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2010.08.31

御礼:8月31日にたどりつきました

 やれやれ、やっと8月31日にたどり着いた。

 6月21日に宣言:タイムリミットの8/31まで毎日書きますなどと公言してしまった手前、何がなんでもと思って書き続けてきた。
 「願掛けというにはあまりにささやかだが、書くこと以外はできない自分にできる精一杯だろう。」などと格好をつけたものの実際には書くことそのものがぎりぎり精一杯になってしまい、まあつらかったことよ。

 ここまで読んでくれた皆様、ありがとうございます。

 その後の経緯を考えるならば、はやぶさに対する一般の関心はまだまだ続いている。カプセル展示も今後全国を回るようだし、複数の出版企画は動いているし、映像化の話も聞こえてきている。さらには、帰還カプセルの内容分析もじりりじりと進んでおり、期待のB室が開けられば、ひょっとしてひょっとするかもの大サプライズがあるかも知れない。
 
 予算についても昨日の記事で書いた通り、概算要求にはやぶさ後継機予算が30億円計上された。これがそのまま全額通るかどうかは全く分からないが、少なくとも現時点まではじりじりと前進している。
 2014年打ち上げまでにやらねばならないことを考えると気が遠くなるが、それでもはやぶさ2計画がこれほどの逆境にも関わらずまだ続いていることは大変すごいことだと思う。

 さあ、自分の役割は一応終わり。これにてゴール…などということはまったくなく、今後とも必要に応じてどんどん情報を流していくつもりだ。ただし、はやぶさ関連のみを固め打ちするのではなく、その他の、このブログ本来の自分の好き勝手な話題も含めて書いていくことになるだろう。

 何度繰り返しても、言い過ぎということはないだろう。「はやぶさは終わりではない。始まりが終わっただけだ」これからが日本の太陽系探査の本番なのである。

 高い塔を建ててそこへのぼってみれば新たな地平が見えるものだ。そのような塔を自ら建てるという意識を鼓舞したという点でははやぶさには意味があると考えている。

 …はやぶさ2があるとすれば、これは日本にしかできないだろう。是非ともやりたい。
——2005年12月14日午前の記者会見にて、川口淳一郎

 あれから5年、次の高い塔を建てる決意はできただろうか。Are you ready?

2010.08.30

はやぶさ後継機、平成23年度予算概算要求に29億8700万円

 文部科学省の平成23年度概算要求が公開された。


 事前に報道されていた通り、はやぶさ後継機には29億8700万円の要求が出ている。
 以下の科学技術・学術政策局、研究振興局、研究開発局の資料に記載されている。

 要求の項目は、当然のことながら、宇宙開発戦略本部の当面の宇宙政策の推進について(pdfファイル)に沿っている。

 ただし、ここでも文書内には「はやぶさ後継機」と記載されており、「はやぶさ2」とは書いていない。また、2014年度打ち上げとも書いていない。つまり、国の施策としてはやぶさ後継機を推進することは決まったが、それがはやぶさ2であるかどうかは、文書上、まだあいまいにされている。宇宙開発委員会での審査を行った以上、はやぶさ2以外は事実上あり得ないが、まだまだ何が起きても私は驚かないであろう。
 文科省の要求段階で、はやぶさ2が潰される事態は回避された。それにしても2014年打ち上げにはぎりぎりだ。はやぶさが宇宙空間でたどった苦難の旅を、はやぶさ2は計画段階でなぞっているかのようだ。

 その他では、小型固体ロケット「イプシロン」の開発に38億円、HTV-R(公文書では「回収機能付加型宇宙ステーション補給機」という名前になっている)の研究開発に5億円が付いている。

 大塚実の取材日記に、本日30日開催のサンプル分析に関するブリーフィングが掲載されている。


 分析作業はじりじりと這うようにして進んでいる様子。サンプル採取の可能性が高いB室の検査は10月半ばになるとのこと。

2010.08.29

情報収集衛星への投資の推移

 某所で3日ばかり合宿生活をして先ほど帰宅した。NHK「追跡A to Z」のはやぶさ特集は、うっかりしてタイマーをかけ損なったので見ていない。仕事は相変わらず、一つ山越しゃホンダラッタホイホイ状態である。

 22日に書いたはやぶさ2のみならず、宇宙開発全体のお金の話に関連して、一つ資料をアップしておく。日本が情報収集衛星にどれだけ予算を使っているかという表だ。
 出展は宇宙開発戦略本部が一昨年に宇宙基本計画を策定していた時に、内閣情報調査室・内閣衛星情報センターから宇宙開発戦略本部に提出された資料だ( 第4回宇宙開発利用体制検討ワーキンググループヒアリング資料 平成21年1月19日 pdfファイル)。
Igsbudget_2

 これが現在の状況だ。年間600億円以上が、コンスタントに情報収集衛星に注ぎ込まれている。これらはもとはといえば、宇宙関連予算から削ったものであり、それだけ既存宇宙計画は圧迫された状況を10年以上強いられている。

 事の善し悪しとは別に、これが現状だということを理解した上で、今後のことを考えていかねばならない。


 今のところ、情報収集衛星についてまとめた本はこれしかない。導入の経緯と、アメリカとの関係の中で現状の形にまとまっていった推移をまとめている。



 私も2005年に出したこの本で一章を割いて情報収集衛星についてまとめているが、内容が大分古くなっていることは否めない。導入時の思惑違いと、思惑違いが何によって発生したかについてはきちんと書いたつもりではある。


2010.08.28

宇宙開発戦略本部の文書を読み解く

 最近、少々ココログの仕様が変わって、スパムのコメント投稿、スパムのトラックバックを自動的に弾くようになった。ところが、フィルターがまだ不完全なのか、学習が足りていないのか、時折まともなコメントやトラックバックを弾いてしまうことが起きている。気が付き次第、正常に掲載されるようにはしているが、当方が気が付かないで掲載が遅れることがあるかも知れない。
 当面、ご容赦ください。

 昨日の宇宙開発戦略本部の文章について。少々細かく見ていくことにする。

(3)最先端科学・技術力の強化  世界トップレベルの成果を挙げている宇宙科学・技術分野については、引き続き、我が国の強みを活かしながら取り組んでいくことが必要となっている。
 この部分は現状認識。「政府はこのように現状を認識している」ということを宣言している。



 小惑星探査については、「はやぶさ」の微小重力天体からのサンプルリターン技術を発展させ、鉱物・水・有機物の存在が考えられるC型小惑星からのサンプルリターンを行う探査機について、小惑星との位置関係等を念頭に置いた時期の打上げを目指し、開発を推進する。

 小惑星探査に関する主文。対象は「はやぶさ2」ではなく、あくまで「小惑星探査」であることに注意。そのまま、はやぶさ2に関して述べている用に読めるが、どこにも「はやぶさ2」、「2014年打ち上げ」という言葉は入っていない。「C型小惑星からのサンプルリターンを行う探査機を」、「小惑星との位置関係等を念頭に置いた時期の打上げを目指し」「開発を推進する」と述べているだけである。
 だから、例えば「はやぶさ2はもう間に合わないから、はやぶさ2を破棄して、はやぶさマーク2を推進する」というようなことがあっても、この文言は有効ということになる。
 官庁の文書によくある典型的玉虫色文言だ。
 ただし、はやぶさ2を推進したい側はこの文書を「政府決定である」と利用できる。


 月探査については、宇宙開発担当大臣の下での「月探査に関する懇談会」の検討結果をも踏まえ、国際協力による効率的な実施や実施時期などについて柔軟に対応しつつ、着実に推進する。

 これは、小惑星探査以上にあいまいな文面。「開発を推進する」ではなく「着実に推進する」だし、実施時期についても「柔軟に対応」としている。つまり、この文章に従う限り、国際公約などで絶対に実施しなければならいところに追い込まれるまで、実施を引き延ばすこともできる。
 ただし、「「月探査に関する懇談会」の検討結果をも踏まえ」とあるので、懇談会報告書(pdfファイル)からはずれることはできない。

 何度か指摘しているが、官庁の文書は独特の読みとりを必要とする。

 ひとつはっきりしていることは、政府が当面の宇宙開発の重点として「小型衛星・小型ロケット」「地球観測」「準天頂衛星」「ISS運用延長」「宇宙システムのパッケージによる海外展開」「小惑星探査」「月探査」を選んだということだ。つまりこれらに関しては何らかの予算措置があることが確実になった。
 「当面」というのも、いつからいつまでかがわざとぼかされていることを意味している。おそらくは今後の政治状況の変動を織り込んでいるのだろう。

2010.08.27

宇宙開発戦略本部会合が開催された

本日8月27日、5月以来の宇宙開発戦略本部会合が開催された。


 資料「当面の宇宙政策の推進について」に以下の文面が入っている。

(3)最先端科学・技術力の強化  世界トップレベルの成果を挙げている宇宙科学・技術分野については、引き続き、我が国の強みを活かしながら取り組んでいくことが必要となっている。 小惑星探査については、「はやぶさ」の微小重力天体からのサンプルリターン技術を発展させ、鉱物・水・有機物の存在が考えられるC型小惑星からのサンプルリターンを行う探査機について、小惑星との位置関係等を念頭に置いた時期の打上げを目指し、開発を推進する。  月探査については、宇宙開発担当大臣の下での「月探査に関する懇談会」の検討結果をも踏まえ、国際協力による効率的な実施や実施時期などについて柔軟に対応しつつ、着実に推進する。
 宇宙開発線略本部の文書にこの文面が入ったことは、はやぶさ2実現にまた一歩前進があったことを意味する。


報道機関は、来年度概算要求で、はやぶさ2に30億円の要求がでると報じている。

 来年度予算で満額近い予算が付くならば、これでやっと予算的にははやぶさ2は2014年の打ち上げが可能になる。これは予算的には、ということであり、技術的には色々ハードルが出てくる可能性がある。はやぶさ2ははやぶさの同型機を手早く2010年に打ち上げるというコンセプトで、2006年初頭から検討が始まった。しかし、ここまで開発着手が遅れたため、状況の変化、部品の枯渇などにより、同型機というより兄弟機というほうがふさわしい設計になっている。
 それが吉と出るか凶と出るか。これまで予算化と正式プロジェクト化は大きな難関だったが、それを乗り越えれば、本番の難問がまだまだやってくることになる。

2010.08.26

宇宙開発委員会、もうちょっと考えてほしい

 これはひどいなあ。

 第29回宇宙開発委員会の資料を読んでいるのだが…


 なんでこんなに大量の資料があるのかと思ったら、何十ページもあるプレゼン資料を分割してpdf化してアップロードしているのだった。
 おそらくは、遅い回線からのアクセスを考慮したものだろうが、高速回線からアクセスしている場合は、いちいちひとつずつダウンロードして見ていくのが面倒だ。

 文部科学省としても「ファイルを公開しているという姿勢を見せたいだけ、本当はあまり観られたくないから極力いやがらせ」ということもないだろうし、要は「見る人にとって何が便利か」がそもそも念頭にないのだろう。

 こういう場合は、分割したファイルとは別に、全体を一つのファイルにまとめてアップしておくものだろう。その場合、ファイルサイズを明示しておくといい。

 「なにがユーザーにとって便利か」をきちんと考えた上で、ページを設計していけば、すぐに正解にたどり着けるはずなのに。

 8月28日土曜日のNHK総合「追跡!A to Z」(総合午後10時)ははやぶさを特集する。「"はやぶさ" 快挙はなぜ実現したか」。


 ちょっと情緒的過ぎるとも思えるが、まずは期待。


 NHKには、2003年5月のはやぶさ打ち上げにぶつけて「プロジェクトX」で日本初の惑星間探査機「さきがけ・すいせい」を取り上げたはいいが、そのあまりのぐだぐだで事実と異なる内容に、内之浦に詰めていた打ち上げ関係者をがっくりさせた、という前科があるのだけれど。詳細はこの笹本祐一「宇宙へのパスポート2」に書いてあります。


2010.08.25

小惑星や彗星を取り上げたSF

 小惑星や彗星をなんらかの形で取り上げたSFはどれぐらいあるだろうか。
 実はこういうページが、小天体探査フォーラム(MEF)にすでにある。


 MEFは2000年に、宇宙研の矢野創さんを中心に、次世代の小天体(小惑星・彗星)探査を、研究者のみならず一般の宇宙・天文愛好家も参加して考えるという趣旨で組織された任意団体。2005年頃まで積極的な活動を行い、その成果はMEFホームページで公開されている。現在は、ホームページのメンテナンスが続いている状態だ。

 中村良介さんは、産業総合技術研究所所属の小惑星・地質の研究者。よくSFを読んでいて、MEFホームページ内に、リストをまとめた。
 野尻抱介「轍の先にあるもの」「ピニェルの振り子」、池澤夏樹「アステロイド観測隊」、水見稜「マインドイーター」、菅浩江「永遠の森-博物館惑星」、、笹本祐一「彗星狩り」……

海外作品では、マイク・レズニック「キリンヤガ」、グレゴリー・ベンフォード&デビッド・ブリン「彗星の核へ」、オースン・スコット・カード「エンダーのゲーム」、ジョン・バーリー「バービーはなぜ殺される?」……いろいろあるなあ。

 同じ質問を日本人作家限定でTwitterで投げたら、また少し毛色の変わった答えが様々な人たちから帰ってきた。中村さんのリストと重ならない範囲で列挙すると——谷甲州「彷徨える星」、林譲治「小惑星ラプシヌプルクルの謎」、小林泰三「灰色の車輪」、エリック・コタニ(近藤陽次)「小惑星諸島独立す」「彗星爆弾地球直撃す」、マンガでは、星野之宣「太陽惑星イカルス」、あさりよしとお「アステロイド・マイナーズ」——ほとんど別格の存在として、谷甲州「航空宇宙軍史」と、野田昌宏「銀河乞食軍団」の2シリーズが挙がった。
 もちろん「ガンダム」という答えは多数。「舞台というほどではありませんが「ヤマトよ永遠に」は、小惑星イカロスから発進します。」という指摘もあった。

 個人的に思い浮かんだのは、野尻抱介「アンクスの海賊」「轍の先にあるもの」、小川一水「Slowlife in Starship」、堀晃「イカロスの翼」、高齋 正「宇宙の牢獄」、横田順彌「小惑星遊侠伝」といったところ。

 上記リストには絶版本も入っている。特に厳密なリストをまとめるつもりもないので、まあ適当に読み進んでもらえればということで。比較的最近出版され、入手も容易な以下の3冊を推薦しておく。


 「轍の先にあるもの」を収録した野尻さんの短編集。収録作品がどれをとっても傑作宇宙SFという希有の一冊である。「轍の先にあるもの」は、アメリカの小惑星探査機NEAR-シューメイカーによる小惑星エロス探査の話(この部分はほぼ実話)から始まる、SF私小説とでもいうべき作品。「沈黙のフライバイ」「轍の先にあるもの」「片道切符」「ゆりかごから墓場まで」「大風呂敷と蜘蛛の糸」を収録。ちなみに解説は私が書いている。



 こちらは小惑星イトカワとはやぶさの遺物が出てくる「Slowlife in Starship」を収録した小川一水さんの短編集。ソーラセイル輸送船で太陽系を旅する運送屋の引きこもりな日常が、イトカワとはやぶさによってかき乱されるという作品。「フリーランチの時代」「Live me Me.」「Slowlife in Starship」「千歳の坂も」「アルワラの潮の音」を収録。



 あさりよしとおさんが描く、小惑星で暮らすとということの真実!「蟹工船〜っ!」。例によってブラックな笑いをちりばめつつ、透徹した視線で「宇宙で暮らす」ということの意味を想像していく。「宇宙のプロレタリア」「軌道上教習」「ゆうれいシリンダー」を収録。私は特に、なつかしいジュブナイルSFの肌合いを見せる「ゆうれいシリンダー」が気に入っている。


2010.08.24

宇宙開発委員会と宇宙開発戦略本部の資料

 はやぶさ2の開発研究入りと、イプシロンの開発入りにゴーサインを出した第29回宇宙開発委員会の資料が公開された。同時にこの日の議題に入っていた月探査ミッション検討状況と、HTV-Rの検討状況についての資料も出ている。

 一昨日のはやぶさ2のみならず、宇宙開発全体のお金の話で、「では、民主党は?というのが今の状態である。」と書いた。
 現在、民主党の事実上のブレーンとなっているのは、有識者会議だ。会議は4月に以下の報告を出して一応の活動を終えているが、任期は8月31日まである。また、山川宏京都大学教授が宇宙開発戦略本部事務局長に就任したことから、その影響力は今後も続くことになるだろう。となると、以下の資料が今後の民主党の政策を読む上で重要ということになる。


 非常に短い文章で、提言をまとめている。すこし細かい内容は一つ前の第6回会合に出ているが、こちらはビジュアルで基本的にA41〜2枚で一つのテーマをまとめている。

 私は提言そのものは真っ当なものだと考えているが、問題はこれをきちんと民主党の政治家が受け止め、既存勢力などからの抵抗を主体的に排除して実行できるかだと見ている。政治の側が有識者会議の提言の中から、適当に都合の良いところだけつまみ食いすると、目も当てられないことになるだろう。

2010.08.23

8月23日のはやぶさとは限らすあれこれ

 大塚実の取材日記に、本日午後3時半から行われたサンプル分析のブリーフィング内容がアップされている。大塚さん、ご苦労様です。
 初期分析の開始が、8月後半から12月まで遅れることになった。相当苦労しつつ一歩ずつ作業を行っている。

 宇宙作家クラブから柴田孔明さんが、内之浦からのS-520-25号機打ち上げの取材で現地入りした。現地の様子は宇宙作家クラブニュース掲示板柴田さんのTwitterアカウントをどうぞ。1990年代半ば、「ネットを駆使した新しい報道形態を」と、大学院でどたばたしつつ試行錯誤していた身にすると、本当に現状は夢のようだ。


 今日は簡単な紹介を。

 この動画を紹介するのを忘れてた。


 6月の帰還で、初めてはやぶさを知った方のために紹介。
「おつかいできた」がイラストにおけるブレイクスルーだとすると、動画におけるエポックメイキングが、この「今度いつ帰る」だ。

 この替え歌と動画が公開されたことで、一気にはやぶさ動画が増えた。ここに掲載したのは初音ミクが替え歌を歌ったバージョン。オリジナルのさだまさしの歌声の入った動画もあるので興味のある方は探して下さい。




  はやぶさ関連本では、これを紹介するのを失念していた。日本の正しいハッカー御用達のラジオライフの8/9月号。野尻抱介さんの、はやぶさビーコン受信記が前後編で掲載されている。



 この音だ。


 こちらから携帯電話用着メロもダウンロードできる


 同じ版元ということで改めて「現代萌衛星図鑑」も。帰還前までのはやぶさも。帰還前までのはやぶさの話が掲載されている。しきしまふげんさんは、この前のコミケット78で、帰還の話を同人誌にして出していた。COMIC ZINに販売を委託するという話だったが、まだ入荷していない模様。


2010.08.22

はやぶさ2のみならず、宇宙開発全体のお金の話

 まだまだ暑い。霞ヶ関界隈では来年度予算要求の作業が行われているはずだが、具体的な動きはまだ見えてこない。民主党の政治主導の方針を受けて、宇宙開発戦略本部では政治が意志決定を行う手順の構築を行っているはずなのだが、こちらも22日現在、音無しで事態は潜航している。
 宇宙開発委員会の資料アップは相変わらず遅い。8月11日に開催された第29回会合では、はやぶさ2とイプシロンロケットの審議を行ってるのだが、資料がまだアップされていない。議事録は関係者の間を回覧してから公開するので、公開が遅くなるのは理解できる。しかし、すでに傍聴可能な委員会で公表された資料のアップぐらいすぐにできるはずだ。しかもその手間は恒常的に忙しいキャリア官僚の手を患わすまでもなく、事務職で行える。この遅れは怠慢以外のなにものでもない。

 現在の日本の宇宙開発の根本にある最大問題は、「自民党政権時代に、政治が宇宙開発にあれこれやるべきことを押しつけたあげく、予算を増やさなかった」ということにある。1960年代以降、日本の政治は3回、宇宙開発の意志決定に参画した。
 最初が1969年に宇宙開発事業団を設立し、「実用衛星とロケットを国産化する」と決めた時。当然ながら、この時はきちんと予算が付いた。

 次が1980年代初頭、現在の国際宇宙ステーション計画が動き出し、そこに日本モジュールで参加すると決めた時だ。参加にあたっては「ロン・ヤス」を標榜し、親米を強調する中曽根政権の意向が大きく働いた。しかし、予算措置はなかった。既存予算を削る形でステーション計画は予算化された。関係者の間では、「こんなことではやってられない」「日本モジュールは完成させても運用予算が出ない。このままでは神棚に飾るしかない」と悲鳴が上がった。

 しかし、その後のバブル景気で国家予算全体が膨らみ、宇宙予算も相応に増えたので、完成した「きぼう」を神棚に飾る事態は回避された。政治はなにもしなかったが、時代の流れが予算危機を回避する役割を果たした。

 最後が1998年の情報収集衛星計画を決定した時だ。この時は、自民党の防衛族議員が積極的に動いたが、予算については彼らはなにも動かなかった。結果、国際宇宙ステーション計画の時と同じつじつま合わせが行われた。既存宇宙計画の予算を400億円削って、その分を情報収集衛星に回した。開発は宇宙開発事業団委託となったので、予算は表面上減らなかった。が、400億円規模の巨大計画を押しつけられたのだから仕事は増えて予算は増えないということになった。
 しかも、バブル経済が追い風になった国際宇宙ステーション計画とは異なり、この時日本経済はバルブ破裂後の「失われた10年」の真っ最中だった。当然予算の自然増はあり得ず、その後の「失われた20年」で予算不足の歪みは拡大した。

 「はやぶさ2」の予算がなかなか付かなかった背景には、様々な思惑が交錯しているのだが、一番の根本には、この「政治がやることばかりを増やしてカネを付けなかった」という問題が存在する。
 タダで仕事をする者ははないし、タダでできる買い物もあり得ない。仕事を増やすなら予算を増やすべきなのだ。カネがないならその分をどこか、別の国家の仕事を減らして捻出すべきである。それを行うのが政治というものの役割であるはずだ。
 自民党の長期政権は少なくとも宇宙開発に関して、その当たり前の財布の管理ができていなかった。
 では、民主党は?というのが今の状態である。

 第5回MMD杯に、また宇宙関係の動画の投稿があった。


 はやぶさからイカロスへ…。この認識は正しい。
 はやぶさシリーズはこれから理学探査ミッションとして安全性・確実性を上げていく必要がある。
 はやぶさが切り開いた「積極的にリスクをとり、より遠くへ、世界の誰もやったことのないことを」という系譜はイカロスに引き継がれている。その先には、ソーラ電力セイルミッション(pdfファイル)がある。目指すは木星圏。木星にプローブを突入させ、木星の強大な磁場を観測する探査機を分離、スイングバイによる黄道面脱出により太陽系を外から一望し、さらには複数のトロヤ群小惑星を世界で初めて探査する。

 はやぶさを巡るブームは、「ブームがブームを呼ぶ」という段階に入ったようだ。一昨日の毎日新聞の記事のように「今、はやぶさがブームになっている」的なメタデータ的記事が増えて来つつある。このような記事が出始めると、宇宙にも科学にもまったく興味を持たなかった層が「今、ブームになっているんだって?!」と動き始めるものだ。

 ニコニコ動画 探査機「はやぶさ」タグの登録件数は900件にもなった。
 pixivはやぶさタグは1231件となり、まだ増え続けている。

2010.08.21

種子島のロケット焼き

Okonomiyaki
 丸の内のはやぶさカレーうどんで思い出したので掲載する。

 写真は南種子町の広島風お好み焼き屋「安兵衛」のロケット焼き(700円)。なぜロケット焼きかというと、打ち上げ責任者だった頃の五代富文元NASDA副理事長(おそらく1980年代、H-Iを打ち上げていた頃のことだろう)がこの店に来て、「とにかく全部具を入れて!」と注文して出来上がったメニューだからそうな。だから、マヨネーズで書いてある星模様は、陰陽師の使う道満晴明の紋…ではなく、ロケットを象徴する星のマークなのだ。

 確か安兵衛に初めて入ったのは、1995年3月のH-IIロケット3号機の取材の時だったはず。あの頃は狭い小さな店で、注文も会計もアバウトそのもの。頼んだのと違うメニューが出てきても、おつりが多少違っても気にしないという店だった。確か500円以上のメニューがなかったと記憶している。
 棚には宇宙センター関係者がキープしたらしき焼酎のボトルがずらーっと並んでいた。焼酎ブームで屋久島の芋焼酎が品薄になる前の話で、そのほとんどが屋久島の蔵元の「三岳」だった。あのブームのおかげで今は種子島の焼酎もぐっとおいしくなったが、あの頃は水の良い屋久島の焼酎のほうがずっとおいしかったのである(南泉は今や、当時が信じられないぐらい質が上がった)。
 その後安兵衛は店を建て替えて綺麗になり、鹿児島の方に店も出し、値段も相応になってしまった(残念!)が、それでも種子島に行くと一度は寄ってしまう店だ。

 当時は打ち上げが終わると、仕事から解放された打ち上げ関係者がジョイフルという居酒屋で声をからして徹夜で歌っていたものだが。センターを事実上三菱重工が仕切るようになった今、夜の事情はどうなっているのだろう。

 ああ、種子島行きたいなあ。次の打ち上げは9月11日にロケットまつりの特別版が三鷹であるので、行けないのです。

2010.08.20

第5回MMD杯、そして水木しげるの戦記マンガ

 MikuMikuDanceというソフトがある。ニコニコ動画で、そのソフトを使った映像を競う「MMD杯」というイベントがあり、第5回が始まった。

 そこになかなか素晴らしい宇宙関係の画像がアップされている。


 最後まで見るとそこには…

 テーマとなっているSOMESATはニコニコ動画発の実在の衛星計画である。



 毎日新聞がはやぶさブームを扱った特集記事を掲載している。


 おさえるべきところを押さえているな、という印象。はやぶさカレーうどんは、是非とも記者自身が食べてみるべきだったかと。私のコメントも掲載されている。


 NHK朝の連続ドラマ「ゲゲゲの女房」関連で、何冊か水木しげるの戦争物を紹介する。ドラマを単なる夫婦愛の物語としてみている人が多数だろうが、水木しげるは戦地で片腕を失った戦争体験者であり、自らの体験に基づくマンガも多数描いている。そこには、軍隊の最下層を体験した者にしか描けないリアリティがある。



 まずは、この「総員玉砕せよ!」を。水木しげるを、妖怪マンガでのみ知る人は、なによりもこれを読むべきだ。赤紙招集された兵士の視線で、出征から戦地の生活、戦闘、そして強制される玉砕に至るまでを描いている。その実に簡単に人が死ぬことといったら。恐ろしいまでのリアルな戦争が、あの緻密な背景と、簡略化されたキャラクターとで展開する…なんというべきか…傑作・駄作を超えたオンリーワンの作品だ。


 「総員玉砕せよ!」は、2007年にNHKでテレビドラマ化された。それがこの「鬼太郎が見た玉砕~水木しげるの戦争」だ。傑作。特に主演の香川照之の演技が素晴らしい。私は、彼が描くあの「ビビビ」というビンタが、映像になるとこうなるのか、と妙なところで感心してしまった。







 こちらは自らの戦争体験を娘に向けて語った一冊。凄惨な戦場の様子と抑圧に満ちた軍隊生活が、なぜか水木の視線を通すと、どこかぽかんと抜けた印象になる。この人は、やはり他と隔絶したパーソナリティの持ち主なんだと納得する。なにしろ、現地の人々に馴染んでしまい、敗戦後の帰国にあたって「現地除隊したい」といったというのだからすごい。「一度帰って親の顔を見てからでも遅くはない」と説得されなければ、水木しげるはマンガ家にはならずに、ジャングルの奥に元日本兵として暮らしていたかもしれないのだ。







 その体験を、あくまでマンガとして描くとこうなる。水木しげるの戦争マンガは単なる教条的な反戦マンガではない。理不尽やつらいこと痛いこと悲しいことひもじいこと、すべての苦しみを受け止めて静かな怒りを燃やしている。それは本書収録の「幽霊艦長」を読んでも分かる。あたかも「白鯨」のエイハブ船長のように、戦闘に執念を燃やす幽霊艦長のような人物像を、彼はどこかで実際に見たのかもしれない。




 個人的感覚なのだけれど、戦後日本のマンガ史は、手塚治虫が得意とした「2人の男」という形式で描きうるのではないかと思っている。すなわち、手塚治虫と水木しげる。本土で空襲を経験し、アメリカ文化に憧れ、若くしてデビューして成功を収め、アニメーションへと手を広げていく手塚治虫。従軍して片腕を失うという過酷な体験を経て、描いても描いても売れないという貧乏を経験して40歳を過ぎてから一気に売れっ子となり、土着の感覚のままに異世界との交感を続ける水木しげる——というような。
 それこそ、「火の鳥・鳳凰編」「未来人カオス」「アドルフに告ぐ」といった手塚作品と相似ではないだろうか。手塚は茜丸で、水木は我王か?


2010.08.19

カプセル公開、日本科学未来館と角田宇宙センターでも

 本日で、丸の内におけるはやぶさ帰還カプセルの公開が終了した。カプセル展示来場者は10万人を超えたとのこと。

 新たに、東京の日本科学未来館と、JAXA角田宇宙センター(宮城県)での公開が決定した。日本科学未来館が8月26日〜30日、角田宇宙センターが、9月11日〜12日。


日時 : 8月26日(木)〜30日(月) 午前10時〜午後5時
(8月28日、29日は午後6時まで)
場所 : 日本科学未来館 1階 シンボルゾーン (東京都江東区青海2-3-6)
展示物 : (期間中全て公開)インスツルメントモジュール、搭載電子機器部、パラシュート、エンジニアリングモデル
その他 : 入場無料 (ただし、常設展示およびその他の特別展示は別料金)
また、整理券を配布いたします。 (当日9時より配布) 
詳細は、以下のホームページをご覧ください。
http://www.miraikan.jst.go.jp/
問い合わせ先: 日本科学未来館 電話:03-3570-9151

日時 : 9月11日(土)、12日(日) 10時00分〜17時00分(入場は16時まで)
場所 : JAXA角田宇宙センター (宮城県角田市君萱字小金沢1)
展示物 : (期間中全て公開)インスツルメントモジュール、搭載電子機器部、パラシュート、エンジニアリングモデル
その他 : JR東北本線船岡駅や、臨時駐車場、角田市内よりシャトルバス運行いたします。
なお、入場料は無料です。
問い合わせ先: JAXA角田宇宙センター 管理課 電話:0224-68-3111
http://www.rocket.jaxa.jp/kspc/japanese/index.html


2010.08.18

はやぶさカレーうどんなど

Udon2
 隙を見て、丸の内に行ってきた。上は証拠写真、オアゾ5F古奈屋 の「はやぶさカレーうどん」。どのへんがはやぶさかは別として、おいしゅうございました。

 日本惑星協会のメールマガジン「TPS/Jメール」掲載の、的川泰宣先生の「YMコラム」、今号のNo.526は「はやぶさ2」の全容が姿を現しただ。はやぶさ2の詳細と、ライバルとなるかも知れない、アメリカの小惑星サンプルリターン計画「オシリス-レックス」を紹介している。

 直接はやぶさとは関係ないのだけれど、Twitterで紹介されたページ。


 太平洋戦争末期、あの硫黄島の戦闘に参加し、生還した方の手記だ。壮絶の一言に尽きる。

 何も言うことはできない。とにかく読んでもらえればと思う。

2010.08.17

宣伝:8月22日(日曜日)、ロフトプラスワンのトークライブに出演します

 ISAS壁紙ダウンロードのページに、はやぶさラストショットが加わっています。

 さて、40回目のロケットまつりは、ゲストに的川泰宣先生をお迎えします。

宇宙作家クラブpresents / LOFT/PLUS ONE 15th Annversary 「ロケットまつり 40回記念Special」  日本最初のロケット「ペンシルロケット」から「はやぶさ」そして「なつのロケット」まで日本の宇宙開発者にスポットを当てる理系トークイベントの金字塔「ロケットまつり」が2003年9月27日の第1回から数えて今月遂に40回を迎える。これを記念してスペシャルイベントを開催。

【出演】松浦晋也、笹本祐一(予定)、浅利義遠
【ゲスト】的川泰宣(宇宙工学博士)

8月22日(日曜日)
Open 18:00 / Start 19:00
¥1500(飲食別)
場所:ロフトプラスワン(新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 03-3205-6864、地図)

※予約は規定数に達したため締め切りました。
※当日券も出ますが、希望者が多い場合は抽選となります。ご了承下さい。
(当日券の入場は18:30以降となりますので、希望する方はその時間までにお店にお越し下さい)


 というわけでごめんなさい、予約分はに売り切れてしまいました。当日券でご来場頂ければと思います。

 的川先生には「リラックスして自由に話して下さい」とお願いしてあります。宇宙開発初期の話、漁業交渉の話、はやぶさの話、M-Vの話、未来の話。おそらく話は尽きることはないでしょう。

2010.08.16

宇宙開発委員会・推進部会の資料が出た

 宇宙開発委員会・推進部会の第3回会合(2010年8月5日開催)の資料がやっと公開された。ただし議事録案はまだ。宇宙開発委員会の資料公開は早かったり遅かったりで、一体内部で何をやっているのか良く分からない。

 イプシロンロケットの開発フェーズ入りと、はやぶさ2の研究開発入りとが決定した際の資料だ。この後、8月11日の本会議(宇宙開発委員会第29回)に推進部会の判断が上がって、共にゴーサインが出たのだが、この29回宇宙開発委員会の資料はまだ公開されていない。

 このあたりきちんと分析して記事を書きたいが、仕事がせっぱ詰まっていて他のことをする余裕が全くない。しばしお待ちください。

 東京・丸の内でのはやぶさ帰還カプセル公開は、相模原に比べるとかなり空いているようです。昼間だと30分待ち程度、朝夕の混む時間帯でも1時間程度の待ち時間で見られるそうです。

2010.08.15

8月15日のはやぶさを巡るあれこれ

 サイエンスドーム八王子(東京八王子市)で9月11日に、「『宇宙の日』記念講演会 帰ってきた小惑星探査機はやぶさ、そして未来へ」と題して、“宇宙の電池屋さん”ことJAXAの曽根理嗣准教授の講演会が開催される。


日時:9月11日(土曜日) 午後1時15分から3時15分
講師:曽根 理嗣 准教授(JAXA)
対象:どなたでも
会場:サイエンスドーム八王子・プラネタリウム(八王子市大横町9-13(Googleマップ))
費用:無料(入館料は必要)
定員:255名(申込先着順)
申込:お電話にてサイエンスドームまで

 申し込みは本日8月15日から、電話にて先着順で受け付ける。
生涯学習スポーツ部サイエンスドーム八王子
電話:042-624-3311

#電話で先着申し込みというのは、混乱を来さないだろうか。少し心配。

 本日、東京国際展示場で開催されるコミックマーケット78に、宇宙関係の個人製作の出版物がけっこうな数出展される模様。「宇宙の傑作機」の他にも色々と、商業出版では採算上出せないような本が色々と出てくるようだ。入手次第、ここで紹介します。

2010.08.14

8月14日のはやぶさとは限らずあれこれ


 コンピューターOS「TRON」の専門誌「TRONWAEE」の最新刊124号が、宇宙で使われているITRONの特集をしている。ITRONは制御用組み込みOSで、宇宙でもはやぶさを初めとした様々な宇宙機の制御に使用されている。


特集1 未来へのミッションを乗せて宇宙を駆けるTRON

* 人工衛星はなぜ回る 〜TRON系OSが支える高度な制御〜
* 打ち上げ成功!金星探査機「あかつき」
* あかつきと同時打ち上げ「IKAROS」
* [コラム]Space CubeアーキテクチャとSpaceWire
* 帰ってきた小型惑星探査機「はやぶさ」
* 宇宙の謎に迫る天文観測衛星


 TRONWAREはソフトハウスであるパーソナルメディアが出しているTRON専門誌。TRONは色々毀誉褒貶の多いプロジェクトだが、ITRONに関しては成功したといっていいだろう。私はBTRONOS「超漢字」のユーザーでもあるのだが、BTRONに関してはどこか途中でオープンソースに方針転換できなかったものかと思っている。OSとしての素性は決して悪くなかったのだが。ちなみにはやぶさ搭載ローバー「ミネルバ」もITRONで動いている。

 次ははやぶさから離れて、お盆らしいネタ。有人ロケット研究会幹事の大貫剛さんが、先だって結婚された。彼はそれに合わせてダイヤモンドエアサービス(DAS)の弾道飛行を利用した指輪交換式を企画、8月10日に決行した。多分、無重力状態で指輪の交換をしたカップルは大貫夫妻が日本で初めて…のはず。



 


 この春、大貫さんと共にアメリカに行った時、「実はやろうと思っています」とは聞いていた。「お前どこまで好きやねん」と思ったものだが、こういうもものは確かにやったもの勝ちだ。

 費用は2桁万円後半程度らしい。また、基本ダイヤモンドエアサービスの飛行は「実験」しか受け入れていないので、彼らは「無重力状態における指輪の交換実験」とか無理くり実験に仕立てて、今回の飛行にこぎつけたとのこと。実施に至るまでのノウハウは、大貫さんに問い合わせれば教えてもらえるだろう。大貫さんのコメント「アイロンを持ち込んでいれば…(エクストリーム・アイロンですね)」。

 この手のものは後に続く者が現れるかどうかで、定着するか否かが決まる(ウエルズの次にタイムマシンをテーマとしたSFを書いた者が偉いのと同じ道理だ)。ダイヤモンドエアサービスも(そして国交省航空局も)堅いことを言わずにこの手の需要をどんどん受け入れていけば、新しいビジネスにつながっていくと思う。

 自分の宣伝。現在販売されている週刊エコノミスト8月17・24日合併号の第二特集「すごいぞ 日本の宇宙技術」に、「日米の宇宙政策 日米で進む宇宙開発の見直し 技術維持に何をすべきか」という記事を書いた。

◇【特集】すごいぞ 日本の宇宙技術
  • 動き始めた日本の衛星打ち上げビジネス   秋本 裕子
  • インタビュー 宇宙飛行士・野口 聡一 「『きぼう』の完成度は群を抜いている。日本の底力はすごい」
  • 日米の宇宙政策 日米で進む宇宙開発の見直し 技術維持に何をすべきか   松浦 晋也
  • 衛星ビジネス 世界4位の衛星大国・日本 受注の遅れ挽回へ攻勢   西川 拓
  • 国際宇宙ステーション 世界に誇る技術を生み出した日本の「きぼう」と「HTV」   羽生 哲也
  • 企業分析 イオンエンジン、特殊樹脂… 宇宙技術で注目される日本の50社   秋本 裕子
 アメリカのオバマ新政策と、日本の有識者会議による宇宙開発体制改革を絡めて論じたもの。興味のある方は読んで下さい。

2010.08.13

8月13日、帰還2ヶ月目のはやぶさあれこれ

 今日ではやぶさの帰還から2ヶ月経った。まだまだ、はやぶさを巡る世間の動きは慌ただしい。

 8月15〜19日のはやぶさのカプセルが丸の内オアゾで公開されるのに合わせて丸の内一帯の商店では「おかえり、はやぶさ記念特別サービス」を実施する。


 はやぶさランチ、はやぶさステーキランチ、はやぶさショートケーキ、隕石おむすび、はやぶさシャトルドック、はやぶさジェラート、SpaceDrinkはやぶさ、はやぶさカレーうどん…ネイルバーでは「はやぶさ」クイックコースだ!

 大阪市立科学館が10月9日18時からプラネタリウムホールで「HAYABUSAナイト」を開催する。


 入場料1500円。チケットは8月24日(火曜日)から販売開始。

[内 容]
【第1部】
・全天周映像「HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-」上映
【第2部】
JAXAの國中均教授、SF作家の野尻抱介氏、そして飯山学芸員を交えてトークを行ないます。
◇司会 山田竜也(宇宙作家クラブ会員)


 8月19日発売のCOMICリュウ(徳間書店)10月号に別冊ふろく「小惑星探査機はやぶさ」特集本が付く。アマゾンで予約が始まった。


慌てて紹介。8月19日発売の COMICリュウ別冊フロクは「小惑星探査機はやぷさ」特集本です。マンガは「出発篇(永井朋裕)」「トラブル篇(とり・みき)」「帰還篇(安堂維子里)」の3本と、あさりよしとお&開田裕治対談、野尻抱介寄稿、表紙は速水螺旋人です。敬称略。

 宇宙関連でマンガ雑誌が特集を組むというのは、それこそアポロ計画以来ということになるのだろうか。

2010.08.12

惑星科学者たちは何を考えているのか、資料紹介

 本日は、日本の惑星科学者は、太陽系探査についてどのように考えているかの資料を列挙する。

 まず、基本となる、日本惑星科学会の将来計画委員会報告書(1996年6月)。

 これが惑星探査の推進に関する会長談話(2010年8月9日)に関係してくる。2010年8月現在、日本惑星科学会の公式見解は、この報告書に基づく。

 ついで宇宙開発委員会・宇宙科学に関する懇談会報告(2003年6月)。


 2003年10月のJAXA発足を控えて、宇宙科学は新組織においてどうあるべきかを検討したもの。

 そして、JAXA月惑星探査推進チーム・太陽系探査ロードマップ検討小委員会の報告書(2007年5月)。太陽系探査ロードマップ検討小委員会は、JAXA内外の研究者が理学・工学を問わず、この報告書のために集まった組織。現状では、これが研究者サイドの最新の意見集約といえる。
 この報告書は宇宙科学研究所・宇宙理学委員会のページにアップされている。

 最新の検討が、井田茂・日本惑星科学会の談話にある、日本惑星科学会で今年4月に始まったばかりの検討。


 会長談話では、今年4月に始まったとしていたが、この8月になって動きが活発化している。事実上8月から活動を本格開始した模様。

 この検討にあたって、JAXA/ISASの中村正人教授(金星探査機あかつき・プロジェクト・マネージャー)が、自身の見解を公にしている。中村教授は現宇宙理学委員長。

 とりあえず、リンクの紹介のみ。はやぶさ2の問題は、これらの文書をきちんと読み込んで考えて行かなくてはならない。

2010.08.11

8月11日のはやぶさを巡るあれこれ

 本日の宇宙開発委員会本会議で、はやぶさ2の開発研究入りとイプシロンロケットの開発入りが正式に認められたとのこと。文部科学省は来年度予算要求に十数億円を計上する方針を固めた。

 この記事にあるように、開発研究というフェーズは搭載機器試作を行う段階。だからこのままでは2014年打ち上げには間に合わない。搭載機器では特に新規のインパクター開発が非常にクリティカルだ。間に合わすためには、年度内にもう一度開発フェーズ入りを審議する方向に持っていく必要がある。

 大塚実の取材日記に、今週月曜日のサンプル回収状況のブリーフィング内容が掲載されている。


 8月のうちに、サンプルが入っている可能性の高いコンテナB室の検査を行うことを検討しているとのこと。

 日本航空協会で、川口淳一郎プロマネが8月26日に講演を行う。


第251回 2010年8月26日(木) 18:00〜19:30
「日本の航空100年」記念講演 第3回
『はやぶさ』の帰還と,試料回収カプセルの産声,そして未来にむけて
JAXA宇宙科学研究所
教授
川口淳一郎氏

※都合により講師、テーマが変更になる場合もあります

会場 東京都港区新橋1-18-1
航空会館 7階 入場無料  地図yahooの地図
 (当日先着200名。事前予約等は行っておりません)
交通 JR新橋 日比谷口徒歩5分  都営三田線内幸町A2出口徒歩1分
お問合せ 〒105-0004 東京都港区新橋1-18-1 航空会館6階
(財)日本航空協会 文化情報室
電話 03-3502-1206  FAX 03-3503-1375

 惑星地質ニュースに、阿部新助さんと平田成さんによる、「はやぶさ帰還報告」が掲載されている。


 阿部さん(台湾 國立中央大學天文研究所)、平田さん(会津大学)は共にはやぶさサイエンスチームのメンバー。阿部さんはJAXA回収隊の光学観測班に参加した。


 アマゾンがアオシマ1/32のはやぶさのプラモデルの特別バージョンを販売する。本体が金色メッキされたもの。現在アマゾンでは予約を受け付けている。掲載されている写真によると、本体が金色メッキで、台座、スラスター、サンプラーホーン、ハイゲインアンテナ、太陽電池パドルが銀色メッキの仕様のようだ。アマゾン限定販売とのこと。2010年9月15日発売予定。

 色々書きたいのだけれど、まだ時間を取ることができないでいます。

2010.08.10

日本惑星科学会が、惑星探査の推進に関する会長談話を出した

 表題通り、ここまではやぶさ後継機に関してもっとも関連が深いにも関わらず音無しの構えであった日本惑星科学会が、井田茂会長名義の談話を発表した。

 とにかく読んでもらいたい。基本線は、「今後も専門家集団として日本の惑星探査の将来計画の検討を進めていきたいと思います。」と、積極的関与を宣言するもので、特定計画の推進を主張するものではない。

それでも以下の部分は要注目だ。

「かぐや」や「はやぶさ」の後継を担う探査計画や、火星や木星を対象天体とした野心的な探査計画も立案されつつありますが、これらの探査をどのようなロードマップの上に位置づけるべきかを広く検討したいと考えています。また、宇宙利用等を見据えた政策目的と純粋な科学目的の相乗りあるいは切り分けをどのように図るのかも、コミュニティが考えるべき重要問題であると認識しています。

 宇宙開発委員会、毒饅頭、一の太刀に書いたように、科学者の間には「予算がもたらすのは予算なくしては実現不可能な研究、予算が奪い去るのは研究の自律性と研究者の自由」という二律背反の意識がある。

 しかし、今回の会長談話には、その意識を超えて、積極的に政治や社会に関わっていく中で惑星探査を考えていこうという意志がこもっている。

 これは良い変化だろう。

 ただし、個人的には今後10年の展望を2年半かけて検討して報告書を作るというのは、いかにものんびりし過ぎだろうとは思う。そんなことをやっていたら、報告書の完成より先に未来が来てしまうのではないかと思うのだけれど。

追記(2010.8.11) :コメント欄、平田成さんの投稿にあるように、この検討は「2017 年から 2027 年までの惑星探査将来計画」を対象にしたものだった。従って「報告書の完成より先に未来が来てしまう」ということはない。
 とすると、今現在〜2017年の探査において、日本惑星科学会の考えは、「1996年6月の将来計画委員会報告書」にある通り、ということを、会長談話で再確認したということになる。

以下に全文を掲載しておく。

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2010.08.09

宣伝、8月14日に仙台で、吉田東北大教授と共に話をします

 8月14日土曜日に、仙台で開催される「はやぶさからはやぶさ2へ」というイベントに出演します。

日時:2010年8月14日土曜日 17:30〜20:10

場所:せんだいメディアテーク(仙台市青葉区春日町2-1) 
7F スタジオシアター 
http://www.smt.jp/use/institution/theater/

参加費:無料

プログラム
17:00開場
1.トーク 17:30〜18:15
東北大学大学院 宇宙探査工学分野 吉田和哉教授
2.トーク 18:15〜19:00
ノンフィクション作家・ジャーナリスト 松浦晋也
3.ティーチイン 19:10〜20:10 
※進行予定時間は変動する場合があります。

 定員50名です。参加希望の方はこちらのページ下部のフォームから申し込んで下さい。

 吉田先生は、はやぶさ計画で、小惑星にタッチダウンした際のはやぶさの姿勢変動の解析を行った方です。2005年のタッチダウンの時は、「もう心配で心配で」と言いつつずっと相模原に詰めていました。

 東北地方の方、よろしくお願いいたします。

 ちなみに、このイベントは読売新聞宮城版でも紹介されています。

8月9日のはやぶさを巡るあれこれ

 丸の内オアゾのJAXA「おかえりはやぶさトークイベント」(8/15(日)10時から三部構成。丸ノ内オアゾ 丸善・丸の内本店3F 日経セミナールーム(東京都千代田区丸の内1-6-4))の参加申し込みフォームが公開されている。申し込み締め切りは明日10日の21時。

 NECのHPによれば、第一部に、國中均教授と二人三脚でイオンエンジンを開発した堀内康男氏が、第二部では、コマンド送信を担当し、はやぶさに最後のコマンドを送信した中村陽介氏が登場するとのこと。

 7月29日に、来年4月から種子島及び内之浦からの打ち上げ機会を通年とする協定が種子島周辺漁業対策協議会、JAXA、関係5県(鹿児島、宮崎、大分、高知、愛媛)の協議組織との間で合意に至った。この件について、五代富文・元宇宙開発事業団副理事長が考察を公開した。


 種子島での打ち上げ初期に起きた漁業関係者とのトラブルについても言及している。

 今のところ、これで一番大きな恩恵を被るのははやぶさのような惑星間軌道への打ち上げだろう。

 この件で、私のところにもマスコミからの取材が来た。積年の大きな課題が解決したことは間違いないが、種子島からの商業打ち上げとなるとまだまだ課題山積というのが私の意見だ。
 まずロケット価格がある。21世紀に入ってからロシアのロケットの価格が大きく上昇したので価格圧力は弱まったが、それでも昨今の円高で、H-IIAは不利な状況におかれている。
 その他の問題は、1年半以上前に以下の記事で指摘した。

 五代さんの指摘する3つの課題、1)打ち上げ時期制限、2)射場規模、3)衛星運び込みのアクセス——のうち1は解決した。五代さんは、2は解決不可能、3もほとんど不可能と考えられるとしている。
 私は3は、今後の政策次第だと考える(空港や道路行政と打ち上げビジネス支援を連動して考え得るのは政治のみであり、宇宙基本法が成立した今、それは政治の責務だ)が、2が不可能なのは賛成だ。

2010.08.08

8月8日のはやぶさを巡るあれこれ

 本日午後2時から、神奈川県立川崎図書館にて講演会<小惑星探査機「はやぶさ」の冒険>が開催される。講師は川口淳一郎「はやぶさ」プロジェクト・マネージャー。聴講はすでに締め切られているが、以下のアドレスでUStream中継も実施されるとのこと。

http://www.ustream.tv/channel/hayabusa-kawa-lib

 JAXAの〜はやぶさ応援ありがとうイベント(8月15日〜19日:丸ノ内オアゾ○○広場(おおひろば)東京都千代田区丸の内1-6-4)での、カプセル公開は、OO広場で朝7:00より整理券を配布するとのこと。一日分の整理券を配布した段階でその日は締め切りとなる。
 見学希望の方は注意のこと。

 同じく丸の内オアゾにおけるJAXA「おかえりはやぶさトークイベント」(8/15(日)10時から三部構成。丸ノ内オアゾ 丸善・丸の内本店3F 日経セミナールーム(東京都千代田区丸の内1-6-4))は、8月9日12:00〜8月10日21:00にネットで申し込み、抽選を行うとのこと。申し込みフォームは、明日9日公開となる。おそらくこちらから申し込みフォームに飛べるようになるのではないだろうか。

 本日のロフトプラスワン「はやぶさまつり〜帰還までの道のり」に、はやぶさタンコスプレで活躍中の、秋の『』さんが登場することが決定(この方です)。昨日、今日と東京・船堀で開催されている日本SF大会「TOKON10」の会場にて、笹本祐一さんが声をかけて出演OKということになったそうな。
 笹本さん曰く「某司令が、『「学会でも、こんなコスプレに来て貰って錚々たる科学者がここのスラスターが、とか説明するようになればいいのに」と言ったので、それロケットまつりで出来る、と思った」。本当に、思考と行動の間にためらいのない人だ。
 秋の『』さん、よろしくお願いいたします。


 原稿に詰まると読み進めて、昨日読了。表題にあるとおり、宇宙開発に関連するSF中短編を集めたアンソロジー。何らかのかたちで現実の宇宙開発に関連した作品7編が収録されている。こういう本が出版されるということそのものが、私としてはうれしい。

 内容は以下の通り。

1.「主任設計者」アンディ・ダンカン
2.「サターン時代」ウィリアム・バートン
3.「電送(ワイア)連続体」アーサー・C・クラーク&スティーヴン・バクスター
4.「月をぼくのポケットに」ジェイムズ・ラヴグローヴ
5.「月その六」スティーヴン・バクスター
6.「献身」エリック・チョイ
7.「ワイオミング生まれの宇宙飛行士」アダム=トロイ・カストロ&ジェリイ・オルション

 ソ連宇宙開発の父コロリョフを巡るもうひとつのあり得たかも知れない歴史を描く「主任設計者」。ニクソン大統領が辞任しなかった世界におけるアポロ計画を描く「サターン時代」。物質電送が現実となった世界における宇宙開発の意義を問う「電送(ワイア)連続体」。1970年代、アポロ計画に夢中の「ぼく」といじめっ子との月の石を巡る物語の「月をぼくのポケットに」。パラレルワールドと月探査を絡めた「月その六」。火星で遭難した探検隊ととある探査機が出会う「献身」。
 そして、一番面白くも感動的だったのが、「ワイオミング生まれの宇宙飛行士」。遺伝子のいたずらで、一般に流布する「宇宙人(リトルグレイ)」の姿で生まれてしまった子供の成長ストーリー。
 はやぶさで、宇宙に興味を持った方のこの夏の読書にどうぞ。


 もう一冊。野尻抱介さんの「ロケットガール」シリーズから、「魔法使いとランデヴー」。女子高生宇宙飛行士が活躍する同シリーズの中短編を集めた一冊だが、表題作「魔法使いとランデブー」に、はやぶさをモデルにした小惑星探査機「はちどり」が登場する。川口プロマネがモデルの「本橋教授」も。帰還が難しくなった「はちどり」をロケットガール達が、あっと驚く方法で地球に帰還させる話である。
 現在アマゾン状況を見ると品切れ中のようだが、古書店などで見かけたら買っておくべき一冊だ。


2010.08.07

8月7日のはやぶさを巡るあれこれ

 JAXA機関誌「JAXA's」の最新No.33号が、はやぶさを特集している。pdfファイルをダウンロードして読むことができる。


 川口プロマネインタビュー、メーカーサイドからはやぶさの開発と運用に携わった人々のコメントなど、盛りだくさんの内容だ。

 本日7日の夜10時〜10時35分、NHK教育の「サイエンスZERO」ははやぶさ帰還を特集する。


 放送時間は以下の通り。

 2010年8月7日(土) [教育] 午後10:00〜午後10:35
 再放送:2010年8月13日(金) [教育] 午後6:55〜午後7:30
 再放送:2010年8月14日(土) [BS2] 午前4:25〜午前5:00

 NECから、チームはやぶさの挑戦 第5話「この世にひとつの『はやぶさ』を造る」が公開された。従来、表に出ることがなかったメーカーの技術者たちが語る、「どのようにしてはやぶさを造っていったか」の貴重な証言だ。私はインタビューとまとめを担当した。

 元祖衛星擬人化のイラストレーター、しきしま・ふげんさんのサークル「teardrop」コミックマーケット78新刊は、はやぶさを扱った本となった。


・COMICMARKET 78
8月15日(三日目)
東2 T-60a:teardrop

-新刊-
・人工衛星擬人化本 配本8 「Shootingpretty」
 「はやぶさ」探査機解説本



 この夏は8月29日の同人誌即売会「コミティア」にも参加するとのこと。



 しきしまさんの著書。これで衛星萌擬人化が一気にブームになった。アマゾン書評を読めばわかるように、単なる受け狙いではない、がっちりとした内容も兼ね備えた一冊である。ちなみに私も監修を受け持っている。

 8月5日の、宇宙開発委員会・推進部会における配付資料には、はやぶさ2の開発スケジュールについて、今年末に開発研究から開発フェーズ移行のための審査を行う旨記載があったとのこと。傍聴に行ったあきゆういさんがTweetしている。

 7日現在、まだ宇宙開発委員会HPに資料はアップロードされていない。

 これはかなり明るい材料。来年度が開発研究フェーズのままだと、2014年打ち上げには間に合わない。はやぶさ2を打ち上げウインドウに間に合わせるためには、来年度以降開発フェーズに入ることが必須だった。
 正直、それでもかなりスケジュールはきつい。特にはやぶさ2での新規開発要素となるインパクターは、相当な強行スケジュールでの開発となるのではないだろうか。

 帰還からそろぞろ2ヶ月だが、はやぶさを巡る動きはまだまだ続いている。

2010.08.06

虎之児特別ラベルは明日まで、夏コミ、風虎通信の新刊はルノホート

 井手酒造はやぶさ帰還祝酒の申し込み締め切りが、明日8月7日となった。

 本日「おお、これはいけない。自分も一本」と申し込んだら、井手酒造から電話を頂いた。当ブログのリンクから飛んで買った方がおられたとのこと。恐縮してしまいました。「ご縁ですねえ」という言葉に深くうなずいてしまった。的川先生と周東さんが作ってくれた縁だ。

 さて、8月13〜15日、恒例の巨大同人誌即売会のコミックマーケット、通称コミケットが開催される。宇宙関係の資料本を出している風虎通信から新刊の情報が入ったので紹介する。

Photo_3

 今回の新刊は、「宇宙の傑作機 No.14 ルノホート」だ。

 以下、版元の高橋信久さんの口上。

 著者はスペースサイト!(http://spacesite.biz/)を運営なさっているみずもとさんです。ロシア宇宙史など詳しい情報を数多くサイトに載せていらっしゃいます。そのみずもとさんが万全を期して今回書いたのは、旧ソ連が誇る無人月面探査車ルノホートです。アポロ15号の月面車の前に既に月を走り回っていたルノホートの全てをこの一冊に。本文70頁でお送りいたします。

 ルノホートは、世界で初めて他の天体を走行した車両であり、同時に世界初の無人他天体探査ローバーでもある。ルナ17号(1970年11月)とルナ21号(1973年1月)で、月面に2機送り込まれ、1号は10.5km、2号は37kmもの距離を走破した。今、日本や中国、インドなどで月面ローバーの研究や開発が進んでいるが、旧ソ連は現在よりもはるかに非力な電子制御技術で、40年前にこれだけの成果を挙げていたのである。

Photo_2 既刊は、昨冬のコミケット新刊の「ベネラ惑星探査機」(福間晴耕さん著)と、私の「アリアン5」増刷を販売するとのこと。アリアン5は増刷で、改訂の手は入っていない。当初、その後の変化を加えて改訂するつもりだったのだが、執筆の時間が取れなかった。申し訳ありません。

 ともあれ、ルノホートと金星探査機ベネラという、旧ソ連の無人探査技術の集大成を、まとめて日本語で読むことができるわけだ。商業出版ルートに乗りにくい、宇宙関係の日本語文献を継続して出版してくれている風虎通信の高橋さんに感謝。そして、このような書籍をも受け入れるコミックマーケットの奥深さは、実際大したものである。
 
 風虎通信のブースは、3日目 8/15(日)東2-T59bである。3日目は宇宙関連同人誌のサークルが集まっているので、旅行記や独自研究、写真集など様々な宇宙関連同人誌が出るはずだ。

 コミケットは色々と参加にあたっての作法の存在するイベントだ。このブース番号の意味が分からないコミケット初心者は、カタログを購入して、諸注意を熟読の上参加のこと。
 また、おそらくイベント後に神保町のくだん書房でも少部数が販売されるだろう。

2010.08.05

はやぶさ2・イプシロン、宇宙開発委員会の決定はGO

 本日午前中に開催された、宇宙開発委員会・推進部会での審議を傍聴した方によると、来年度予算でのはやぶさ2の開発研究フェーズ入りと、イプシロンロケットの開発フェーズ入りは、GOという結論になったとのことだ。

 今朝の日経新聞に、「はやぶさ後継探査機機2014年打ち上げ 文科省、予算要求へ 」という記事が出ていたので、多分宇宙開発委員会は通過するだろうと見ていた。日経の記事によると、来年度予算の概算要求で「十数億円」を要求。さらに文科省としては新設の特別枠で別途要求する意向のとことだ。
 実際、2014年打ち上げを目指すとなると、来年度十数億円ではまったく足りない。50億円近く必要なはずだ。従って、特別枠で相当な額を確保する必要がでてくる。

 来年度予算が確定するまで、まだまだ紆余曲折があるだろうが、まずは一歩前進だ。

 …傍聴、行くつもりで準備していたのだが、締め切りに追われて行けなかった。残念である。

2010.08.04

太陽フレアと3D Sun

 1日に太陽表面で中規模の太陽フレアという爆発現象が発生した。

 アメリカの太陽観測衛星SDOのページを見てみよう。

 トップページに「Coronal Mass Ejection Headed for Earth?」という写真が掲載されている。

 太陽から吹き出したプラズマの巨大な塊が、地球に向かってきているわけだ。一部ニュースで「日本でもオーロラが見られるかも」と流しているが、(アストロアーツの記事が分かりやすい)これのことである。

 今日の本題はオーロラではなくて、太陽の様子を逐一知らせてくれる、iPhone/iPad用ソフト。「3d Sun」である。

 これはいいです。無料なので、iPhone/iPadユーザーは即ダウンロードして使ってみることをお薦めします。

 なにがどういいかを書きたいのだけれど…とにかく仕事に追われて時間がない。明日か明後日かに詳細を書きます。

 今回、あまりはやぶさとは関係ない内容に見えるが、はやぶさも、行きに巨大太陽フレアの直撃を受けて太陽電池の発生電力が落ちるという目に合っているので、関係ないこともないか。と。

2010.08.03

あれこれ(流石に疲れが出てきている)

 筑波宇宙センターにおけるはやぶさのカプセル公開は、相模原に比べると大分空いていたそうだ。私も行きたかったが、とても行けそうにない。公開は6日までだが、耐熱シールドの公開は今日までだとのこと。

 大塚実さんの取材日記に、8月2日のはやぶさキュレーションブリーフィングの模様が掲載されている。まだまだ難航している様子。外野としては良い結果が出るのを期待しつつ待つしかない。

 Twitter情報によると、東京・阿佐ヶ谷の七夕祭りで、はやぶさの飾り物が出たとのこと。

 明後日、8月5日に、宇宙開発委員会 推進部会(平成22年)(第3回)が開催される。

1.日時 平成22年8月5日(木曜日)10時〜12時

2.場所
科学技術政策研究所会議室(霞が関ビル 30階 3026号室)

3.議題
1. 小型固体ロケット(イプシロンロケット)プロジェクトの事前評価について
2. はやぶさ2プロジェクトの事前評価について
3. その他

4.傍聴・取材
 宇宙開発委員会推進部会は、原則として一般に公開する形で開催いたします。なお、特段の事情のある場合には、理由を公表した上で非公開とすることがあります。
(1)一般傍聴者の受付
・傍聴を希望される方は、8月4日(水曜日)18時までに、文部科学省研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付まで、氏名と連絡先を御登録下さい(原則として1団体につき1名)。
・受付は基本的に申し込み順としますが、多数の傍聴者が予想される場合には、抽選となる場合もございます。
・庁舎管理等の観点から、入場等に身分証明書等の提示を求められますので、社員証、運転免許証その他本人の確認ができるものを持参して下さい。

 仕事の状況はますます切迫しているので今日はこれだけ。毎日更新などと言わなければ良かったとため息つきつつ、仕事をしております。
 もちろん、昨今の世間的な状況において、仕事があるだけ幸福なのは間違いない。

2010.08.02

紹介:「宇宙へのパスポート」シリーズ(笹本祐一著)

 帰還ではやぶさを知った方のためのはやぶさ本紹介。今回は笹本祐一「宇宙へのパスポート」

  

 SF作家の笹本祐一さんによる、宇宙開発取材の記録だ。3冊刊行されている。種子島・内之浦からシャトルやアリアンロケット、果てはロシアのロコット打ち上げまで、ロケット打ち上げを追って世界を駆けめぐった取材日記である。

 はやぶさについては、2巻に2003年5月9日の打ち上げと、ローバーミネルバの取材が、3巻に2005年11月のイトカワタッチダウンの取材が掲載されている。私は1巻から解説を担当していたが書く内容がどんどん増えていったので2巻以降は表紙に「解説:松浦晋也」と入っている。
 この時期、ひんぱんに一緒に取材に行っていたので、やたらと私も登場するが、それはご愛敬ということで。そうか、自分ははやぶさ打ち上げ取材は、オートバイで内之浦まで走ったんだっけな。

 あらためて読み返すと、俺、けっこう良いこと書いているな。3巻ではブッシュの有人月探査計画が駄目になるであろうことをきちんと予言しているじゃないか…いや、これは当時から仲間内では、「あんなんじゃ月なんか戻れっこない」と話し合っていただけなのだけれど。

 願わくば、これが最盛期ではなく、はじまりとならんことを。(「宇宙へのパスポート3」 p.392、はやぶさ着陸取材より)

 あの時、プレスルームとなった宇宙研A棟2階の会議室で、あまりの面白さに感極まった笹本さんは、「俺は今、日本の宇宙開発の黄金時代を見ている!」と叫び、すぐに「いや、これをピークにしちゃいかんのだ」と言ったのだった。

 本当にその通りだ。

2010.08.01

宣伝:8月8日(日曜日)、ロフトプラスワンのトークライブに出演します

 ロケットまつりのお知らせです。今回ははやぶさの帰還を支えたお二人をお招きします。かなりの人気が予想されるので、予約制を導入しました。こちらから予約可能です。

ロケットまつり39
「はやぶさまつり〜帰還までの道のり」
2010年6月13日、数多の難関を乗り越えてはやぶさは地球に帰還した。2005年11月のイトカワ着陸の後、あちこちが壊れた機体を操り、ウーメラ砂漠まで導くことに成功した運用関係者のお二方に、「おつかいの帰り道」についてお聞きします。

【Guest】西山和孝(JAXA/ISAS准教授 探査機運用班長、スーパーバイザー、イオンエンジン担当)、白川健一(姿勢系担当メーカー技術者)
【出演】松浦晋也、笹本祐一、浅利義遠

8月8日日曜日
Open 18:00 / Start 19:00
¥1500(飲食別)
※以下URLにてネット予約可能
http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/reservation/

場所:ロフトプラスワン(新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 03-3205-6864、地図)

 以下は予習本。 サイエンス9月号には、川口プロマネによる充実した記事が掲載されている。

  

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