぶさプロジェクトの意義ではありませんか。

初代のサンプルは砂粒程度でしたが、じつは画像も砂粒程度。
素人だって作品を仕上げたのに、彼らはまだ着陸動画すら撮影していない。
人々は様々にコラボしたのですから、今度は二代目君がコラボする番でしょう。

データ回収を物理手段に回すことができれば、通信側にも余裕ができる。
最悪、1ビット通信になったとしても、がんばってカプセルを回収すれば、
テラバイトクラスのデータが手に入る。「宇宙の玉手箱」になるのです。

数年間消え入るかのプロジェクトだったはやぶさ2がようやく動き出しましたね。はやぶさのカプセルは卵でビーコンは産声だったわけです。これは日本が生きる未来を拓く産声かもしれない。

そして、これからが正念場。青江推進部会長の工学的意義にアクセントを置くことの示唆は興味深いです。こうすれば早く決まるというアドバイスであってほしい。

概算要求まで約1ヶ月少し、予算可決まで半年。なんとかうまくいって欲しいと思います。人々の熱が冷めないよう願いたい。イトカワサンプルがタイミングよく見つかったらこれでいけると思うのですが。


 これで思い出すのは、某缶コーヒーのCMの独白ですね。電気で時速300km以上のスピードを出す、一人乗りの車に、「人類の夢や期待を載せているんですね」とのセリフに「そんな重いものは載せられない」と開発者の一人が切り返した、というあれです^^。

 結局、リエントリカプセルもペイロードの1つ、壊れやすいもの、極度に重いものを載せるには、慎重にならざるを得ないのでしょう。

 『はやぶさ』後継機に関する検討会でも講演者の一人が言っていましたが、実際に採取する試料がマイクログラムレベルでは納税者の理解を得るのは難しいだろう、という見解を述べています。
 それなりの質と量が、その場観測のデータだけでなく、回収する試料の量に対しても言える、それは当然だろうと思います。
 もっとも、微量でもかなりの情報を得られる解析技術もあるわけですから、探査機の技術的仕様に応じた範囲で出来ることをすればよいのでしょう。

 さて、どうなるか?今後が楽しみであり、不安でもあります。

はやぶさの後継機に関して、サンプルリターンだけにとらわれてしまっているような印象を受けるのですがいかがでしょう?これまで宇宙にあまり興味がなかった人々にすら「スゴいよね~」と言わせた「はやぶさ」の魅力はもっと違うところにあると思うのです。

私のコメントについて、松浦様の書かれた記事とは直接関連がないことを事前にお詫びいたします。

はやぶさ2開発の予算化を認めてもらうにあたり、理学的・工学的にと何を前面に出して行くべきかという話しになっていますが、一般国民の感覚からいえばそれらに大きな違いはないのではないでしょうか。とはいえ、現在進行中の金星探査機「あかつき」とソーラーセイル実証機である「イカロス」。単純にツイッターのフォロー数だけを比べてみても理学衛星と工学衛星のどちらに国民の興味が集まっているかは一目瞭然です。
研究を本職とする方たちからするとかなり不本意だと思います。ただ、乱暴な意見を言わせていただくとこれが国民の感覚を代表しているとも言えると思います。 私個人としては、「あかつき」が送ってくる観測データを楽しみにしていますし、国際的なプレゼンスに関しては「あかつき」にかなわないと考えます。しかし「イカロス」には「あかつき」にはない魅力を感じるのです。
今、「はやぶさ」「はやぶさ2」について理学的な成果が議論の中心に置かれていますが、国民が求めているのはそればかりではないことも理解していただけたらと思います。

国民は「日本の宇宙への進出」をしっかりと見ていると思いますよ。理学面も、そして工学面も。
純粋に「日本ってこんなに凄いんだ」と感動し、「日本人で良かった」と誇りを持ち、「明日からも頑張ろう」と自分を奮い立たせる。日本の宇宙開発には、そうした面が大きいと最近特に感じています。

いでさんの提案を考えてみたのですが、リターンを増やすのは賛成なのですが、それは別の方法になるのかなと思います。というのは、はやぶさはすべてのミッションが直列に配置されてるのが問題で、最後のサンプルリターンが行われないとほとんどの成果が失われてしまう。カプセルの中に映像データを入れてくる方法では、その欠点を補った事にならないですし、はやぶさ2では、最初から地球帰還後の延長ミッションを考慮した計画(推進剤の増量かな?)になっているようですから、それに支障をきたすことになります。
はやぶさ2の基本設計ははやぶさと同じとのことですが、変更ができるなら、はやぶさ2自体でサンプルの観察、分析ができるといいですね。それなら、はやぶさの欠点を補い確実性を増すことになりますから。

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