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2010.07.09

此機宇宙翔千里

 今日はあまり時間がないので写真を2枚ほど。

Mv


 この写真は、はやぶさを打ち上げたM-V5号機。打ち上げ取材時に、確か関係者の誰だったから「宇宙作家クラブニュース掲示板で使って」とデータをもらってそのまま未使用だったもの。時間も経っているし、まあいいか、で掲載する。
 見ての通り、M-Vの上半分だが、注目点は、ランチャーから探査機を覆うフェアリングの横につきだした昆虫の触角のような部品だ。
 これは実は打ち上げ時のフェアリング周辺の振動・音響を計測するセンサーである。この写真では見えないが、反対側にも同じセンサーが付きだしている。M-Vロケットの振動で、打ち上げ時に探査機にかかる衝撃波のことを書いたが、まさにそれを計測しているわけだ。

P1010531
 ご存知、性能計算書の表紙。毎回酒やらタバコやらのパロディになっていて、M-V5号機/はやぶさ打ち上げの際は、清酒「虎之児」(井手酒造、佐賀県)のラベルをもじったものになっていた。
 性能計算書とは何か、どのようにしてこの遊びが成立したか、そして歴代の性能計算書表紙などはISASニュース2007年1月号(pdf)で紹介されている。

 こんなページもある。

 リングに上るボクシングの選手のように、打上げを前にした科学衛星は、発射場の内之浦に着いてから最後の計量を済ませる。できるだけ新しい重量データを使いたいために、ロケットと衛星の軌道計算(性能計算書)は、他のシステムの『実験計画書』よりも一足遅れて独立の小冊子として編集される。

 毎回の仕掛け人は的川泰宣対外協力室長で、きちんと蔵元の了解まで取ってアイデアを出すと、オペレーション班の周東三和子さんがフォトショップの技術の限りを尽くして表紙を作成するという協力体制が成立していた。今はお二人とも定年となり、はたして今後この伝統が続くかは分からない。

 が、周東さんは帰還に合わせて、新しいラベルを用意したのであった。

 宇宙研元OP(オペレーション)班の周東さんが、はやぶさの帰還にあわせて、あの性能計算書(※1)をバージョンアップしてくれました。  以下、周東さんの弁

『私たちが送り出した「虎之児」が7年ぶりの寅年に戻ってきます。
そこで性能計算書の表紙のニューバージョンを作りました。
お酒はもう予約しました。送り出した時と同様、このラベルに貼り替えて出迎えたい。』

 そして、なんとも素晴らしいことに、今回、はやぶさの帰還を祝って、蔵元の井手酒造が、特製ラベルの虎之児を販売している。

材料名キセノン、此機宇宙翔千里、回収は4年経ってから、開栓には十分注意して下さい、川口酒造有限会社

 宇宙関係の広報で、「どこまで行ったら成功といえるのか」という議論があるが、一つの判断基準として実際の経済活動として回るというのはあるだろう。宇宙開発へのサポートとして成立し、なおかつお金もまた回っていくという形になれば最高だ。

 まだ、特製ラベル「虎之児」は在庫があるようだ。次の祝杯があるなら、カプセル内から回収された微粒子中に、イトカワ由来のものが見つかった時だろうか。

 
注(7/10 0:05):初出で井手酒造が、井出酒造になっていました。お詫びし、訂正いたします。

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Comments

リンク先の「宇宙研物語」10章を読みました。
思わずニヤリとするエピソードが満載で自分の大学時代を思い出しました。

周東さんの名前を見て、懐かしくなり、書かせていただきました。
いつ電話しても「宇宙研データセンターです」と明るく電話に出られ、仕事上でも大変お世話になりました。
小職の転勤で、ISASに行かなくなって約三年になりますが、周東さんもお元気なようで、大変嬉しく思います。

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