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2012.08.24

宣伝:8月31日(金)、下北沢の書店B&Bで「のりもの進化論」のトークライブに出演します

Norimono 突然なのですが、東京・下北沢の書店B&Bにて8月31日午後8時から「これからの自転車の話をしよう」というトークライブに出演します。私と、「のりもの進化論」の編集を担当した小原さんの2人で、自転車の未来についてあれこれ語っていくという内容です。
 「のりもの進化論」では、自転車だけではなく、自動車やモノレール、新交通システム、さらには都市デザインにまで話を拡げていますが、2時間ばかりのトークライブで全部に触れることはできないので、自転車に話を絞って密度の高い話をしようということになりました。

 B&Bという本屋さんは、B&B=Book and Beerということで、かなり面白いお店のようです。ホームページを見ると、錚々たる面子がトークライブに出演していますね。

「これからの自転車の話をしよう」

時間:2012年8月31日金曜日、20時〜22時(開場19時30分)
料金:1500円 + 1 drink order (チケット購入はこちらから)

場所:東京・下北沢 書店B&B(地図Google Map)
〒155-0031
東京都世田谷区北沢2-12-4
第2マツヤビル2F
TEL/FAX 03-6450-8272

 8月に太田出版から『のりもの進化論』を上梓した科学ジャーナリスト・松浦晋也さんの講演会です。講演では、わたしたちが日常使用している「自転車」という乗り物に焦点を当てて、その進化形を考えます。電動アシストで自動車にも負けない出力を持つ「自転車2・0」とは?瞬間最大時速130kmを超えるリカンベント・バイシクルとは?これからの省エネルギー社会を担う乗り物として、さまざまな実例を交えて自転車の未来について考えていきたいと思います。

 ご来場いただけるとうれしく思います。

2012.08.22

自転車2.0/3.0を思いついた背景

 もうちょっと軟らかく、自転車2.0/3.0のことを。

 基本的には自転車とリカンベントの両方に乗って、けっこうな性格の違いを感じている中から出て来た発想なのだが、最後にぐいっと後押ししたのがこれだった。

Varnatempest

 これはカナダのVarna handcycleという会社が作った、人力速度記録車「Verna Tenpst」という車両だ。男子人力一人乗り、200m区間というカテゴリーで、2012年8月現在、133.28km/hという記録を持っている。地上最速の人力車両だ。

 「これにモーターアシストつけたらすごいことにならないか」と思ってしまったのである。
 
 もちろんレコードブレイカーは公道を走る車両と色々違うから、そう簡単な話でもないのだけれど、それでもぎりぎりまで抵抗を減らすと人一人のパワーだけでもここまで速度を出せるということに感激し、それを一般化するにはどうすればいいかと思った時に、電動アシストという解が浮上してきたのだった。

 背景には、ここ数年、せっせと湘南平へヒルクライムに通っていたということもある。湘南平は、湘南海岸大磯にある小高い山の上の公園で、ふもとから公園まで上る1.5kmほどの急坂が、自転車のヒルクライマーたちの練習場所になっている。ある日ぜいぜい息を切らしつつ上っていると、おばちゃんの乗った電動アシストのママチャリが軽やかに私を抜いて上っていったのだ。
 くやしいよりも、「おお、電動アシストやるじゃないか」と思ってしまった。


 そうして情報を集めてみると、電動アシストはけっこうつかえる技術であり、にもかかわらず今の日本で、電動アシスト自転車が中高年向けなのは、警察の規制が、そのように仕向けているからだということが分かってきた。

 なんともったいない。警察の規制を取っ払い、リカンベントにでも取り付けたらこれは、原付よりも使える乗り物になるかも知れない。それどころか、ベロモービルに付ければ自動車よりも省エネで自動車並みに使えるものになるかもだ。

 そこであれこれ考え、調べ、コンセプトとして練り上げたのが自転車2.0/3.0というわけなのである。

 この本は売れないと悲しいので、もう一度アマゾンへのリンクを張っておく。ステマ:ステルスマーケティングに対してモロマという言葉があるそうだが、この場合はなんというのだろう。
 ともかく、本というのはまずは「そういう本が存在するよ」というフラグが人々の間に広まらないと手にもとってもらえないのである。


2012.08.19

「自転車2.0」と「自転車3.0」



 新著「のりもの進化論」が発売されました。一部の方にはもうお手にとって頂けましたことと思います。

 残念ながら私の本はいつも部数が少ないのでなかなか実書店でぱっと見付けることがむずかしい。しかも、すぱっと既存の分類に収まる話を書いているわけではないので、本屋のどの棚に行けばあるのか迷うこともあるだろう。そういう方はネット通販が便利だ。

 今回の主題。「のりもの進化論」では「自転車2.0」と「自転車3.0」という新しい概念を提示したが、それってどんなものなのか。

 本文中は以下のように定義した。

  • 自転車2.0:以下の特徴を持つ人力の乗り物
    • 徹底した走行抵抗の軽減
    • 可能な限りの軽量化
    • 洗練された制御系を持つ電動アシスト
  • 自転車3.0:自転車2.0をソーシャル化したもの

 既存の電動アシスト自転車に似てはいるが、自転車形状にはこだわっていない。極端な話、電動ローラースケートでもいいし、足漕ぎボートがベースでもいい。また、基本的に現在の電動アシスト自転車にかかっている出力規制は無視している。「洗練された制御系」というのは、その時々の状況に合わせて最適なアシストを提供するという意味だ。本体附属のセンサーで運転者の体温や脈拍に応じて最適なアシスト、場合によってはオートマによる最適なギア比提供を行うことも考え得る。
 自転車3.0のソーシャル化というのは、ネットによって提供される様々な情報を駆使して、運転者に最適な移動を提供するという意味だ。カーナビのようなナビゲーションを手始めに、雨を避けたり、向かい風を受けにくい道を選んで走ったり、坂の多い経路、少ない経路を選べたり、暑い日は日陰になる区間が長い経路を示したり、ということだ。

 そんな乗り物が、ありうるのか。ありうるとしたらどんなものになるか、そのような乗り物を社会が受け入れるには社会インフラの側はどのように変化する必要があるか、法制度はどうあるべきか、といったことを本書では考察してみた。

 キーワードとして「アリストテレス号」と「ニュートン号」という仮想の乗り物を想定し、考えを進めている。

 この考え方が正しいのかどうか、私としては多くの人に考えてもらいたいと思っている。


2012.08.17

宣伝:8/18に新著「のりもの進化論」(太田出版)が発売されます

Norimono

 立て続けですが、こちらは単著です。以前ワイヤードビジョンに掲載した連載「松浦晋也のモビリティビジョン」(連載時の記事はリンク先で読めます)を下敷きにして大幅改稿した、「人間にとって、社会にとって、移動とは何か?よりよいモビリティとは?」を考察する一冊です。元々は、乗り物について気楽に書いていくという趣旨だったのですが、だんだんモビリティと社会、モビリティと法律、地震や津波のような大規模災害とモビリティ——とテーマが拡がり、本書の最後では都市の空間デザインや、社会全体のエネルギー消費とモビリティというところにまで踏み込むことになってしまいました。

内容紹介
リカンベント、ベロモビール、電動一輪車、HSST、ツボグルマ……科学ジャーナリストとして活躍する著者が送る、乗って、見て、考える 体験的のりもの考 !

【目次】


  • 序章
  • 第1章 自転車進化論
    自転車の有用性を再考する/ハードウェアとしての自転車/「乗る」と「持ち運ぶ」の狭間で/自転車と社会制度/人力が持つ大きなモビリティの可能性
  • 第2章 アリストテレス号からニュートン号へ
    Human Powered Vehicleの可能性/来るべき「自転車2.0」/「自転車2.0」を可能にする社会
  • インターリュード 目的に対する最適デザインとユーザーの慣れについて
  • 第3章 自動車を巡る基本的な構図
    自動車と道路は不可分、ではそのコストを払うのは誰?/大きくなる自転車/「ツボグルマ」の理想と現実/自動車を小さくするために/電気自動車の将来性と、その社会的費用
  • 第4章 新たな利便は創出されたか
    たそがれ未来のモノレール/いいモノレール、悪いモノレール/間違いの根本にある顧客不在/便利な公共交通機関を手に入れるために
  • 第5章 住みたくなる街のモビリティ
    甦る路面電車/悩ましきコミュニティバス/よりよく動く、よりよく住む、よりよく生きる/「幻想吉祥寺」の都市計画/ミニマムエネルギー、マキシマムモビリティ
    あとがき

 本書の中で提案している「自転車2.0」「自転車3.0」という新しい移動手段の概念については、同時期の別連載「人と技術と情報の界面を探る」(PC Online)でも考察しています(連載時の原稿は無料登録をすれば読めます)。
 このPC Onlineの連載も、大幅改稿の上で電子ブック「格安自転車を使うことで失われる3つの感覚〜自転車2.0への提言 」に収録してあります。併せて読んで頂ければと思います。

 連載時には“次の自転車”として、ティム・オライリーを真似て「自転車2.0」という言葉を使ったのですが、今回本書を執筆中に「さらにその先があり得る」と気がついて、新たに「自転車3.0」という言葉を使った次第です。
 このあたりは、自分が各種自転車やリカンベントに乗っていなかったら気がつくことはなかったでしょう。「実際に乗ってみる」ことはとても重要です。

 ともあれローラースケートやスケートボードから、自転車に電動アシスト自転車、「自転車2.0」に「自転車3.0」、自動車、鉄道、モノレール、新交通システム、路面電車などなど、「移動する道具」とその未来について横断的に色々考えてみたよ、という本です。

 読んで頂ければ幸いです。

2012.08.16

宣伝:小惑星探査機「はやぶさ」大図鑑、発売中

 久しぶりの更新ですが、宣伝です。8月1日に偕成社から「小惑星探査機「はやぶさ」大図鑑」が発売されました。


Hayabusadaizukan

 私は解説の文章を担当しています。

 小学生中学年向けということでしたが、とにかく大変な仕事でした。専門用語は使えない上に文字数はぎりぎりまで制限されています。それこそ「スイングバイを100文字で説明して下さい」というような発注が山のように来て、七転八倒しました。その甲斐があったかどうかは、本を手にとって確認してもらえればと思います。絵を主体とした図鑑ですから、主役はなんといっても池下章裕さんの細密なイラストレーションでしょう。大人であっても、イラストを見るだけでも楽しめるでしょう。

 願わくばこの本が次の世代を担う子供たちに届きますように。

 今日から少しずつ更新を再開したいと思います。

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