素晴らしいコンサートと、“もっと早坂文雄を!”
素晴らしいコンサートに行ってきた。
探楽愉快 Vol.4 「100年前、 北の地に 伊福部昭が生れた」伊福部昭先生の生誕100年を記念して、伊福部先生の室内楽作品を軸にしたプログラムでお楽しみいただくコンサートです。
2014年2月10日(月) 19時15分開演 (18時30分開場)
於 大田区民ホール アプリコ 小ホール
(京浜東北線・東急池上線・東急多摩川線 蒲田駅下車すぐ)伊福部昭: ヴァイオリンとピアノのための二つの性格舞曲(1955/61)
早坂文雄: 「室内のためのピアノ小品集」(1941)より
A.N.チェレプニン: ティンパニとピアノのためのソナチネ Op.58(1939)
サティ: 右と左に見えるもの〜眼鏡なしで(1914-15)
伊福部昭: ピアノ組曲(1933)
伊福部昭: ヴァイオリン・ソナタ(1985)河野 航(ピアノ)、加藤 のぞみ(ヴァイオリン)、由谷 一幾(ティンパニ)
何が素晴らしいってプログラミングが素晴らしい。
「二つの性格舞曲」は伊福部没後、遺品から楽譜が発見された曲。伊福部44歳の作品。
そして少年の日からの親友だった早坂文雄のピアノ作品に、伊福部の師匠であるチェレプニンの珍しい編成の小品。
サティは、1934年9月に伊福部のヴァイオリンと早坂のピアノによって日本初演された作品。2人と共に、後に評論家になった三浦淳史、伊福部の兄でギターの名手だった伊福部勲らが、札幌で「国際現代音楽祭」というコンサートを開いた時に演奏された。この時、伊福部、早坂は20歳。
さらにピアノ組曲は現在残っているもっとも古い伊福部の作品。作曲時19歳。
最後のヴァイオリン・ソナタは、伊福部71歳の円熟の作。
つまり、伊福部昭の人生を3曲で俯瞰しつつ、親友にしてライバルの早坂、師匠のチェレプニン、若き日のあこがれだったサティをまとめて演奏するという、もう「分かってるじゃないか!」と手を打ちたくなるプログラミングだ。あまりに素晴らしいので、忙しいのについ行ってしまった。
オーケストラ・ニッポニカのメンバーである3人の演奏もこれまた素晴らしく、特に出ずっぱりの河野氏のピアノは、ワイルドな打鍵が伊福部音楽に相応しかった。
今年は伊福部昭生誕100年ということで、記念コンサートが次々に開催されている。それはとてもうれしいことなのだけれど、忘れてはいけない。今年は同じ歳の早坂文雄も生誕100年なのだ。
ところが、早坂関連のコンサートはずっと数が少ない。目立つ所では、8月に下野竜也と札幌交響楽団が絶筆となった交響的組曲「ユーカラ」を、そして9月にに準・メルクルと東京交響楽団が「右方の舞と左方の舞」を、演奏するぐらいだ。
ユーカラの演奏は本当に久しぶりだから期待しているが、記念コンサート目白押しの伊福部に比べるとずいぶんと淋しい。
なんとかできないものか、一般の耳目を引くことはできないかと、「『七人の侍』と『ゴジラ』の裏にあった友情」という文章を書いたりもした。が、注目を集めるのは本当に難しい(そうか、全聾の被曝二世作曲家を自称すれば、ほっといてもマスメディアが集まってくるのか!)。
早坂は1955年に41歳で早世し、伊福部は2006年に91歳で大往生を遂げた。この差が、現在の人気の差となっていることは間違いない。が、早坂は忘れてよい作曲家ではない。
もっと早坂文雄を。今年でなくてもいいから。来年は生誕101年記念だし、再来年は102年記念だから。
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