「この世界の片隅に」からはじまる読書ガイド5冊
映画「この世界の片隅に」がヒットを続けている。しかも様々な賞を総なめだ。
自分は大変幸いなことに、公開後の割と早い時期に片渕須直監督のインタビューという仕事をすることができた。インタビューを手配したY中さんに感謝である。
- 「この世界の片隅に」は、一次資料の塊だ
アニメーション映画「この世界の片隅に」片渕須直監督(前編)(日経ビジネスオンライン 2016年12月8日)
- 「本来は、アニメは1人で作れるものです」
アニメーション映画「この世界の片隅に」片渕須直監督(後編)(日経ビジネスオンライン 2016年12月9日)
私は、「この世界の片隅に」は単なる映画の傑作ではなく、文化史的な事件だと思っている。
決して誇張ではない。この映画により、私達は70年昔の戦争を、今と地続きの“そこにあった/そこにある現実”として改めて認識しなおすことになったのだから。
もうあの戦争が、「いつかどこかであった、自分とは関係のない、知らない戦争」に戻ることはない。あの戦争は「すずさんが体験した、すずさんがそこに暮らしていた時と場所」として私達のなかに刻まれた。
映画の公開が続く限り、そしてロードショー公開が終わっても、ディスクが発売されたり、あるいはテレビで放送されるたびに、私達は、かつての「今と地続きのあの時、あの場所」として昭和18年から昭和21年にかけての広島・呉を思い起こすことになるだろう。何度でも、何度でも、思い出すだろう。
すずさんの生きる“世界の片隅”は、世界のすべての“片隅”へとあまねくつながっている。どの片隅にも誰かがいて、なにかをしていて、それら全てが寄り集まることで社会とか歴史とかが形成されていく——自分にとって「この世界の片隅に」はそう思わせる映画だった。
非常に高密度に情報が詰め込まれた映画なので、何度観ても発見があり、しかもさりげないシーンが画面の外側の事象を反映している。
以下、そんな映画の画面の外にある/あった世界についての読書ガイドを掲載する。なるべく基礎的な本に絞って5冊、プラスさらに読み進めることができる本で構成した(一部本でないものも入っている)。
お勧めの本は以下の通り。