はやぶさ2のみならず、宇宙開発全体のお金の話
まだまだ暑い。霞ヶ関界隈では来年度予算要求の作業が行われているはずだが、具体的な動きはまだ見えてこない。民主党の政治主導の方針を受けて、宇宙開発戦略本部では政治が意志決定を行う手順の構築を行っているはずなのだが、こちらも22日現在、音無しで事態は潜航している。
宇宙開発委員会の資料アップは相変わらず遅い。8月11日に開催された第29回会合では、はやぶさ2とイプシロンロケットの審議を行ってるのだが、資料がまだアップされていない。議事録は関係者の間を回覧してから公開するので、公開が遅くなるのは理解できる。しかし、すでに傍聴可能な委員会で公表された資料のアップぐらいすぐにできるはずだ。しかもその手間は恒常的に忙しいキャリア官僚の手を患わすまでもなく、事務職で行える。この遅れは怠慢以外のなにものでもない。
現在の日本の宇宙開発の根本にある最大問題は、「自民党政権時代に、政治が宇宙開発にあれこれやるべきことを押しつけたあげく、予算を増やさなかった」ということにある。1960年代以降、日本の政治は3回、宇宙開発の意志決定に参画した。
最初が1969年に宇宙開発事業団を設立し、「実用衛星とロケットを国産化する」と決めた時。当然ながら、この時はきちんと予算が付いた。
次が1980年代初頭、現在の国際宇宙ステーション計画が動き出し、そこに日本モジュールで参加すると決めた時だ。参加にあたっては「ロン・ヤス」を標榜し、親米を強調する中曽根政権の意向が大きく働いた。しかし、予算措置はなかった。既存予算を削る形でステーション計画は予算化された。関係者の間では、「こんなことではやってられない」「日本モジュールは完成させても運用予算が出ない。このままでは神棚に飾るしかない」と悲鳴が上がった。
しかし、その後のバブル景気で国家予算全体が膨らみ、宇宙予算も相応に増えたので、完成した「きぼう」を神棚に飾る事態は回避された。政治はなにもしなかったが、時代の流れが予算危機を回避する役割を果たした。
最後が1998年の情報収集衛星計画を決定した時だ。この時は、自民党の防衛族議員が積極的に動いたが、予算については彼らはなにも動かなかった。結果、国際宇宙ステーション計画の時と同じつじつま合わせが行われた。既存宇宙計画の予算を400億円削って、その分を情報収集衛星に回した。開発は宇宙開発事業団委託となったので、予算は表面上減らなかった。が、400億円規模の巨大計画を押しつけられたのだから仕事は増えて予算は増えないということになった。
しかも、バブル経済が追い風になった国際宇宙ステーション計画とは異なり、この時日本経済はバルブ破裂後の「失われた10年」の真っ最中だった。当然予算の自然増はあり得ず、その後の「失われた20年」で予算不足の歪みは拡大した。
「はやぶさ2」の予算がなかなか付かなかった背景には、様々な思惑が交錯しているのだが、一番の根本には、この「政治がやることばかりを増やしてカネを付けなかった」という問題が存在する。
タダで仕事をする者ははないし、タダでできる買い物もあり得ない。仕事を増やすなら予算を増やすべきなのだ。カネがないならその分をどこか、別の国家の仕事を減らして捻出すべきである。それを行うのが政治というものの役割であるはずだ。
自民党の長期政権は少なくとも宇宙開発に関して、その当たり前の財布の管理ができていなかった。
では、民主党は?というのが今の状態である。
第5回MMD杯に、また宇宙関係の動画の投稿があった。
はやぶさからイカロスへ…。この認識は正しい。
はやぶさシリーズはこれから理学探査ミッションとして安全性・確実性を上げていく必要がある。
はやぶさが切り開いた「積極的にリスクをとり、より遠くへ、世界の誰もやったことのないことを」という系譜はイカロスに引き継がれている。その先には、ソーラ電力セイルミッション(pdfファイル)がある。目指すは木星圏。木星にプローブを突入させ、木星の強大な磁場を観測する探査機を分離、スイングバイによる黄道面脱出により太陽系を外から一望し、さらには複数のトロヤ群小惑星を世界で初めて探査する。
はやぶさを巡るブームは、「ブームがブームを呼ぶ」という段階に入ったようだ。一昨日の毎日新聞の記事のように「今、はやぶさがブームになっている」的なメタデータ的記事が増えて来つつある。このような記事が出始めると、宇宙にも科学にもまったく興味を持たなかった層が「今、ブームになっているんだって?!」と動き始めるものだ。
ニコニコ動画の 探査機「はやぶさ」タグの登録件数は900件にもなった。
pixivのはやぶさタグは1231件となり、まだ増え続けている。
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