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2010.07.16

推進部会が開催される

 本日7月16日午前中に、はやぶさ2開発研究入りと、イプシロンロケット開発入りを審議する、宇宙開発委員会・推進部会が開催された。
 残念ながら私は傍聴に行けなかった。先回りして書いておくと、来週火曜日のはやぶさ再突入カプセル・キュレーションの定例記者会見も別途用事があって出席できない。可能な限りはやぶさ関連の会見は追っていくつもりではあるが、身は一つしかないので致し方ない。

 報道によれば、今日の推進部会では、はやぶさ2の詳細が提出されたようだ。報道は主にコストについて伝えている。

 どの報道も基本は同じ内容。はやぶさ2予算として、本体148億円に運用などで16億円、合計164億円という数字が出てきたという内容だ。一部ではH-IIAロケットを使った打ち上げ費用100億円という数字も出ている。昨日の毎日新聞報道が打ち上げも含めて約270億円いう数字は大枠で正しかったようだ。ついでに三菱重工業が公開していないH-IIA打ち上げ経費も、本体製造と打ち上げ運用経費込みでおよそ100億円ということも見えた。

 推進部会はあと2回、この議題で開催されるとのこと。

 昨日も書いたが、はやぶさの127億円に対して21億円増というのは妥当なところだ。同型機とは言え、開発開始からは13年が経っており、もはや製造していない部品も多い。欠品の出る部位は今の部品を使ってもう一度組み直すしかない。そもそも、2003年の打ち上げ時点でも、あのすべてが初物づくしだった機体を127億で作れたことのほうが奇跡に近い。
 打ち上げ経費はM-Vを使えば64億円だったわけだが、このあたりは廃止した文科省はどう考えているのだろうか。また、打ち上げ能力はかなり余るはずなので、実現した場合はどんな相乗りになるかも興味深い。

 報道の中では朝日だけが政治側の動きについて報じている。

 川端達夫文科相は同日、はやぶさ2の開発について「政府全体の宇宙方針にかかわること」として、仙谷由人官房長官と前原誠司宇宙開発担当相(国交相)に宇宙開発戦略本部での検討を要請したことを明らかにした。


 現在、霞が関では宇宙庁設立を巡り、内閣府と文部科学省が宇宙関連の管轄がどちらが取るかで綱引きを繰り広げている。文部科学省が、宇宙開発の権限を根こそぎ内閣府に持って行かれる事に対して抵抗しているわけだが、実は宇宙庁設立となった場合の妥協案として「学術の性格が強い宇宙科学は文科省に残す」というプランが浮かんでは消えを繰り返している。
 ここで問題なのは「太陽系探査は学術なのか」ということ。X線や赤外線、太陽観測、磁気圏観測などの衛星は、そのまま国立天文台と合併できるだろうが、では探査はどうか。

 はやぶさやはやぶさ2は、JAXA月・惑星探査プログラムグループ(JSPEC)の管轄だ。JSPECが発足した理由は、アメリカが有人月探査計画を言い出したために、探査が単なる宇宙科学というよりも、国際宇宙ステーション(ISS)のような巨額の予算を使う大規模プロジェクトになる可能性が出てきたためだった。その後、今年念頭のオバマ新宇宙政策により、有人月探査は中止ということになったが、現在米議会で行われている議論では、オバマ新政策への不満と反発が、議会側から吹き出している。アメリカの状況が落ち着くにはもう少しかかりそうだ。

 文科省としては、まだわずかながら巨大公共投資に化ける可能性を残している探査も自分の懐に残したいところだろう。もっと言えば、国民的反響が続いているはやぶさ関係を、自分の管轄で押さえておきたいところだろう。

 川端文科大臣のオリジナル発言を聞く限り、はやぶさ2について前原宇宙担当大臣と仙谷官房長官に、はやぶさ2についてそちらでも考えてくれと話した、ということだけである。とはいえ、それぞれ政治家の間の会話にはやぶさ2が出てきたということは大きな意味を持つ(なにしろ今までそんなことはなかったのだ)。そして、そこには官僚側の思惑も被さっているのだろう。


 ナチスを利用してV-2を作ったフォン・ブラウン以来、宇宙開発を引っ張ってきたのは政治に利用されるふりをして政治を利用したパイオニアたちだった。
 なにがあっても恐れる必要はないと、私は思っている。新たな計画が実施できれば、そのことにこそ意味がある。

「……研究に必要なら、悪魔からだって金をふんだくって突進する。“悪魔に負けなきゃいい”という信念だ。」(小松左京「日本沈没」より。幸長助教授による田所博士評。小学館文庫版上巻p.168)

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Comments

政治家の間で話が出た事実だけではなくて、参院選敗北後の民主党政権内の課題になったことは大きな意味があります。

打ち上げ2014年までには総選挙があるはずですが、そのときに政権を守りたい、あるいは政権を奪いたい、民主と自民にとっては、国民的人気のはやぶさ後継となるはやぶさ2計画を中止するには、世論を納得させる相当の理由がなければ大きなリスクとなるはずです。合理的根拠がなければ政策の正当性を問われてしまう。民主党政権は、それこそ今度は仕分け自体を問われますし、自民党も民主党攻撃の材料に使ったわけだから、いまさら手のひら返しはできない。国民の注目度は抜群です。

先方もはやぶさを利用して選挙をするのだから、こちらも利用させてもらえばいいのです。

アニメ映画オネアミスの翼のように、実現に政治的な意図が背景にあろうとも
実際に中で取り組む人の、魂さえ売りわたさなければOKです。
個人的には、無難なはやぶさ2ではなく、うまくオブラートに包んだチャレンジングな
はやぶさ2であって欲しいです。
後へ続く人への継承の為にも…
将来、深宇宙港なるものを見てみたいのものです
(技術、費用の課題、賛否はあるでしょうけど…)

あまり加熱してはやぶさ2が政治問題化するのもどうかなとは思います。
政治家の力で予算化された(と政治家が感じた)場合、判りやすい成果を
求められて、それによって探査方法に制限が掛かる可能性も出ます。
具体的には、目に見える(グラム単位の)サンプルのリターンを要求され
今の弾丸方式とは別の方法を模索する必要性に迫られるなど。

ただそれはそれである程度は仕方ない事だと思います。
今のキュレーションだって、イトカワのミクロン単位のコンタミの中から
選び出された粒子よりも10グラムとか5グラムとかの石のほうが嬉しいのは
紛れもない事実ではあります。

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