紹介:「宇宙へのパスポート」シリーズ(笹本祐一著)
帰還ではやぶさを知った方のためのはやぶさ本紹介。今回は笹本祐一「宇宙へのパスポート」
SF作家の笹本祐一さんによる、宇宙開発取材の記録だ。3冊刊行されている。種子島・内之浦からシャトルやアリアンロケット、果てはロシアのロコット打ち上げまで、ロケット打ち上げを追って世界を駆けめぐった取材日記である。
はやぶさについては、2巻に2003年5月9日の打ち上げと、ローバーミネルバの取材が、3巻に2005年11月のイトカワタッチダウンの取材が掲載されている。私は1巻から解説を担当していたが書く内容がどんどん増えていったので2巻以降は表紙に「解説:松浦晋也」と入っている。
この時期、ひんぱんに一緒に取材に行っていたので、やたらと私も登場するが、それはご愛敬ということで。そうか、自分ははやぶさ打ち上げ取材は、オートバイで内之浦まで走ったんだっけな。
あらためて読み返すと、俺、けっこう良いこと書いているな。3巻ではブッシュの有人月探査計画が駄目になるであろうことをきちんと予言しているじゃないか…いや、これは当時から仲間内では、「あんなんじゃ月なんか戻れっこない」と話し合っていただけなのだけれど。
願わくば、これが最盛期ではなく、はじまりとならんことを。(「宇宙へのパスポート3」 p.392、はやぶさ着陸取材より)
あの時、プレスルームとなった宇宙研A棟2階の会議室で、あまりの面白さに感極まった笹本さんは、「俺は今、日本の宇宙開発の黄金時代を見ている!」と叫び、すぐに「いや、これをピークにしちゃいかんのだ」と言ったのだった。
本当にその通りだ。
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全部持ってます ぜひ続編を!
Posted by: ken | 2010.08.03 12:12 AM
紹介ども。
んで、最盛期じゃなくて黄金時代ですな。
おおすみからはじまり、寸前ののぞみの失敗を糧にした日本の宇宙探査の黄金時代を目の当たりにしているという実感は非常に誇らしいものでした。
Posted by: 笹本祐一 | 2010.08.03 01:03 AM
>最盛期じゃなくて黄金時代ですな
これからは下る一方なんて悲しいすぎ(T_T)
何とか続けていく方法ないものかな・・・
Posted by: のら | 2010.08.03 03:42 AM
長続きするには、その国の文化に根付く必要があるものですが、日本の宇宙開発はまだ文化とほとんど無縁でしょう。
たとえば、よく同型2機の宇宙探査機を打ち上げる羨ましい国がありますが、それらの国では彼らの「プッシュする」文化が宇宙探査にも投影されています。
大きなものは両手で「プッシュする」のが普通だから、大宇宙を「プッシュする」感覚の彼らは、両手、つまり同型2機になりやすいのです。
宇宙開発は単にカネや技術をベースにしているのではなく、その国が持つ文化の上に技術を載せているのです。
日本の場合であるならば、漆器がジャパンと呼ばれるように、日本は時間をかけて器を仕上げる文化を持っています。
本来ならば、サンプルリターンの本物は小惑星の砂であり、カプセルはただの器のはずであるにもかかわらず、
多くの人々がカプセル展示に列をなし、皇后様も「これが帰ってきたんですね」と言われたように、日本は器を器で終わらせない文化を持っているのです。
宇宙開発での王道は、人々が持つ文化の上に技術を構築することです。
はやぶさのネックは小惑星着陸時にあるのですから、着陸時はカプセルに情報を入れ、器の文化に情報を載せてネックを補えばよいのではないでしょうか。
文化の上に技術を構築し、時間をかけて器が帰れば、器に込められた情報は器を仕上げ、中身と科学の価値を高めることになるように思います。
Posted by: いで | 2010.08.03 10:02 AM
>黄金時代
そうでしたな。直しておきました。
ほんと、あの時は「こんちくしょうめ、アメリカの連中はレンジャーからこっち、こんな楽しい思いをいっぱいしていたのか」と思ったものです。
Posted by: 松浦晋也 | 2010.08.03 10:30 AM
はじめまして毎日更新お疲れ様です。体に負担の掛かるお天気が続いておりますので、どうぞご自愛ください。
ささっとブログ確認しましたがまだ話題に出ていないようなので、ご存知かとは思いましたが一応お伝えしておきますね。
URL欄に記載しましたが、とうとうロケット打ち上げの期間制限が撤廃されて通年可能になるようです。各漁協とも合意している様なので、これで打ち上げの足枷が一つ減りますね! いや、ほんとに今年は宇宙開発の良いニュースが沢山あってうれしいです。
Posted by: み | 2010.08.03 04:49 PM